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第8部 残念姫の顛末
第406話 残念姫と古竜
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蜘蛛の主従そして、ヴァルゴールの使徒、あるいはその両方を兼ねたものを後にして、フィオリナとリウは、竜たちが飲み食いをしているテーブルへと移動した。
古竜がこれほど一堂に集まったことは、竜の都以外で、ほかにあるのだろうか。
しかも、伝説の魔王宮の竜たち。竜王直属の親衛隊たる「竜王の牙」。いずれも並の古竜ではない。
あ、そういえば、ラウレスくんは並の古竜でしたが、彼は、ルトと一緒に、ライブキッチンにて絶賛お料理中だったので、残念嫁と駄魔王の相手をしている余裕はなかった。
古竜たちも、何だか彼らの知ってる人間の結婚式とは、だいぶ異なる式次第に、だんだん式の方はどうでも良くなっていた。ほとんどの古竜たちは、料理をするラウレスに注目し、二人の注意を向けたのは、ラスティやケミストリニア、リイウーなど数体にすぎない。
「陛下!」
もっとも神竜に近いと噂される氷竜公女ラスティは、尊敬するリアモンドを真似た水着姿だった。
露出はだいぶ多い。どのくらいかと言えば、一人で歩いていたら、ラスティ自身が、大人と一緒ならその大人が逮捕されるレベルである。
彼女は、自分の収納から、炭化した塊を取り出して、リウに差し出した。
「クッキー焼いたよ。食べる?」
リウは素直に、炭の塊を頬張った。
「腕を上げたな、ラスティ。なかなか香ばしいぞ。」
「ところで、何がどうなってるの?」
と、ラスティは不思議そうに、フィオリナとリウを見比べた。
「リアモンドさまから、これは、ルトとフィオリナの結婚式だってきいたよ?
なんで陛下がフィオリナと、一緒にいるの?
陛下は、あのルトくんを伴侶にしたかったんじゃないの?」
フィオリナの顔が、え?という表情に変わった。
ラスティが冗談を言っているのではないことが、わかると、見る見る顔色が青くなっていく。
「それってどういうこと?」
「だって、あのルトくんって見るからに参謀向きじゃん。」
ラスティは、もうひとつ炭の塊を取り出したが、リウは流石に辞退した。
「陛下の側近にぴったりだよ。陛下も一目惚れして誘ったんだけど、フラれたんだよね?」
「チ、ちょっと、リウ! 一体どういう・・・・」
「まあ、まあ」
喉を絞めるフィオリナの腕は、リウでなければ首の骨が折れている。
「これは、よくある話なのだが、誰かと誰かを同時に愛することは可能なのだ。
確かにルトに一目惚れしたこは事実だが、それは前のこと。
オレは、友として仲間として、ルトを身近に置きたい。」
「そ、そ、それは伴侶って言葉は使わないでしょ?」
「あのなあ。」
リウは、このときなんの悪気もなかった。ただ起きたことを淡々と述べただけだった。
「オレは、ルトを身近に一番そばに置きたいと、そのとき思ったんだ。
第七層で竜どもと遊んでいたオレのところにバカみたいに、のほほんとした顔でやってきて。
まるで、淀んだ空気のなかに、爽やかな風がふいたようだった。
こいつを逃す手は無い。なので、オレはヤツの体を女に変えて誘ってみた。あいつが拒んだので今度はオレの体を女性にしてみたのだが」
リウは、苦笑した。
「どっちも拒まれた。それだけの話だ。」
やすやすと誘いにのった誰かさんとは違って。
とはリウは言わなかった。
勝手にそう聞こえたのはフィオリナの脳内だけだった。
フィオリナは、そのまま、リウを投げ倒した。
せっかく、ルトが整地した床にまた大きなひび割れが走る。
いままで、いちゃいちゃしていたカップルが、喧嘩を始めたので、さすがにふたりは一瞬、注目を浴びたのだ。
だが、それを蹴散らすかのように。
「みなさーん!
お肉が焼き上がりました。これからお配りしまーす。」
ルトのタイミングを測ったかのような声に、会場の関心はそちらに向かう。
見事に焼きあがった三種の肉と付け合せの野菜ののった皿が次々と、列席者の前に転移してきた。ブラウンのソースが香ばしい匂いで嫌が上にも食欲がそそる。
誰にも注目されぬ、痴話げんかはかなり虚しい。
えり首をつかんで、リウを引きずりあげたところで、フィオリナは、自分たちのぶんも、目の前のテーブルに転移されているのを確認した。
「・・・とりあえず、食べましょう。」
「そうだな。」
リウは、後頭部をさすっている。
「頑丈だなあ。さすがは フィオリナの」
マッシュポテトの入ったボウルを抱えたエプロン姿のルト、だった。
フィオリナの。
さて、なんだろう。
と、少年は首を傾げた。
「恋人」というには、どろどろし過ぎているようでもあるし、「愛人」というには2人の想いは、純粋だ。
だいたい、婚約者であり、新郎である自分の立場がないではないか。
「アレだなあ。」
「ルトっ!」
フィオリナが食ってかかったので、皿にマッシュポテトを山盛り。ついでに口にも放り込んだ。
うーうーうー
と、ポテトを、飲み込みながら喋ろうとするフィオリナを、リウは心配そうに見つめた。
「なんと言ってる?
なにがいいたい?」
「リウはわたしのものだから!
あんたなんかには渡さない!」
ルトが親切に通訳してやると、フィオリナが涙目で頷いた。
なるほど。
確かに、この二人はいいコンビなのだ。
リウは感心した。
古竜がこれほど一堂に集まったことは、竜の都以外で、ほかにあるのだろうか。
しかも、伝説の魔王宮の竜たち。竜王直属の親衛隊たる「竜王の牙」。いずれも並の古竜ではない。
あ、そういえば、ラウレスくんは並の古竜でしたが、彼は、ルトと一緒に、ライブキッチンにて絶賛お料理中だったので、残念嫁と駄魔王の相手をしている余裕はなかった。
古竜たちも、何だか彼らの知ってる人間の結婚式とは、だいぶ異なる式次第に、だんだん式の方はどうでも良くなっていた。ほとんどの古竜たちは、料理をするラウレスに注目し、二人の注意を向けたのは、ラスティやケミストリニア、リイウーなど数体にすぎない。
「陛下!」
もっとも神竜に近いと噂される氷竜公女ラスティは、尊敬するリアモンドを真似た水着姿だった。
露出はだいぶ多い。どのくらいかと言えば、一人で歩いていたら、ラスティ自身が、大人と一緒ならその大人が逮捕されるレベルである。
彼女は、自分の収納から、炭化した塊を取り出して、リウに差し出した。
「クッキー焼いたよ。食べる?」
リウは素直に、炭の塊を頬張った。
「腕を上げたな、ラスティ。なかなか香ばしいぞ。」
「ところで、何がどうなってるの?」
と、ラスティは不思議そうに、フィオリナとリウを見比べた。
「リアモンドさまから、これは、ルトとフィオリナの結婚式だってきいたよ?
なんで陛下がフィオリナと、一緒にいるの?
陛下は、あのルトくんを伴侶にしたかったんじゃないの?」
フィオリナの顔が、え?という表情に変わった。
ラスティが冗談を言っているのではないことが、わかると、見る見る顔色が青くなっていく。
「それってどういうこと?」
「だって、あのルトくんって見るからに参謀向きじゃん。」
ラスティは、もうひとつ炭の塊を取り出したが、リウは流石に辞退した。
「陛下の側近にぴったりだよ。陛下も一目惚れして誘ったんだけど、フラれたんだよね?」
「チ、ちょっと、リウ! 一体どういう・・・・」
「まあ、まあ」
喉を絞めるフィオリナの腕は、リウでなければ首の骨が折れている。
「これは、よくある話なのだが、誰かと誰かを同時に愛することは可能なのだ。
確かにルトに一目惚れしたこは事実だが、それは前のこと。
オレは、友として仲間として、ルトを身近に置きたい。」
「そ、そ、それは伴侶って言葉は使わないでしょ?」
「あのなあ。」
リウは、このときなんの悪気もなかった。ただ起きたことを淡々と述べただけだった。
「オレは、ルトを身近に一番そばに置きたいと、そのとき思ったんだ。
第七層で竜どもと遊んでいたオレのところにバカみたいに、のほほんとした顔でやってきて。
まるで、淀んだ空気のなかに、爽やかな風がふいたようだった。
こいつを逃す手は無い。なので、オレはヤツの体を女に変えて誘ってみた。あいつが拒んだので今度はオレの体を女性にしてみたのだが」
リウは、苦笑した。
「どっちも拒まれた。それだけの話だ。」
やすやすと誘いにのった誰かさんとは違って。
とはリウは言わなかった。
勝手にそう聞こえたのはフィオリナの脳内だけだった。
フィオリナは、そのまま、リウを投げ倒した。
せっかく、ルトが整地した床にまた大きなひび割れが走る。
いままで、いちゃいちゃしていたカップルが、喧嘩を始めたので、さすがにふたりは一瞬、注目を浴びたのだ。
だが、それを蹴散らすかのように。
「みなさーん!
お肉が焼き上がりました。これからお配りしまーす。」
ルトのタイミングを測ったかのような声に、会場の関心はそちらに向かう。
見事に焼きあがった三種の肉と付け合せの野菜ののった皿が次々と、列席者の前に転移してきた。ブラウンのソースが香ばしい匂いで嫌が上にも食欲がそそる。
誰にも注目されぬ、痴話げんかはかなり虚しい。
えり首をつかんで、リウを引きずりあげたところで、フィオリナは、自分たちのぶんも、目の前のテーブルに転移されているのを確認した。
「・・・とりあえず、食べましょう。」
「そうだな。」
リウは、後頭部をさすっている。
「頑丈だなあ。さすがは フィオリナの」
マッシュポテトの入ったボウルを抱えたエプロン姿のルト、だった。
フィオリナの。
さて、なんだろう。
と、少年は首を傾げた。
「恋人」というには、どろどろし過ぎているようでもあるし、「愛人」というには2人の想いは、純粋だ。
だいたい、婚約者であり、新郎である自分の立場がないではないか。
「アレだなあ。」
「ルトっ!」
フィオリナが食ってかかったので、皿にマッシュポテトを山盛り。ついでに口にも放り込んだ。
うーうーうー
と、ポテトを、飲み込みながら喋ろうとするフィオリナを、リウは心配そうに見つめた。
「なんと言ってる?
なにがいいたい?」
「リウはわたしのものだから!
あんたなんかには渡さない!」
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なるほど。
確かに、この二人はいいコンビなのだ。
リウは感心した。
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