温もり

本の虫

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7月

七夕 side黎

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七夕。日本でもっとも有名といっていいかもしれないストーリー。機織りのうまい織姫と牛飼いの彦星は恋に落ちるが、そのせいで仕事をしなくなってしまう。それに怒った織姫の父親の天帝が二人を引きはなしてしまう。それに嘆き悲しんだ二人をかわいそうに思った天帝は一年に一度、7月7日、天の川を渡って出会うことを許す。それがどうして笹を飾って短冊をつるしてお願い事をする日になったのかまでは知らないけれど。ロマンチックな話だと思う。同時に、少しうらやましかった。僕には心配をしてくれる父親も・・・何を放り出しても好いてくれてる人なんていないから。僕は陽ちゃんをなによりも愛していて、大好きだけれど。陽ちゃんはきっと幼馴染で弟みたいなやつ、ぐらいにしか思ってくれてない。でも、それでもうれしかった。
「黎。短冊、書くだろ?」
「ん。今いく。」
七夕の日は毎年、陽ちゃんの家で陽ちゃんの家族と一緒に流しそうめんをして短冊を書いて飾るのが恒例だった。
「姉さんは・・・また彼氏ができますようにかよw」
「陽太、またってなによ。勝手に見るな。」
「痛っ!そんなんだから彼氏出来ないんだよ!」
「・・・ちょっとこっち来なさい?」
「ちょ、たんまごめんごめんってアァァァ!!?」
「・・・ひとこと余計だからそうなるんだよ。」
「ね~?余計なこと言わなければいいのに。」
「黎まで姉さんの味方すんのかよ・・・」
「だって、悪いの陽ちゃんじゃん・・・?」
「あー黎、可愛いわ~!陽太と交換したいくらい!こんな弟がほしかった!」
明莉さんに撫でまわされる。
「じゃあ私片付けあるから。黎、ゆっくりしてってね。」
「は~い・・・」
明莉さんも。おばさんもおじさんも。他人の僕に、いつもすごく優しくしてくれる。でもそれでも。やっぱり、家族じゃないのだ。日村家は日村家で。僕は他人だから。
初夏の涼しい夜。庭には、もう二人しか残ってなかった。正輝や光介がつくった七夕飾りや色とりどりの短冊がつるされた笹の前で二人で短冊を書く。
「あんさ、黎。」
遠慮がちに陽ちゃんが話し出した。
「なに?」
「俺さ。黎のこと・・・黎のこと、家族と同じくらい、いや、家族よりもっと大事に思ってるから。だからさ。そんなさびしそうな顔、しないでくれよ。俺、黎に笑っててほしい。」
「なに、それ・・・告白、みたいだね。陽ちゃん・・・ずるいよ。」
そんなこと言われたら、勘違いしそうになる。自分が陽ちゃんの特別だって。陽ちゃんも僕のこと、likeじゃなくてloveで愛してくれてるんじゃないかって。
「あああああ!やっぱ性に合わねぇなこういうの!」
突然、陽ちゃんが叫んだ。そしてばっと、漫画の王子様みたいに、片膝をついて僕を見上げる。
「黎のことが、好きだ。愛してる。likeなんかじゃない。本当に、愛してる。よかったら俺と、付き合ってくれないか。一生、そばにいてほしい。絶対に悲しませたりなんて、しないから。」
そして、僕が大好きな、まっすぐな瞳でみつめてくる。ちょっと、緊張してるみたいだった。
「え・・・?」
空耳かと思った。
「男同士だって、わかってる。いやだったら断ってくれていい。」
なにを、言ってるのだろう。陽ちゃんのことが好きなのは僕で。一生かなわない片思いじゃなかったの?
「でも。だって。陽ちゃんは女の子が好きで・・・?え?」
「気づいたんだ。俺が、一番大事で一生そばにいてほしいって思ってるのは、黎だよ。」
あまりに幸せすぎて。体が傾いた。七夕の夢なら醒めないでほしかった。
「黎!?」
陽ちゃんが立ち上がって僕を抱きとめてくれる。そのまま、陽ちゃんに思いっきり抱き着いた。
「わっ、大丈夫なのか?」
「陽ちゃん!」
「黎?」
「後悔しない?僕で、いいの?僕、誰にも陽ちゃんを譲る気、ないよ。ほんとに、ずっとそばにいちゃうよ?それでもいいの?」
あふれるままに思ったことを陽ちゃんを見上げながら口にした。
「いいに決まってんだろ。」
そういって、陽ちゃんの顔が近づいて・・・反射的にぎゅっと目をつぶってしまった。唇に、やわらかいものが、触れる。このまま死んでしまいたいと思うくらい幸せな時間が流れる。数秒くらいだったはずだけど、一生みたいだった。そっと離れる。
「黎。目、あけて?」
くすりと笑う陽ちゃんの顔がまぶしすぎてまた眩暈がした。
「むり・・・やだ・・・」
顔が熱すぎて火が出そうだった。
「可愛いな~。短冊、書こうか。」
不意打ちに可愛いとか言われてまた、顔の温度がもう数度あがった。
「なんで、突然告白してきたの。」
非難もこめて聞いてみる。
「ほんとは、まだ告白する気はなかったんだけど。黎のこと見てたら思わず。」
「なに、それ・・・」
「俺はお前が綺麗すぎるのが悪いと思うけどな?」
心臓に悪い。
「ほんと、突然なんなの・・・!?」
「言わなかっただけ。ずっと思ってた。気持ち悪いよな。やっぱ。」
そんなことない。
「僕も、ずっと、陽ちゃんのことかっこいいって思ってた。陽ちゃんのことずっと好きだった。」
今度は陽ちゃんの顔が赤くなった。ざまぁみろ、である。
「はっず。あっつい。短冊、飾ろうぜ。書き終わった?」
「ごまかしてる?書き終わった。」
「んなことないし。飾ろうぜ。」
「うん。」
短冊の内容は、示し合わせてもないのに一緒だった。陽ちゃんと顔を見合わせて苦笑いをする。
「これは、母さんたちが片す前にとっとかないとな。」
「そうだね。夜は飾っておきたいもんね。」
これみたら織女と牽牛は嫉妬しちゃうんじゃないかな、なんてことを思った。




                 「「ずっと二人でいられますように。」」





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