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第九章

第174話

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翌日、スゥたちは結界の中央に出されたウッドテーブルで思い思いの時間を過ごしていた。
スゥはユリティアの本屋で購入した地理や歴史の本を読み、シーナは足し算のドリルを。
ルーナは文字かるたを使って、ハンドくんが並べた単語を声に出して読んだり、ハンドくんの言った単語をかるたを使って並べていた。
ルーナはまだまだ文章を作るまでいかないようだ。


〖 スゥ。自分たちの住んでいた村が何処か覚えていますか? 〗

この国の地図を開いていたスゥにハンドくんが尋ねると、シーナとルーナもスゥの本に目を向ける。

「たぶん・・・この辺だと。
ここの『オグリュ』とは取り引きしてました」

「私たちは討伐した魔獣の肉やアイテムを売却して、小麦などを購入していました」

『オグリュ』は町のようだ。
その北東部をスゥは円を描いた。

〖 では、その『オグリュ』へ向かいましょう 〗

「オグリュへ・・・ですか?」

〖 貴女たちの家族、もしくは村の誰かが逃げ込んだ可能性があるでしょう。
貴女たちの村が魔獣に襲われたのなら、次に襲われるのはこのオグリュです。
だったら、ここに何かしらの情報があると思います 〗

「・・・すぐに行くことは出来ませんか?」

シーナはダンジョンに入っているより、すぐにでも向かいたいのだろう。

「シーナ。私は反対」

「スゥ!スゥはお父さんたちに早く会いたくないの?!」

「会いたいに決まってるでしょ!」

「じゃあ、なんで・・・」

「私たちが弱いまま戻っても『足手まとい』にしかならない。
だったら、ダンジョンで少しでも強くなりたい。
父さんたちみたいに前線で戦えなくても、後方で母さんたちを守れるようにはなりたい」

スゥの言葉に、シーナとルーナは俯いて黙る。

「覚えているでしょう?
襲ってきた魔物がケタ外れに強かったの。
だから、強くなりたい。
あの時、村のみんなが守ってくれたみたいに、今度は私がみんなを守りたい。
そのためには、魔物や魔獣が多く出るダンジョンで確実に強くなって行きたい」

スゥの言葉には強い覚悟が含まれている。

「・・・わたしも。
わたしも、震えながら泣いて動けなかった『あの時』に戻りたくない。
はじめてのダンジョンで、ボスを見た時に『あの時の恐怖』を思い出して動けなくなった。
そのせいで、それまで戦えていた魔物や魔獣にも足が震えて戦えなくなった。
もう二度と、スゥやシーナ。ご主人さまや師匠に迷惑をかけるような・・・あんなこと、したくない。
だから強くなりたい。
後悔しないように心も身体も、もっともっと、強くなりたい」

「・・・ルーナ」

痛々しいほどの決意と覚悟を口にするルーナ。
ずっと後悔していたのだ。
弱い自分のせいで、シーナまで巻き込んでご主人さまの期待を裏切ってパーティから追い出されてしまったことを。

「わたし・・・強くなりたい。
だから、ダンジョンでもっと戦う。
戦って、今度は『守れる側』になりたい」

ルーナは握りしめているこぶしにちからを込めて、泣きたい気持ちを無理矢理おさえつける。
そんなルーナの手を、隣に座るスゥが優しく包み込む。

「ルーナ。一緒に強くなろ?
そして、今度は一緒に皆を守ろ?」

スゥの言葉に、ルーナも「うん」と頷いた。

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