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第六章
第81話
しおりを挟む神々は『神の館』で思い思いに過ごすようになった。
主に植物を愛でたり、二階の『執務室』以外の部屋でゆったりとした時間を過ごしていた。
時には一階に残された『会議室』で『難しい内容の話し合い』をしている。
それは作物や家畜の生育だったり、環境だったり。
それでも『さくらの部屋』のリビングで過ごす神が大半だったが。
ただ、今までと違うのが『精霊』たちも姿を見せるようになっていた。
彼らはドリトスたちの存在を『神に認められし者たち』として認知している。
何より『精霊王の愛し子』が彼らを『求めている』のだ。
彼らを認めないという事は、さくらの存在も『認めない』と同じことになる。
精霊たちにとっても『さくらの存在』は特別だった。
精霊の多くは自然豊かな『コーティリーン国』に住んでいる。
しかしエルフ族は精霊たちの存在を敵視しており、同じ土地にいながら争いを好まない精霊たちは隠れ住んできたのだ。
それが最近になって『天罰を受けていないエルフ族たち』がエルハイゼン国の隣に出来た施設に移された。
そのため精霊たちは『隠れ住む必要』がなくなって姿が目撃されるようになったのだ。
そんな彼らの存在に初めは戸惑っていた他国も、さくらが目を輝かせて「会ってみたい!」と話したことを知り態度を変えた。
さくらは神々の計らいで、すぐに精霊たちと会うことができた。
さくらは精霊王たちとは『神の館』で対面した。
応接室と同じ1階にあった『謁見の間』で。
初対面の相手とはそちらで会ったほうが良いというさくらの希望だったからだ。
「さくらと申します。この世界に来た私の看病のために幾度も付き添って下さりありがとう御座いました。挨拶とお礼が遅くなり、大変申し訳御座いません。本来でしたら此方からお伺いしてご挨拶すべき事ですが、私の我儘でご足労頂きましたこと大変感謝致しております」と立位で挨拶をした。
ヨルクとヒナリは『さくらの礼儀正しい挨拶』を初めてみて内心驚いていた。
さくらは自分を『ただの一般人』と言っていた。
それは『普段のさくら』を見ていても分かった。
そんな彼女が『礼儀正しい立ち居振る舞い』が出来るとは思っていなかったのだ。
以前、ドリトスとセルヴァンが『さくらの礼儀作法』を誉めていたことがある。
それはただの『欲目』だと思っていたが、目の当たりにして考えを改めることとなった。
しかし、さくらは『庶民』だ。
ただ長年『習い事』をしていたのと、高校時代に『礼法』の授業があったため、礼儀作法などの基本的な所作が出来るだけだ。
そのため、自由奔放に生きてきた『聖なる乙女たち』と『差』が出てしまうのだった。
ジタンは初めて会った時のように、さくらへ笑顔を向けていた。
そして精霊王は破顔し、頭を下げているさくらに近寄り膝をついて抱きしめた。
「頭を上げなさい。我が愛し子。私はそなたが望むなら何時でも、たとえ『地の果て』でも、そばに馳せ参じますよ」
その言葉にさくらは驚いたが、それ以上に同席していた他の精霊たちの方が遥かに驚いていた。
精霊王は今まで『誰か』に心を向けたことはない。
たとえ『同族』でもだ。
それが目の前に立つ小さな『異世界から来た少女』に対して膝を折り、目の高さに合わせただけでなく抱き締めたのだ。
「緑の王・・・」
背後に控える精霊の一人から声が漏れると、さくらを抱き上げて精霊たちを見る。
「我ら『精霊』は『我が愛し子』を『精霊の友』として此処に認める」
精霊王の言葉に、精霊たちは無言で頭を下げて同意する。
それは『精霊王の言葉』だからではない。
自分たちの危うい存在を救ったのがさくらだと分かっていたからだ。
その瞬間から、自分たちもさくらを『友』と認めていたのだ。
彼らの『心の内』をセルヴァンやドリトスは手に取るように分かった。
自分たちのように、彼らも『さくらの存在』が救いになっていたのだ。
そんな彼らがさくらを認めないはずはなかった。
精霊たちと笑顔で接するさくらの様子を、セルヴァンたちは微笑ましく見ていた。
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