あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

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第9部 道化師と世界の声

解説魔王

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「我々が、ランス選手だと思い込んでいたのは、精霊ランスが作ったヒトガタにすぎない。これは必ずしも戦ったり欺くために使われるわけではない。
人は人の姿をしていないと、対等な仲間として認めない。単純にコミユニケーションをとるための道具だ。
いろいろ、呼び方はあるが、『義体』というのが一般的だな。」

リウは、話が上手い。
人を惹きつけるカリスマ性が備わってる。フィオリナだって、階層主のみなさだって、そうなのだが、どうもぼくだけはこの点、仲間はずれらしいのだ。

「人間の技術でこれを再現するとなると、魔道人形がもっともそれに近い。
さて、魔道人形にも共通して言えることなのだが、人間に近い構造で体を作ることは、同時に人間としての弱点も多く抱え込む。
手は二本しかないし、足も二本。これは実に不安定で、転びやすい。われらの仲間であるギムリウスなどがよく、文句を言っているとおりだ。
そしてそれ以上に、自分自身に魔法をかける際にさまざまな制限が付くことになる。たとえば、先程、積層魔法砲とブレスが相打ちになったあと、接近戦になった際に、その」

ウィルニアの配信に割り込んだにせよ、そっちからこちらがわが見えるわけがないだろう、と思うのだが、リウは間違いなく、ぼくを見ていた。

「ルウエン少年とやらの攻撃がまった当たらなくなったのも、ランスが、自分自身に、うけた攻撃の向きを変えるような魔法をかけていたからだ。たんに反発するだけでなく、攻撃したものがバランスを崩すように、力の向きをかえる。
それだけだなら、なんとか人間の肉体に施すことも可能だが、一般的に近接戦に必要な、力、敏捷性の強化、防御力の強化などを重ねがけするとなるといろいろと問題がでる。
その点、外見を似せただけの義体ならば、そんな心配はないわけだ。」

リウの長ったらしい説明は、観客に受け入れられてた。
さすがは、踊る道化師・・・・とつぶやく声がそここから聞こえる。

「この時点で、『鏡』で観戦していたオレは、ランスが『義体』を使っていることに気がついたわけだが、対戦相手であるルウエンは、最初から気がついていたようだ。
ランスの肩にとまっていた小鳥が、本物のランスが化けたものだと、いうことに。
さて、さきほど、正確に人間に似せて義体をつくると、それは人間の弱点をそのまま引きずってしまうという話をしたが、それは他の生物に化けることにもなりたつ。
すなわち小鳥に化けたランスは、小鳥の習性のままに、ルウエンが地面にまいた酒にひたした穀物にくらいついた。
結果、戦ううちに、酔のまわったランスは、義体の制御もままならなくなって自滅した。
ここまでは、わかるかな、諸君。」

ぐるりと、リウは、周りを見回した。
いや、むこうからこっちは見えてない。見えてないはずなんだけど、それは明らかにこちらが見えている者の動作だった。

「近接戦に破れた、ランスはさぞかし、屈辱を味わっただろう。ついにかれは、その実態を明らかにしたのだが、これは実にセコい計算の上になりたっていた。先程のブレスの魔法を使用したあとは、ルウエンにはろくな魔力は残っていない、と。
多少の魔力があったにしても、上位精霊たる自分には、効かない。
空を飛翔できる自分ならば、一方的にルウエンに攻撃ができると。
まさか、ルウエンが、人の身でブレスをもう一度、打てるなどとは、思ってもいなかったということだ。」

そう。
さすがにリウはよく見ている。

ウィルニアは、諦めたように叫んだ。
「わかった! リウ。こっちにきてくれ!」


こうして、ぼくら『真・栄光の盾』は、勝利して、準決勝に駒を進めた。
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