あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

文字の大きさ
221 / 574
第5部 ギウリーク動乱篇~ミトラへの道

第202話 黒竜ラウレスとお決まりの「アレ」

しおりを挟む
「あなたが来られたということは、かなりの大物からの依頼があった、とそのように解釈してよろしいのでしょうな?」
前ロデニウム公の声は大きい。

周りのもの達にも聞かせたいのだ。
ラウレスはちょっと考えてから、同じように大きな、よく通る声で答えた。
「そうですね、定命の人を超えた存在、至高、といってもよい方の命令です。」
ラウレスが言ったのはギムリウスのことだったが、ご老公もまわりのもの達も、そう解釈しなかった。

至高、つまりは皇帝か教皇、いや人を超え、古竜に「命令」できる存在ならばあるいは、「竜の都」の長老たちが動いたのか!
まさか!

ラウレスは悠然と笑っている。
それは高いところから無事に着地できた安堵感によるものだが、周りはそう解釈しない。
人の世を超越した古竜が浮かべる余裕の笑いに見えた。

「な、ならば、」
治安長官は恐る恐る声をかけた。
「先程のお話にありました通り、クローディア陛下は無罪である、と。」

何を言ってるの?
とラウレスはにっこりと微笑んだ。

「何か勘違いがあったのかもしれないけど、わたしは陛下とアウデリアさまを迎えに来ただけだよ。もし何かの間違いで不当に拘束されているのなら、すぐに解放しないとどうなっても知らないよ?」

外見は少年の域からいくつもでない。可愛らしい感さえある巻き毛の青年であるが、こうなると謎めいた雰囲気もあってどこか高貴な印象があるのが、不思議だった。
ラウレスは、もちろん、ギムリウスたちのことを言ったのだが、聞いたものはそうは解釈しなかった。


「貴様が古竜だと言うのか?」
シホウが、一歩歩み出た。
「わたしの拳法が古竜に通じないとでも思ったか?」

「いや、そんなことはないよ。」
ラウレスはごくごく自然体である。
「古竜にだって、ピンからキリまであるからね。」

「ほう」とシホウは笑った。「お主はどっちだ。」

「キリの方だね。」
と、なんの気負いもなくラウレスはそう言った。その飾らない強さがまた、集まったものたちを魅了する。ラウレスにしてみれば単純に感想を述べただけだ。彼の知己を得た古竜には、「神竜」と呼ばれるリアモンドがいる。若く天才だと言うならラスティやゾールが上だろう。
彼は何しろ、人間に対しては四連敗中なのだ。
古竜ラスティに勝つには勝ったが、それはお料理対決だったのだが。

「し、失礼ながら、改めてお聞き申し上げます。」
治安長官は、平伏せんばかりに尋ねた。
「あなたさまは、お噂通り、前ロデニウム公爵閣下でありましょうか。」

だめだよ!そっちから名前を言ったら。影共のマロクとシチカが顔を顰めた。いつものが出来ないじゃないか。

「そうかのう。」
ご老公は、品のある笑いを浮かべた。
「今は、旅から旅の流浪の身じゃからなあ。」

「そ、そして・・・・こちらのラウレスさまと言うのは、まさか!!」

もう、ここしかないな。
マロクとシチカは目配せしあった。
ずずいと前に出る。

「ええい!ひかえいひかえい! 
ここにおわすお方をどなたと心得る!
恐れ多くも先の聖竜師団最高顧問ラウレス閣下にあらせられるぞっ」
「頭が高い! ひかえおろう!」


ええっ!
そっちなの?
ご老公は一瞬唖然とした顔をしたが、なんとか取り繕った。
ラウレスを中心に、一歩引いた位置に立つ。

一同は・・・冒険者たちも鉄道治安局のものたちも、そして、「絶士」シホウも平伏した。
なんとなくお約束のような気もしたし、目の前の青年がもし先ほど、空中からオーベルの破壊を宣言した古竜ならば、そうするしかなかった。

「保安局の隊長さんはどなたかな?」

ご老公は、目の奥に厳しい光を浮かべて隊長を立たせた。

「今回の鉄道公社の責任者はどなたかな?」
「は・・・・」
隊長の目が泳いだ。
「・・・ゼナス・ブォストル局長ですが。」

「そのものの元に我々を案内してもらおうか。」
「は・・・・し、しかし・・・」
「此度の一件は色々と裏がありそうじゃな。お主らも訳もわからぬまま処罰されたくはあるまい?」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...