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11月
別れ side黎
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目が覚めたら、見慣れた自分のベッドだった。
ピアノを弾いたことだけを鮮明に覚えている。だけど、それ以外がひどくあいまいで。重い頭をゆるりと動かすと、大好きな人がベッドに突っ伏して寝ていた。
「陽ちゃん・・・?」
「・・・黎?起きたのか。熱とかないか?」
「ちょっとだるい・・・どうしたの?こんなとこで。」
「覚えてねーの?」
「うん・・・?」
そかぁ・・・とつぶやいた陽ちゃんの目から涙がこぼれた。
「え!?陽ちゃん、なんで泣いてるの?」
「お前のピアノ。なんか思い出すだけで泣けてきた。あー止まんね。」
そう言って顔を覆ってしばらく笑いながら泣いていた。
「なあ黎、マジで覚えてねーの?」
「ピアノ弾いたのは覚えてる。でもなんか・・・ほかの記憶あんまない。」
ほんとは嘘。全部覚えてる。でもなんか、これは、ちいさい僕との秘密な気がした。なんとなくだけど。
「そか。ピアノ、すっげーうまかった。さすがだな。」
「んふふ。ありがと。なんかお母さんのこと思い出したよ。」
とかって陽ちゃんの顔色うかがってみる。隠す気なのかな?
「ずっと忘れてたもんな、よかったじゃん。今日も学校休みにしたから、ゆっくり休め、黎。」
「・・・え!?嘘、今明日の朝なの!?」
「今日の朝な。だってずっと寝てたぞ。」
「うえーそりゃお腹すくよね・・・」
「あ、お腹すいた?なんか作ってくる。」
「ほんと?うれしい。さんきゅー。」
陽ちゃんが台所に向かったから、部屋には当然一人で静かでちょっとさびしい。でも、うれしかった。変わらず陽ちゃんは僕に優しいし、愛してくれてるのが伝わってきて。
お母さんのことをいっぱいいっぱい思い出して、なんだか突然の記憶に溺れそうで、陽ちゃんがもしいなかったら溺れて息ができなくなってしまいそうだった。
「美しいものだけに囲まれて生きていたいの。」
今思えば、親が子供に言うセリフではないかもしれないな。ずっと忘れていた、お母さんの口癖だ。お母さんは美しいものが好きで、美しいピアノが好きだった。いつも泥遊びだなんやで汚れていた陽ちゃんのことが好きじゃなかったし、僕にはいつもそんな子と遊ばないで、と言っていた。
思えばお母さんは少しずつおかしかったのかもしれなかった。でも、見ないように見ないように優しいお母さんだけ見てたし、陽ちゃんの優しさに逃げ込んでた。
でも、そんな僕ももう終わりだ。ちゃんと陽ちゃんに答える。陽ちゃんの愛に答える。もう、決めたんだ。僕も陽ちゃんと一緒に生きるよ。
「黎。りんごすったのとおかゆとあるけどどっちがいい?」
相変わらず料理早いさすが僕の旦那。
「りんごがいい。ねーえ、陽ちゃんこっち来て?」
「ん?なんだ?」
お盆を机においてこっちに来てくれる。ああほんとに大好き。だから、
「ちょ、黎なに、引っ張ったらあぶなっ・・・!?」
その唇に、自分の唇を重ねる。
「陽ちゃん、大好き。いつもありがとう。これからも、僕と一緒に生きてください。」
あはは、陽ちゃん目を見開いて間抜けな顔。でもカッコいいのはイケメンの特権かな。
「れ、い・・・」
「なに、顔真っ赤だよ?いつもやってるのそっちじゃん?今更照れてるの~?」
「だって、黎今までやってきたことなかったじゃん・・・///」
「んふふ。それよりもさー結構勇気だしてプロポーズしたんだけど?・・・答えて、くれないの?」
「黎。こっちこそ、死ぬまで、いや、死んでも俺と一緒にいてくれ」
「うん・・・!」
りんごの色が変わってもおかゆが冷めてもどうでもよくて。ただずっとこのまま二人だけで抱き合っていたかった。
ピアノを弾いたことだけを鮮明に覚えている。だけど、それ以外がひどくあいまいで。重い頭をゆるりと動かすと、大好きな人がベッドに突っ伏して寝ていた。
「陽ちゃん・・・?」
「・・・黎?起きたのか。熱とかないか?」
「ちょっとだるい・・・どうしたの?こんなとこで。」
「覚えてねーの?」
「うん・・・?」
そかぁ・・・とつぶやいた陽ちゃんの目から涙がこぼれた。
「え!?陽ちゃん、なんで泣いてるの?」
「お前のピアノ。なんか思い出すだけで泣けてきた。あー止まんね。」
そう言って顔を覆ってしばらく笑いながら泣いていた。
「なあ黎、マジで覚えてねーの?」
「ピアノ弾いたのは覚えてる。でもなんか・・・ほかの記憶あんまない。」
ほんとは嘘。全部覚えてる。でもなんか、これは、ちいさい僕との秘密な気がした。なんとなくだけど。
「そか。ピアノ、すっげーうまかった。さすがだな。」
「んふふ。ありがと。なんかお母さんのこと思い出したよ。」
とかって陽ちゃんの顔色うかがってみる。隠す気なのかな?
「ずっと忘れてたもんな、よかったじゃん。今日も学校休みにしたから、ゆっくり休め、黎。」
「・・・え!?嘘、今明日の朝なの!?」
「今日の朝な。だってずっと寝てたぞ。」
「うえーそりゃお腹すくよね・・・」
「あ、お腹すいた?なんか作ってくる。」
「ほんと?うれしい。さんきゅー。」
陽ちゃんが台所に向かったから、部屋には当然一人で静かでちょっとさびしい。でも、うれしかった。変わらず陽ちゃんは僕に優しいし、愛してくれてるのが伝わってきて。
お母さんのことをいっぱいいっぱい思い出して、なんだか突然の記憶に溺れそうで、陽ちゃんがもしいなかったら溺れて息ができなくなってしまいそうだった。
「美しいものだけに囲まれて生きていたいの。」
今思えば、親が子供に言うセリフではないかもしれないな。ずっと忘れていた、お母さんの口癖だ。お母さんは美しいものが好きで、美しいピアノが好きだった。いつも泥遊びだなんやで汚れていた陽ちゃんのことが好きじゃなかったし、僕にはいつもそんな子と遊ばないで、と言っていた。
思えばお母さんは少しずつおかしかったのかもしれなかった。でも、見ないように見ないように優しいお母さんだけ見てたし、陽ちゃんの優しさに逃げ込んでた。
でも、そんな僕ももう終わりだ。ちゃんと陽ちゃんに答える。陽ちゃんの愛に答える。もう、決めたんだ。僕も陽ちゃんと一緒に生きるよ。
「黎。りんごすったのとおかゆとあるけどどっちがいい?」
相変わらず料理早いさすが僕の旦那。
「りんごがいい。ねーえ、陽ちゃんこっち来て?」
「ん?なんだ?」
お盆を机においてこっちに来てくれる。ああほんとに大好き。だから、
「ちょ、黎なに、引っ張ったらあぶなっ・・・!?」
その唇に、自分の唇を重ねる。
「陽ちゃん、大好き。いつもありがとう。これからも、僕と一緒に生きてください。」
あはは、陽ちゃん目を見開いて間抜けな顔。でもカッコいいのはイケメンの特権かな。
「れ、い・・・」
「なに、顔真っ赤だよ?いつもやってるのそっちじゃん?今更照れてるの~?」
「だって、黎今までやってきたことなかったじゃん・・・///」
「んふふ。それよりもさー結構勇気だしてプロポーズしたんだけど?・・・答えて、くれないの?」
「黎。こっちこそ、死ぬまで、いや、死んでも俺と一緒にいてくれ」
「うん・・・!」
りんごの色が変わってもおかゆが冷めてもどうでもよくて。ただずっとこのまま二人だけで抱き合っていたかった。
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