あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

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第9部 道化師と世界の声

銀灰への道4

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陸橋で谷を横断したあとも、列車は、急斜面をエグるようにして、敷かれたレールのうえをひた走る。
レールは、金属製で列車は、そのうえを走るのだ。

客車の屋根は、ぼくとクサナギ。
クサナギは、車両の先頭にたって、風を楽しむように、大きく手を広げていた。

「ねえ、ルトくん。」
振り向いた笑顔は、まぎれもなく、見かけの年齢にふさわしい、屈託のない笑顔で、ぼくはそれに気圧された。

「きみは、誰を騙そうとてるの?」
「当面は、『世界の声』を名乗る神々の集合体だな。」
「そういうことに、しておこう、」
クサナギは、しゃがみこむと、客室のまどを大きく開けた。
「部屋に帰る。」
「どうしたの? 寒くなった?」
「いやいや」
クサナギは、またにこりと笑った。
「そろそろ、ご飯の時間だよ!」

列車というものは、もともと乗り降りの場所がきまってして、それを「駅」という。
峠の手前の森林地帯で、勝手に乗ってきたミケとポチとタマについては、ぼくが、乗車料金を払った。

あくまで、人間ひとりと、ペット2匹の料金だ。
人界にでるのが、ひさしぶりなミケはルルナへの挨拶をすませたあと、さっそく、車酔いした。

「わたしは、わたしは悪夢を見てるんだ。」
寝室に呼びに行くと、ミケは、ぶつぶつと文句を垂れながらも、ぼくと一緒にリビングに向かった。
ポチ(50メトル級の嵐竜)とタマ(40メトル級の嵐竜)が、心配そうにその足元にまとわりつく。
姿は、それぞれ、仔犬と子猫だ。

クサナギに叩き連れられたその体から、損傷の少ない部位をかき集めて、再構築したら、そのサイズになったのだ、

「竜王陛下の『牙』に、クサナギがいる。でクサナギは、人間のこどもに懐いていて、敬語で話をしている。その子どもは竜王陛下の同級生で・・・・・」
「先輩ね、一応。」

ぼくは、指摘した。

「おまえも古竜か? なにかの変化したものか?」
「いや、ただの駆け出し冒険者。」

-------------------

特等車両の食事は、滞りなく、進んだ。
偏食の多い長寿族だったが、ガセルも小さな体のどこに収まるのかという、フルコースのディナーをペロリと平らげている。

デザートと、お茶が運ばれたところで、ぼくは、おもむろに立ち上がった。
「さて、明日はいよいよ、銀灰の入口に到着です。これからの打ち合わせをしておこうと思います。」

ルルナが、頷く。
「むしろ、なぜ今まで、なんの打ち合わせもしないのか、不思議に思ってました。」

「飛び入りの参加とか、色々あって。」
と、ぼくが言うと、「わふっ」「みぃにゃお」と嵐竜たちがすまなそうに、返事をした。主であるミケはきょとんとしていたので、この二匹のほうが頭がいいかもしれない。
言語を操ることと、知性は必ずしもイコールではないのだ。

「ぼくも含めて全員が、始めての銀灰皇国です。八大列強のなかでも、極めて閉鎖的だ。オルガから聞いただけでも、例えば『浮遊』が使えないと、まともに移動すらままならない。」

ガセルは、むっとしたようにまくし立てた。
「ふざけるなっ! 確かにわしは魔法が得意とは言わんが、その程度初歩の初歩、おのれに心配されるほど耄碌しておらんわい。」

そういう風に、すぐ感情が昂るのも老化のせいかもなんだけど。

「イゼルは?」

狩猟民族は、険しい顔で頷いた。
「魔法はダメだけど。単に垂直への移動ということなら、何とかなる。」

「古竜のみなさんは?」

一応、聞いてみた。盟友ラウレスくんが、人化した状態では、浮遊も飛翔も使えないことを思い出したからなのだが、ルルナもクサナギもミケも、問題ないとのことだった。

「まあ、これは一例であって、様々な慣習や独自の作法があって、部外者にはとても厳しい所らしい。」
「ならば、なぜオルガ姫を連れてこなんだ?」
ガセルが言った。じじいは、決して馬鹿では無い。人格的な安定や常識をわきまえてくれるところは、明らかにボルテックの妖怪じじいよりは上だろう。
ただ、ぼくを嫌いなのはしょうがない。

「オルガは、皇位継承者をめぐって、命を狙われている。」
「皇帝が後継者に指名したからには、味方だっておるだろうに。」
「オルガは、あれでけっこう優しくてね。」

ぼくは、デザートを平らげたガセルのほうに自分の分のケーキを推しやりながら言った。

「自分の味方が、この争いで命を落とさないように、自分への支持を口外することを禁じているのさ。」

ルルナは、くすり、と笑った。
「面白いおひとですね、オルガさんは。」
竜王は、楽しげにお茶をお替りする。
「それは、竜の考え方に近いかもしれません。」

「そうは言っても、なんの協力者もいなければ、そもそも都にたどり着くことさえ、難しい。なので、一応、ガイドは雇ってある。」

「信用できるのか? 何者じゃ、そのガイドとやらは。」
「唯一、オルガへの支持を公然としている現皇帝『壊滅帝』配下の特殊戦力『悪夢』だよ。」
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