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第3部 初めてのお使い 初めての・・・
第45話 きわめて扱いにくい囚人
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リンクスくんの持ってきてくれたスープは、一応、食べても平気なものだった。
いきなり、毒殺はないにしろ、こちらの意思を奪うか、体をうごかなくする毒でもいれられるのを警戒していたのだが、そんなこともない。
おいしくはなかった。豆を煮たただけでそもそも味がない。
昼時には少し早いが、ネイア先生のサンドイッチを食べ、ついでにネイアにことの顛末を報告した。
彼女が作ってくれたものを食べてるときは、念話がつながりやすいことを発見してぼくは満足した。
どんな場合でも新しい発見があるのはいいことだ。
「神竜の息吹」に捕まった、と言うとパニックを起こしかけたので、大丈夫だからリウたちには適当にごまかすよう頼み込むと、とんでもない、と拒否された。
とにかく、動くのは禁物、こちらからの連絡を待つようにお願いした。
リンクスくんが食器をさげにきたので、部屋のお礼を、言った。
部屋は半地下だが、通風も採光もあり、鍵は簡単に開けられる単純構造。
なにか言いたげに、もぞもぞしているので「なに?」と聞くと、
「いや、自分がどうなるとか気にはならないわけ?」
と問い返してきた。
見ればまだ若い。ぼくやリウ(の見かけ上の年)といくつも違わないだろう。
魔導師ならばまだ学校に通うか、気難しい師匠について身の回りのお世話でもしながら、勉強しているころだ。
実際に魔法封じなんて、規格外の技を使えるような才能があるんなら、こんなまともでないギルドに勤めず、修行に明け暮れたらきっと大成できるのに。
「リンクスさん、その魔道封じの能力なんですが、どこでマスターしたんです?」
いまこの状況でそれが気になるのか!と、リンクスは目を丸くして、ぼくを見つめた。
「ぼくの家は代々、そんな能力をもってるんだ。」
「そりゃすごい。」
「いや、すごい、かな。
たしかにユニークな能力なのは認めるけど。」
彼は弱々しく笑った。
「もともと男性よりも女性に強く発現しやすい能力でね。
ぼくの能力は、姉には遠く及ばなかったし、今もきみにはぜんぜん通じてないのは自分でもわかった。」
ぼくを基準に考えたらだめです。
「ちなみに、お姉さまはいまどちらに?」
「聖光教会の聖女をしている。沈黙の聖女スズカゼってきいたことあるかな?」
残念ながらないです。
辺境の出なもんで。
だがそんな二つ名があるくらいだから、有名なんだろうと思う。
恐らくは対魔道士用の戦闘員として。
「家の事まで、ぼくにしゃべっていいんですか?」
「ああ」
リンクスくんはちょっと悩むように顔を顰めたが、決心したように喋り出した。
「きみは、ここを何やら、冒険者ギルドに名を借りただけの裏社会の組織か何かだと思ってるんだろうね。
確かにやることはそれに近い・・・いやもっと悪質かもしれないけど、実際には上の方ともしっかりつながっているんだ。
冒険者学校でいえば、主流派はジャンガ現学長。
きみたちが肩入れしたルールス前学長は、むしろ少数派でね。」
「上の方?」
「そうだよ。残念だけど抵抗するのも虚しいほどに上のほう。例えば、きみがどこかの貴族の伝を辿って、今回の悪事を暴こうとしても、簡単に揉み消せるくらいの。」
そうかそうか。
いくつかのことに合点がいった。
「で、その上の方は聖光教だとして、ランゴバルドはどの程度、この件には肩入れしてるの?」
「え、え、え・・・・聖光教なんて言ってない・・・・」
「きみより、なんぼか優秀な姉さんが聖女なんでしょう? 二つ名のある。
じゃあ、きみ自身も聖光教会の意向を受けて、ここに来ていると判断した方が妥当じゃないですか。
どう見ても荒事に向いてるようには見えないし。
好んでこんな集団に入ろうとするようには思えない。
その一方で、邪険にはされてるけど、少なくとも直接暴力は振るわれていない。」
リンクスは哀れなほどに動揺していた。
「それで、聖光教、まあ言い換えれば聖帝国の目的はなに?」
「具体的には知らないんだ・・・でも考えればわかるよ。
冒険者協会という国際的な組織にもっと影響力が欲しいんだ。
そのためには、ルールスのような昔気質の人間はジャマなのさ。」
リンクスはすがるようにぼくを見た。
「なあ、ルト・・・だっけ。ぼくはこれからどうすればいいんだろう。」
相談する相手を明らかに間違えていたが、実はそれは正解。
ぼくは、これを解決してやれるし、「神竜の息吹」に殺しちゃいけない相手を作っておけば、いざ戦う段になったときに、ぼくの力も自然に力もセーブできるはずだ。
たぶん。
「この先のスケジュールがわかったら教えといてほしい。」
とぼくが頼むと、それはリンクスくんにもわからないらしい。とにかく、あのボス(どうもあいつをギルマスとは呼びたくない感じだ)は、気まぐれで気分屋で、その時の感情でほいほい予定をかえる。
だが、あのあとしたたかに酔っ払って、女二人と寝室にしけこんだので、あと何時間かは動きはないだろう、とのこと。
おいおい、昼間だぞ。
リンクスには、魔力を封じる魔法と体力を落とす魔法をかけておいたと、伝えてくれ、とだけ言って戻ってもらった。
別れ際にリンクスがきみ悪そうにぼくを見ている。
ああ、しまった。また笑ってたのか。
これは他人さまには見せてはいけない笑いだった。気をつけないと。
いきなり、毒殺はないにしろ、こちらの意思を奪うか、体をうごかなくする毒でもいれられるのを警戒していたのだが、そんなこともない。
おいしくはなかった。豆を煮たただけでそもそも味がない。
昼時には少し早いが、ネイア先生のサンドイッチを食べ、ついでにネイアにことの顛末を報告した。
彼女が作ってくれたものを食べてるときは、念話がつながりやすいことを発見してぼくは満足した。
どんな場合でも新しい発見があるのはいいことだ。
「神竜の息吹」に捕まった、と言うとパニックを起こしかけたので、大丈夫だからリウたちには適当にごまかすよう頼み込むと、とんでもない、と拒否された。
とにかく、動くのは禁物、こちらからの連絡を待つようにお願いした。
リンクスくんが食器をさげにきたので、部屋のお礼を、言った。
部屋は半地下だが、通風も採光もあり、鍵は簡単に開けられる単純構造。
なにか言いたげに、もぞもぞしているので「なに?」と聞くと、
「いや、自分がどうなるとか気にはならないわけ?」
と問い返してきた。
見ればまだ若い。ぼくやリウ(の見かけ上の年)といくつも違わないだろう。
魔導師ならばまだ学校に通うか、気難しい師匠について身の回りのお世話でもしながら、勉強しているころだ。
実際に魔法封じなんて、規格外の技を使えるような才能があるんなら、こんなまともでないギルドに勤めず、修行に明け暮れたらきっと大成できるのに。
「リンクスさん、その魔道封じの能力なんですが、どこでマスターしたんです?」
いまこの状況でそれが気になるのか!と、リンクスは目を丸くして、ぼくを見つめた。
「ぼくの家は代々、そんな能力をもってるんだ。」
「そりゃすごい。」
「いや、すごい、かな。
たしかにユニークな能力なのは認めるけど。」
彼は弱々しく笑った。
「もともと男性よりも女性に強く発現しやすい能力でね。
ぼくの能力は、姉には遠く及ばなかったし、今もきみにはぜんぜん通じてないのは自分でもわかった。」
ぼくを基準に考えたらだめです。
「ちなみに、お姉さまはいまどちらに?」
「聖光教会の聖女をしている。沈黙の聖女スズカゼってきいたことあるかな?」
残念ながらないです。
辺境の出なもんで。
だがそんな二つ名があるくらいだから、有名なんだろうと思う。
恐らくは対魔道士用の戦闘員として。
「家の事まで、ぼくにしゃべっていいんですか?」
「ああ」
リンクスくんはちょっと悩むように顔を顰めたが、決心したように喋り出した。
「きみは、ここを何やら、冒険者ギルドに名を借りただけの裏社会の組織か何かだと思ってるんだろうね。
確かにやることはそれに近い・・・いやもっと悪質かもしれないけど、実際には上の方ともしっかりつながっているんだ。
冒険者学校でいえば、主流派はジャンガ現学長。
きみたちが肩入れしたルールス前学長は、むしろ少数派でね。」
「上の方?」
「そうだよ。残念だけど抵抗するのも虚しいほどに上のほう。例えば、きみがどこかの貴族の伝を辿って、今回の悪事を暴こうとしても、簡単に揉み消せるくらいの。」
そうかそうか。
いくつかのことに合点がいった。
「で、その上の方は聖光教だとして、ランゴバルドはどの程度、この件には肩入れしてるの?」
「え、え、え・・・・聖光教なんて言ってない・・・・」
「きみより、なんぼか優秀な姉さんが聖女なんでしょう? 二つ名のある。
じゃあ、きみ自身も聖光教会の意向を受けて、ここに来ていると判断した方が妥当じゃないですか。
どう見ても荒事に向いてるようには見えないし。
好んでこんな集団に入ろうとするようには思えない。
その一方で、邪険にはされてるけど、少なくとも直接暴力は振るわれていない。」
リンクスは哀れなほどに動揺していた。
「それで、聖光教、まあ言い換えれば聖帝国の目的はなに?」
「具体的には知らないんだ・・・でも考えればわかるよ。
冒険者協会という国際的な組織にもっと影響力が欲しいんだ。
そのためには、ルールスのような昔気質の人間はジャマなのさ。」
リンクスはすがるようにぼくを見た。
「なあ、ルト・・・だっけ。ぼくはこれからどうすればいいんだろう。」
相談する相手を明らかに間違えていたが、実はそれは正解。
ぼくは、これを解決してやれるし、「神竜の息吹」に殺しちゃいけない相手を作っておけば、いざ戦う段になったときに、ぼくの力も自然に力もセーブできるはずだ。
たぶん。
「この先のスケジュールがわかったら教えといてほしい。」
とぼくが頼むと、それはリンクスくんにもわからないらしい。とにかく、あのボス(どうもあいつをギルマスとは呼びたくない感じだ)は、気まぐれで気分屋で、その時の感情でほいほい予定をかえる。
だが、あのあとしたたかに酔っ払って、女二人と寝室にしけこんだので、あと何時間かは動きはないだろう、とのこと。
おいおい、昼間だぞ。
リンクスには、魔力を封じる魔法と体力を落とす魔法をかけておいたと、伝えてくれ、とだけ言って戻ってもらった。
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