左右どっちもネームレスなSS

さの めつた

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020 ただ一人のライバル

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そいつ×僕 ちょっと近未来風味の話。高校二年、部活のエースとして、戦闘空間で団体戦するなか、出会った最強の男




 特殊な戦闘空間に入って各自、選んだ武器を使って団体で戦うファイティングゲームの部活だ。
 
 僕は自分で言うのもなんだが自校の、部活動で二年ながらエースだった。
 周りの環境も良かった。一年生の頃からとても優秀な三年生の先輩方に可愛がられて、のびのびプレイできた。
 文武両道の自校は県内でも有名な進学校であり、強豪校だった。

 しかし、変なライバル校が一校いた。
 学校設立は同時期だったが、方向性はまったく反対に転がっていったそこはほとんど不良校といっていいレベルで荒れている。なのにいつも本当に極端に才に優れた何人かが存在しているらしく、各分野でいつもそことぶつかっては、我が校はぎりぎり競り勝っていた。

 二年の夏の県内大会だった。
 エースとしてという気持ちで三年生の先輩方と出場した。自信はあった。現三年生の先輩方より、秀でているとまでは言わないけど、かなり突出して強い奴でも相手できるという自負があった。
 戦闘空間に入り、予選を勝ち抜く。
 昨年卒業した先輩方も観戦してくれている。無様な試合など見せられない。

 決勝はやはり、その変な不良校とだった。
 試合開始から、初手で、九割が雑魚と言っていい構成の輩たちを、ほぼ瞬殺できた。
 残りの一割が平均よりやや上レベルで、僕は先輩方のサポートを務めるかたちで戦っていた。だが、僕はその戦線からいったん離れた。
 というのも先輩方がその一割と戦っている後ろから、フィールドに、一人、背の高い奴がのっそりとやる気なさそうに姿を現わした。
 そいつに、僕はぎくりとした。見ただけでわかった。あきらかに、一人、桁違いのレベルだと。

 こいつを相手するのが、今日、この決勝での自分の役目だと、僕はずっと愛用している武器、大きな滑車が付いたような長い槍を構え直した。

 やる気なさそうに剣をだらりと持って、乱闘しているフィールドをゆっくり歩いて、ひととおり眺めた後何か居るのに気づいたように、視線をやって、少し目を見開いた。
 表情はひとつも楽しそうではなかった。でも目つきは尋常じゃなくぎらついて、そのうちだんだん口元も笑いにふるえてくるように見えた。
 そいつは判断、そして脚が速かった。
 何の準備モーションもなくおそろしく速く、移動が見えなくて僕は一瞬の反応に成功して槍でなんとか受けとめたが、もう圧してくるパワーがすさまじく強かった。くわえて繰り出してくる技の攻撃力も高く、防戦一方になる。
 それでも、初見の判断というのが、ときにはいちばんの武器となる。
 先に相手を見つけた方が、先に攻撃をしかけることができるということだ。
 僕は相手の技量を、すぐに察して、その瞬間に、罠を張った。これまでの大会でこの罠の技を出したことはない。そのレベルの相手がいなかった。
 この手の、最後にとどめを刺すときに最高に楽しそうな顔になるだろうタイプの輩は、そこが狙い目だ。完全勝利すると確信しているその一瞬に、隙ができる。

 ただ、その一瞬に持っていくまでにHPは大幅に削られて罠の発動も危うくなっていた。そして発動時の力によっては直撃のタイミングがずれて、罠にうまくかかってくれなかったら、もう僕はロストになる。
 現三年生の先輩方ではこいつの相手は無理だ。
 つまり僕がロストしたら、我が校は負ける。

 決勝戦、僕は、絶対に負けられなかった。エースとして。
 最後に、もうすでに勝ったつもりで剣を振りかぶる相手の――片づけ作業をつまらなそうにする、興奮の冷めた表情に僕はぞくっとした。僕の狙った隙が無かった。しかし逆の意味で、相手が戦意が失ったという隙で、僕は避けながらフィールドに槍を突き立て、一気に決めた。
 フィールド上に、ターゲットを拘束する陣を張りめぐらせ、最後の最後で発動する。その陣に相手を取りこみ、ロストさせるという仕掛けの罠だった。

 ぎりぎり競り勝った。
 表彰式後の、戦闘空間から出ていく列で、先輩方は優勝に盛り上がって僕をねぎらってくれたが、僕はライバル校の列を見つめていた。
 周りの輩たちに、じゃれあうように小突かれて、それを面倒そうに払って歩いている。
 ライバル校の列が戦闘空間を出ていくのを僕は拳をぎゅっと握りしめて睨んでいた。
 最後尾の、そいつが、すっと顔をこちらにやった。
 遠い距離で、僕の視線におかしそうに笑うと、持ち上げた手をひらひらと振った。楽しそうに口が動くと同時に宙でその手がコマンドを描き、僕にだけ見える電子メッセージが表示される。
『また会おうね♡♡』

 これからの試合であいつとぶつかるのは僕だろう。
 僕しか相手できない。
 次はきっと、もう刺し違える技を使うしかないかもしれない。

 よりいっそう鍛えないとな、と思いながら僕は、観戦してくれていた卒業生の先輩方の画面に向いて一礼して、戦闘空間を出た。
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