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04 取引
転身
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手術中のランプが煌々と輝く廊下、その一角に置かれた柔らかい長ベンチ。
簡単な治療を受けた俺は、よりにもよってそのベンチにヨミと並んで座っていた。
殺したかった。燃やしたかった。壊したかった。
でも、できない。
そうすれば手術は中断され、ヘルゼルは無残に腹を開かれたまま死ぬのだから。
「大丈夫だよ。うちのメンバーは優秀さ、特にサイバネに関してはね」
「ヘルゼルの体に機械を組み込むのか」
「それ以外に助かる道があると思ったのかい? ――そう怒った顔をしないでくれ、言葉の綾だよ。組み込むというより、全身義体だね、今回のケースでは」
絶望的な宣告だ。
全身義体のメンテ費用は俺達掃除屋風情の稼ぎでは賄えないし、そもそも、大事なヘルゼルの体がこんなクソ野郎の手によって作り変えられるという事実自体、受け入れ難かった。
少し弾を撃ち込みすぎてしまったようでね、と笑いながらヨミは言う。
どこまでふざければ満足するのだろう、こいつの嗜虐心は。
「ああ、お金に関しては心配する必要はないよ。手術費も、メンテナンスに掛かる恒久的な費用も、全てうちが持つ。ヘルゼルくんの負傷は僕の責任だからね」
「何が目的だ?」
そうだね、と軽くため息を付き、ヨミは緑色の天井を見上げた。そこにはシミひとつ無いのだ。まるで俺とヘルゼルの事務所みたいに。だが、ここには紛れもない『死』がある。この黒幕が編み上げて持ってくる、懇切丁寧な『死』が。一体何百人がこの街でテロに巻き込まれ、真相を知ることもなくこの病院に担ぎ込まれ、あるいは生き、あるいは死んでいったのだろう。
「僕は退屈しているがゆえに、掃除屋に興味があるんだ。僕を血眼になって追う人達が、一体どういう存在なのか、気になる」
「……それで俺達を襲ったのか?」
「期待はずれだったけど、新たな収穫はあったよ。うちの技術でも全身義体をパーフェクトに組み上げることはできない。定期的な、それもスパンの短いメンテが必要だ。だから、ヘルゼルくんに伝えてくれ。二週間に一度、うちの病院に来るようにってね」
新都中央地区カムイ総合病院。管理局から配布された資料に載っていた、『ヨミの息がかかった施設』だ。
徹底的な監視の目が注がれたここに定期的に通っていれば、いずれは管理局も考えるに違いない。
ヘルゼル、そして相棒の俺が、ヨミに接触し、『あまりよろしくない交流』を酌み交わしていると。
こいつにとってはそれだけで十分なのだ。
俺達の仕事の邪魔をし、人生を狂わせるのが楽しくて仕方がない。
そういう印象を受けた。
「手術はあと半日はかかるだろう。待つのも体力を使うから、帰宅するのをお勧めするよ。君さえ良ければ食事をご一緒してもっと話をしたいけれど、それは嫌だろう?」
「分かってるなら聞くな」
「はは、悪いね。僕はいつも一言多いんだ。君達の部屋には清掃員をよこしておいたから、血の跡はきれいに片付いているはずだ。帰ってゆっくり休むといい」
「……ありがたくそうさせてもらうよ」
タクシー券を渡されたが、目の前でビリビリに破いて歩いて帰った。
その道中、気が向かなかったがスマホを取り出しバレルへ電話を繋ごうと試みる。
現在、彼の電話番号は使われていないらしい。
簡単な治療を受けた俺は、よりにもよってそのベンチにヨミと並んで座っていた。
殺したかった。燃やしたかった。壊したかった。
でも、できない。
そうすれば手術は中断され、ヘルゼルは無残に腹を開かれたまま死ぬのだから。
「大丈夫だよ。うちのメンバーは優秀さ、特にサイバネに関してはね」
「ヘルゼルの体に機械を組み込むのか」
「それ以外に助かる道があると思ったのかい? ――そう怒った顔をしないでくれ、言葉の綾だよ。組み込むというより、全身義体だね、今回のケースでは」
絶望的な宣告だ。
全身義体のメンテ費用は俺達掃除屋風情の稼ぎでは賄えないし、そもそも、大事なヘルゼルの体がこんなクソ野郎の手によって作り変えられるという事実自体、受け入れ難かった。
少し弾を撃ち込みすぎてしまったようでね、と笑いながらヨミは言う。
どこまでふざければ満足するのだろう、こいつの嗜虐心は。
「ああ、お金に関しては心配する必要はないよ。手術費も、メンテナンスに掛かる恒久的な費用も、全てうちが持つ。ヘルゼルくんの負傷は僕の責任だからね」
「何が目的だ?」
そうだね、と軽くため息を付き、ヨミは緑色の天井を見上げた。そこにはシミひとつ無いのだ。まるで俺とヘルゼルの事務所みたいに。だが、ここには紛れもない『死』がある。この黒幕が編み上げて持ってくる、懇切丁寧な『死』が。一体何百人がこの街でテロに巻き込まれ、真相を知ることもなくこの病院に担ぎ込まれ、あるいは生き、あるいは死んでいったのだろう。
「僕は退屈しているがゆえに、掃除屋に興味があるんだ。僕を血眼になって追う人達が、一体どういう存在なのか、気になる」
「……それで俺達を襲ったのか?」
「期待はずれだったけど、新たな収穫はあったよ。うちの技術でも全身義体をパーフェクトに組み上げることはできない。定期的な、それもスパンの短いメンテが必要だ。だから、ヘルゼルくんに伝えてくれ。二週間に一度、うちの病院に来るようにってね」
新都中央地区カムイ総合病院。管理局から配布された資料に載っていた、『ヨミの息がかかった施設』だ。
徹底的な監視の目が注がれたここに定期的に通っていれば、いずれは管理局も考えるに違いない。
ヘルゼル、そして相棒の俺が、ヨミに接触し、『あまりよろしくない交流』を酌み交わしていると。
こいつにとってはそれだけで十分なのだ。
俺達の仕事の邪魔をし、人生を狂わせるのが楽しくて仕方がない。
そういう印象を受けた。
「手術はあと半日はかかるだろう。待つのも体力を使うから、帰宅するのをお勧めするよ。君さえ良ければ食事をご一緒してもっと話をしたいけれど、それは嫌だろう?」
「分かってるなら聞くな」
「はは、悪いね。僕はいつも一言多いんだ。君達の部屋には清掃員をよこしておいたから、血の跡はきれいに片付いているはずだ。帰ってゆっくり休むといい」
「……ありがたくそうさせてもらうよ」
タクシー券を渡されたが、目の前でビリビリに破いて歩いて帰った。
その道中、気が向かなかったがスマホを取り出しバレルへ電話を繋ごうと試みる。
現在、彼の電話番号は使われていないらしい。
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