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第八章
第336話
しおりを挟む「じゃあ、もし魅了の女神が死んだと仮定して、司る魅了は使えなくなる? それとも新たな男神や女神が誕生する? その場合でも『いない時間』ができる以上、魅了は無秩序となるの?」
《 エミリア。一つ確認するけど、使えない魔法とか使いにくい魔法ってある? 》
「うーん……魔法は本を読んだり誰かに教わって使えるようになるものだから。私が魔法の取得が早いのは、ゲームで間接的に触れたから『コレはなんの魔法でどうなるのか』って知識を持ってるから。もちろん理解できない魔法もあって使えなかったけど、それはみんなから詳しく教えてもらったら使えるようになったでしょ。ただ、転移魔法は『その先に何もない状態』じゃないと圧死したりするし、一度転移魔法で失敗したから怖くて使えないんだけど……コレは私の事情だもんね」
そう、転移魔法を練習していて近距離ならできるようになった。ただし、使えるのは視認できる範囲と『壁の向こう』だけだ。一度転移先の設定に失敗した。ううん、転移魔法の場合は専用のウィンドウで設定するんだけど、設定に高度があることに気付かず、何かの拍子に触れて変わってしまったのだろう。設定した場所の空中に転移してしまっていた。
「あのときは驚いたよ。風魔法の飛翔を使うことも忘れて、すごい勢いで落ちたからパニック起こして……。ふうちゃんが咄嗟に風魔法で落下を止めてくれて、みぃちゃんが泡で覆ってくれて、やっと落ち着いたんだから」
《 うん、あのときは怖かったね 》
そういって、光の妖精が私の頭を撫でてくれる。癒しの魔法を使ってくれているのだろう。私は気持ちが落ち着いていく自覚があり、気付かずに肩に入っていた力も抜けていくのを感じた。
《 じゃあ、エミリアは魔法に関して問題は起きてない? 》
「特に何にも。それがどうしたの?」
《 魔法には司る神がいないものもあるよ。でもエミリアは普通に使ってるね 》
《 でもね、魔法として使えないけど、加護として持ってる人もいるよ。例えばエリーとか 》
「エリーさん……? じゃあ、鑑定スキル?」
私の答えに全員が笑顔で頷いた。それは魅了の神がいなくても魔法やスキルとして存在する。そして、使える人がいてもおかしくはない。
《 鑑定魔法は上級者用だから使える人が少ない。そして鑑定は魔導具として普及したから魔法を覚える必要がなくなった。今は魔法としては衰退してる 》
《 魅了も同じだよ。魔導具が出回って、やっぱり交渉術の上級者用だったのが、手当たり次第魅了をかけられるようになった 》
《 結局、魔導具が発展して、特に上級者用の魔法だったのが誰でも使えるようになったため評価が下がったんだ 》
《 目利きを身につけてから使える『鑑定』。本来なら交渉術スキルで、王様とか上に立つ者が使える『人心掌握術』。それらが、技術を習得してから得るはずなのに簡単に使えるようになった 》
《 問題はスキルという形で神が与える人心掌握術が、誰でも使える形で広まったこと。おかげで、それまでは人心掌握術のスキル持ちが王位を継承することで保たれてきた秩序が崩れたんだ 》
魔導具がすべて悪いと言わないが、さすがに技術系の質を落として広めてはいけないだろう。
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