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異世界

ここが異世界…?

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「一体…何が起こったの…?」

 目の前に広がるのはまるで中世のような世界。ヨーロッパだ!と決め付けず、中世のような…と言ったのはそこに棲む住人達が人だけではないからだ。

「おい、嬢ちゃん。ボサっと突っ立ってるとあぶねぇーぞ」

「え?」

「は?」

「…何でもないです。すみませんでした…」

「おい、気を付けろよ」

 今の人はピンッと伸びた真っ白い耳とふさふさの丸い尻尾。

「う、うざぎ…?」

「チッ、邪魔だぞ!」

「す、すみません!」

 今度は顔や腕に赤い鱗が所々に…

「ちょいと避けてくれるかい?」

「あ、すぐ退けます…!」

「すまんな、小さくて踏ん付けてしまいそうでな」

 そして、今度は首が折れる程見上げないと顔が見えない…。三メートルぐらいはあるだろうか。

「おい、貴様!ぶつかってるぞ!下見て歩け!デカイの!」

「すまんな、親父さん。俺、腰が悪くてなぁ」

 と思ったら、今度は自身の腰ほどの大きさのおじさん…?

「私、英語とか無理だし…。言葉通じてよかったぁ…」

 次から次へと目に移るものは皆、見慣れないものばかり。

「え、これが歯ブラシ?」

「なんだい?買うのか買わないのかハッキリしておくれよ。それとも文句でも?」

「い、いえ!何でもありません!!」

 勿論、見慣れないのは住人達だけじゃない。道端に並べられている果物らしきものも、雑貨屋に並べられた商品も何もかも見たことのないものばかり。

 一思いに頬をつねってみる。

「これ…夢…ではないか。じゃあ、やっぱり…さっきのは本物の神様…?」

 街並みはヨーロッパ建築に近い。
 ただ、住人達は人間の他もいるようで動物の耳の生えた人間や小人に巨人、目がおかしくなってしまったのかと思ってしまう。

「あ~、もうダメ。全然頭働かない!」

「おねぇちゃん、どうしたの?頭痛いの?困ってるの?マリーがお話し聞いてあげよっか?」

「へ?」

 服の裾を掴みながら話しかけてきたのは可愛らしい人間の少女。健気に本気で心配してくれる彼女にやっと少しだけ冷静になることが出来た。

「おねぇちゃん、大丈夫?」

「、か、か…」

「か…?」

「可愛い~!!!」

「わぁ!」

(可愛いっ!なんて可愛いの!!凄まじい破壊力だわ!)

 興奮のあまり、思わず少女に抱きつく。キラキラと輝く純粋な瞳がこちらを見ていて、突然抱きつかれて驚いただろうに優しく背中を撫でてくれている。
 娘にもこんな可愛らしい時代があったなぁ、と噛み締めるように溢れそうな涙をグッと抑え込む。

「おねぇちゃん、落ち着いた?」
 
「取り乱して、ごめんなさい。…私、梨沙って言うの。貴方のお名前は?」

「リシャ…リ、リシャ、えっと、リザ?」

「呼びづらくてごめんね、リザでいいよ」

「リザおねえちゃんのコレ凄く綺麗ね?」

 腕に付けていたブレスレットを見て目を輝かせている少女。小さくてもやはり女の子だ。アクセサリーに興味があるのだろう。

「あ、コレ?材料さえあれば簡単に作れるのよ」

「リザおねえちゃん!あのね、マリーはマリー!あそこの宿屋がマリーのお家!お話し聞いてあげるから、うちにおいでよ!」

 …困った。これは客引きだ。
 可愛い、可愛いマリーちゃんのためにも是非とも寄りたい、行きたい。
 が、しかし…。いくら先程まで冷静ではなかったにしても一応、一通り町の様子は見てきた。
 使われている貨幣は明らかに見たことのないものだった。実は先程ポケットを漁ったらコインが何枚か入っていた。いくらかは手持ちはあるのだが、貨幣価値が分からない。
 お金に変えられそうなものも持ってないし、正直、足りるのか分からないし、足りたとしても今後の基盤を整えるまで少しでも節約しておきたい。
 ここは慎重になる所だ。

「リザおねえちゃん、お金ないの?」

「えっと。ない訳じゃないんだけども…」

「おねぇちゃん大丈夫?」

「へへへ…」

 何とも情けない。
 ただ今後の生活が掛かっているのだ。いくらマリーちゃんが可愛いからと言って負ける訳には行かない。

「あらあら、何だが外が騒がしいから出てきてみれば、マリー。何してんだい?」

「リザおねえちゃんが…」

「リザおねえちゃん…?あー、そう言うことかい。あんたあれだろ?アクセサリー屋だろ」

「アクセサリー屋…?」

「なんだい、違うのかい?」

「あ、いえ。ア、アクセサリー屋…です」

「やっぱりねぇ」

 とりあえず、その場の流れに合わせてみる。もしかしたらこの世界で身を立てて行く為の参考になるかもしれない。

「ウチのが迷惑掛けたみたいだから、お茶ぐらい奢るよ。聞いただろ?ウチは宿屋をやってるんだ。着いておいで」

「あ、ありがとうございます!」

「良かったね!リザおねえちゃん!」

「ありがとう、マリーちゃん」

「私はマリーの母親であそこにある“兎の隠れ家亭”を営んでるフランだよ」

「フランさん、リザです。宜しくお願いします!」

 フランとマリーの案内の元街角にある宿屋に身を寄せた。







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