あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

文字の大きさ
369 / 574
第7部 駆け出し冒険者と姫君

第348話 駆け出し冒険者は呪う

しおりを挟む
そう。
ぼくとアキルが考えた、相手がいちばん嫌がるであろう対処法は、まず第一に、それぞれの親に告げ口することだった。
片方は武力で。もう片方は魔力で。
キレさせたら、対処が不可能な連中である。もっとも闇森のザザリと斧神の化身アウデリアは、伝説、民話の類ではあまり友好的な関係には、描かれていなかった。

「それで、あの二人が、その」
魔女ザザリよりも純朴なメア王妃のパーソナリティが、前面に出ているため、口にするのも恥ずかしそうに、メア王太后は言う。
「リウとフィオリナさんが、と、特別な関係にあるのは間違いないのかしら。」

「ルトくんの前で、ディープキスかましてましたっ!」

「そ、それはかなり特別だけれども」
メア王太后は真っ赤になった。
「キスくらいはその、単に親愛の情を示すくらいのこともあるし。」

「うちのフィオリナは、おまえんとこのリウとデートした後、下着を忘れて帰ってきたそうだ。」
「まあ、間抜けなお嬢さん‥」
「おたくの息子さんはそれをわざわざ届けにきてくれたそうだ。親切な息子さんだな!」
「あら。受け取ったのは。」
「ルトだ!」

あらまあ。と言ってメア王太后は 、ぼくに頭を下げた。
「リウはなんと言ってましたでしょう?」
「フィオリナの魂は高潔な騎士のもので、男性にが似合うのだと。」

「アレが!?」
と吐き捨てたのはアウデリアさんだった。

「なので、フィオリナを男性にして、自分が女性になったら、とても相性がよかったそうです。」

アキルが勢い込んで言った。
「アイツらは!
ルトくんを下僕にするって言ったんです。朝から晩まで傍に仕えさせて、閨の様子まで見せつけるって!」

「どうだろう、ザザリ。」
アウデリアさんが、若干疲れたように言った。
「我が子たちの性癖を暴露されるのも辛いものがあるが。
もともと三人で結婚式がどうしてこじれたのだ?」

「ルトくんが、リウくんとやりあった時に、手加減したのがわからなかってみたいで、『おまえの力はこの程度か』みたいな展開になって。」

アキルは、よく見てるなあ。
正直、リウも半分は好意でやってるのがわかったんで、本気にはなりにくかったんだ。
ウィルニアが、「見てる」のにも気がついたし。

結果は最悪。
リウみたいなタイプは、まず相手の能力から、相手を判断するんだろう。
隠していた実力がその程度か、と思われてがっかりされたのかもしれない。すまないね、陛下。

「わたしとしては、我が子の幸せを第一に考えたい。」
メア王太后は、目をふせた。
「ルトには、幾重にも詫びよう。だが、もし、我が子が真摯にフィオリナ姫、いやフィオリナ公子を愛しているのであるであれば、そして、フィオリナ公子もリウを愛し、家庭をもち、子を育むことを望むならば。なにとぞ、ふたりを祝福してもらえないだろうか。」

「そうだなあ。」
アウデリアも首をかしげた。
「確かに、わたしもこれでフィオリナが落ち着けば、それに勝るものはない。
まして、もし子でも成せば、それはそれで喜ぶべきこと。もしそうなれば、あの二人を祝福してやってもらえないだろうか。」

「最終的には。」
「そう・・・最終的にな、なあ。」

ゆらあ。
二人の奇女は立ち上がった。

「まずは、足腰たたなくなるまで、叩きのめして反省させてからだな。」
「やはり、母親をという巨大な壁を、乗り越えるという経験を与えてやらねば・・・ワガママグセは直りませんね。」

「る、ルトくん! これでいいのっ!?」

アキルが叫んだ。

「いい。」
と、ぼくは答えた。

「フィオリナさん、とられちゃうけど!」
「まあ、ぼくの体の用意が出来てない以上、一時的には、仕方がない。」
「でも、耐えられるの! フィオリナさんとリウのこどもができるんだよ!?」
「ああ」
ぼくは、またあの笑い方をしているらしい。なんどもフィオリナから止められたとてもいやあな笑い方だ。自分でもそう思ってるんだけど、こんなときにはいいだろう。
邪神少女が怯えている。
「それは、手を打ってある。」

「だって、もうフィオリナさんたちの居場所もわからないんでしょ?」
「まあ、フィオリナとリウのほうからコンタクトをとってくると思うよ。」


-------------------------------

閉ざされた世界。
隔離された異界。
ウィルニアが、そもそもリウからフィオリナを守るために作った世界だ。だが、ウィルニアがリウの側についた今、そこは、リウとフィオリナの愛の巣だ。

黒曜石の宮殿の奥に、ふたりのための寝室が備えられていた。
とちらから、誘うまでもなく、ふたりはごく自然にそこにたどり着いく。
着衣を脱がすまもなく、もつれあう白い肉体。
どこかに少年の危うさを残しながらも引き締まったフィオリナの肢体。幼さを残しながらも女性らしいまろやかな曲線をもつリウの肢体。
ふたりの体は絡み合う。
指先。唇。ふれるところすべてが、痺れるような快感にかわり、美しいふたりの体はなんどものけぞった。

はい。これ以上、細かな描写は勘弁してほしい。
R15指定しかしてません。
だが、ふたりともにあまりに美しかった。そのふたりの営みは神話の一章をみるような神聖な美しさがあった。

だが。
「な、ぜ・・・・」
フィオリナの顔が、焦りと苦渋に、歪んでいる。脂汗が、裸のリウの胸におちた。
リウも、明らかな異常に気がついている。その顔はいぶかしげに。しかし不快げに眉間にしわがよっていた。
ふたりの視線は、ともにフィオリナの股間にむかっていた。
リウの顔がそこに寄った。
しめっぽい音が寝室にひびく。それは十分以上は続いただろうか。

口を離して、リウは、フィオリナを見上げた。
フィオリナは、呆然とつぶやいた。
「だめ・・・だ。」

リウも呆然としている。いったい何が。
何が。

-------------------------------


「まあ、攻撃はそこそこに抑えていたし、リウに刺された傷の、治癒を遅らせてまで、紡いだ呪詛だからねえ。」
ぼくは笑う。とつぜん、そこが役にたたなくなった男は、なにかと笑い話にされがちだ。本人と、パートナーにとっては深刻な問題なのだろうが。

たとえば、密かに不倫して、快楽を貪ったあげくに、婚約者をぐさぐさ刺して、逃避行を決め込んだカップルなら、ちょっとくらいは笑ってもいいのではないだろうか。
しかも、あのフィオリナが。
あの戦女神と呼ばれた美しく気高い戦士が。


ED。
に悩むところとか。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...