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第六章
第186話
しおりを挟む私たちがダンジョンを出たのは三ヶ月と少し後のこと。八十日を超えての帰還だった。七つあるダンジョンのうち十八階層だったのは最初だけ。地の妖精曰く、攻略者が現れないため、徐々に階層が増えていったようだ。それを聞いたダンジョン都市に住む人たちは『ダンジョンが生きている』という事実を改めて思い知った。
ちなみに、他のダンジョンはすべて三階層だった。ワンフロアには最大三日、短期だと数時間でマッピングが完了した。もちろん、それに大きく貢献してくれたのは地の妖精と白虎だ。
《 エミリア。この先は行き止まりで魔物もいないよ 》
「じゃあ、白虎……GO!」
ガウッ
私を背に乗せた白虎がひと鳴きすると駆け出す。そして突き当たりでストップ。地図の作成は行き止まりだとわかっていても行かなくてはならない。そのため時間が攻略時の何倍もかかる。ただ、マッピング自体は冒険者の機能についているため、私は道をすべて進み、突き当たりの壁に手を触れるだけでいい。ぺたん、と壁に触れると、開いたままの地図の触れた側の壁が黄色くなる。
「行き止まり登録完了」
《 じゃあ、戻りましょう 》
「白虎、今度はゆっくりね。天井を見たいから」
ガウ
白虎が返事をすると、いつもの歩行スピードで歩き出した。
白虎の背中は広い。肩幅は約五十センチもある。その背中に寝転がって天井を見上げる。通路の天井にはヒカリゴケや水晶が発光していてキレイだった。これらは採取可能なため、下へ降りる際に収納してきた。ただ、先に収納すると真っ暗闇の中を進むことになる。
……やらかしました。
最初のダンジョンで三階に降りたときにキレイだったのとアミュレットの鑑定が採取可能と表示した。そのため、通路で収納を使ったら……通路全体が『収納対象』だったため、天井のヒカリゴケや水晶が収納カバンに納まってしまったのだ。すぐに光の妖精が通路を程よい明るさで照らしてくれたから問題はなかったが。
《 誰ですか? 真っ暗闇にしたのは 》
「え~ん。通路で収納を使ったら、通路全体が対象になるって知らなかったんだも~ん」
《 やめなよ 》
《 エミリアは知らなかったんだから 》
光の妖精を筆頭に頭をペチペチ叩かれて、泣きまねをしながら白虎の背中に泣きつく。すると、水の妖精と暗の妖精が私を庇ってくれ、白虎が尻尾で妖精たちを追い払って守ってくれる。
《 ……もう。白虎はエミリアを甘やかしすぎでしょ 》
ガウッ
《 え? そういえば、エミリアが通路で収納を使うのって魔物を倒した時だけだよね 》
「壁の魔導具とか、認識していない岩の中に隠れた鉱石とかは収納されないもん」
《 それは管理されたダンジョンだからでしょ 》
《 でも、未確認のダンジョンは初めてだから、そんなことエミリアが知るわけがないわよね 》
《 そうだね。管理部に管理されているダンジョンなら、無効化の魔導具が設置されているから、フロアの通路全体が収納対象にはならないよね 》
ガウッ。ガ~ウ
《 ……そうだね。もしかすると、管理部の人たちだってこんなことは誰も知らないかもしれないよね 》
《 ここはまだ管理されていないんだもん。私たちが明るくしてるけど……。本当だったら空気の循環も何もない中を魔導具を使って進むんだよね 》
「え~ん。管理部が知らなくて妖精たちが教えてくれないのに、バ神に誘拐されてこの世界に投げ出された私がわかるわけないのにぃー。……白虎ぉー。みんながイジメて頭を叩いたよぉー」
私の言葉の直後に、ぶおんっという風を切る音と寝転がった私の背中を風が横切り……
《 キャァァァ!!! 》
白虎の尻尾がスウィングして妖精たちが吹き飛んだ。
白虎は背中に寝転がっている私を落とさないように気をつけながら歩いてくれている。私以外に白虎の背中に乗っているのはピピンとリリン、そして水の妖精と暗の妖精だ。
《 白虎、ひど~い! 》
《 エミリアを『軽く叩いた』だけじゃない 》
ガ~ウ
《 『自分だって軽く振っただけ』って…… 》
《 あれは軽くじゃないよ 》
ガ~ウ♪ ガ~ウ♪
寝転がった私の上を、白虎の尻尾が左右に行ったり来たりして妖精たちを追い払う。時々、私の背中を軽くポンポンと叩いて、再び左右に揺らす。
《 ちょっと、白虎ー 》
《 エミリアも笑ってないで止めてよ 》
「し~らな~い」
ガウ
《 『私は楽しく尻尾を振ってるだけ~』って…… 》
《 『じゃあ、後でお説教ね』って! 》
《 ピピン! リリンまで⁉︎ 》
ガウッ
《 『私も一緒にお説教する』って……冗談だよね? 》
「じゃあ、私はみぃちゃんとクラちゃんと一緒にお昼寝する~」
《 ちょっと、エミリア。三人を止めてよ! 》
《 三人が聞くと思う? 》
《 夜にエミリアが寝たら、四人は別の部屋に閉じ込められて……徹夜だよ? 》
四人に叩かれた私の頭を撫でている水の妖精と暗の妖精が、四人に爆弾を落とす。ピピンとリリンが上下に揺れて、ヤる気満々だった。
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