神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第一章

帝都エルム

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「リーン様。ノーナはかなり険しい森ですが大丈夫でしたか?」

「大丈夫です。…それで、あの、下ろして頂けるとありがたいのですが…」

 そう、私は今まさにお姫様抱っこ状態である。ついでに申し訳ないが、鉄装備が身体に刺さっていてかなり痛い。

「私と致しましては、これ以上あなた様を煩わせるつもりはございませんので、どうかこのままでご容赦ください」

 なぜか降ろしてもらえそうにない。悪魔の情報を渡したのに拘束されるとは思わなかった。寧ろ、情報料として帝都に入る小銀貨一枚でいいから欲しい、とリーンは心の中で呟いてみたものの、彼の物腰の柔らかさ、丁寧な言葉遣い、何よりもその端正な顔立ちはこれ以上なにも言わせない様な雰囲気に感じ押し黙った。

(この人…綺麗すぎる…よ…)

 神示によると彼の名は、リヒト・アーデルハイド。アーデルハイド伯爵家の長男で年は20歳。プラチナブロンドの髪に青い目、所謂金髪碧眼の見目麗しい容姿と家柄もさることながら、若干19歳という若さで帝都聖騎士団の少佐まで上り詰めた秀才。文武両道で優秀だが決して鼻にかけず、人望も厚い。父ノーランは王宮で王宮筆頭司書長を務めている博識な人物で人当たりもかなり良い。(と言っても優秀な人間にだけと言った方がいいかも知れないが…)母、ナロニア、姉ベロニカ、弟マロウの5人家族で、領地はこの世界の中ではかなり発展している方。港町なので漁業も盛んだが主に塩の産地として有名。気候も穏やかなので貿易なども盛んに行われており、人口も多く活気に溢れた良い街だ。かなりいい人物と知り合えたと思う。お金も言えば貸して貰えそうだ。ただ、何故そんな彼がリーンをここまで丁重に扱っているのかは謎だ。

「此処から1番近いのは帝都エルムです。私がお支え致しますので馬での移動をお許しください。素足ではお怪我をなさいます。本来なら馬車でも御用意出来れば良かったのですが…」

 あ、それで抱っこ状態だったのか、と納得した。リーンは初めから何故か裸足なのだ。よく裸足で緩やかとはいえ、山の獣道を怪我もしないで降りて来られたものだ。しかもそれに気付いていなかったなんて少々情けない。

「いえ、お気になさらず」

 リヒトが綺麗な顔でニッコリ微笑み、リーンもそれに習って微笑んだ。それからリーンは彼の部下が連れてきた黒馬にそっと乗せられた。
 馬での移動は快適とは言えなかった。お尻は痛いし、子供の軽い身体では支えられているとは言えかなり揺れる。気を緩ませたら落ちてしまいそうでついつい体に力が入ってしまう。ただ、やはり子供の足で歩くよりもかなり早い。遠くに見えていた城壁はあっという間に目の前だ。城門の前にはかなりの人だかりが出来ている。これでは入門までにかなりかかりそうだ。

「私どもはこちらです」

 リーンの心を読んだかのようにリヒトはそう言い、門に並ぶ長蛇の列の横を通り過ぎる。流石、少佐様と言ったところか。リーンは一緒でも良いのかと疑問に思ったが、相変わらずニコニコしているので、特に問題は無さそうだ。

「この方は、私の連れだ」

「畏まりました」

 門番らしき人が大きい正門の横にある小門(と言っても正門に比べれば小さいと言うだけ)を開ける様指示を出す。リヒトとリーンは馬に乗ったままその小門を潜った。

 小さな門は屯所に繋がっていて、近くに馬屋もある。先に降りたリヒトにそっと馬から降ろされる。

「これからどちらに?」

 リーンの目線に合わせるように腰を屈めたリヒトは相変わらずの笑顔だ。これからどうするのかなんてまだ何も決めてなかった。まさかこんな形で帝都に入れるなんて思っても見なかったからだ。何よりもまずはこれからの生活費をどうにかしなくてはならない。帝都に入れたのは良いが、持ち物は何故か持ち続けていた探検気分で拾ったこの木の棒だけだ。それに関して言えば、私にもまだ無邪気な所があったのか、とリーンにとっても素朴な疑問だった。なにも売るものも無い状態では、スラム街に一直線。それだけは何としても避けた方が良さそうだ、ということだけはわかっていた。

「あの、入国税は…?」

「必要ありません」

「そう…ですか。助かりました。これから…そうですね、どこか子供でも働ける様な所を紹介していただけませんか?」

 リヒトは一瞬少し驚いた表情を見せたが、何かを考え始めた。
子供が働ける所はやはり難しいだろうか。働いてる子供は多くいるがどの子も家の手伝いのようなものだ。実際に子供を雇っている店は数える程度。それも生活の足しになるか怪しいくらいの賃金しか貰えていない。この子供の身体では力仕事は無理だろう。

「あの、それはお金が必要という事でしょうか?」

「はい。実は恥ずかしながら、入国税すら持っておらず…今後の事を考えても働き口があると大変助かるのですがやはり難しいですよね」

 リヒトは、また少し難しそうな顔で考え込む。
 悩んでいる顔がここまで美しいとは罪な男も居たものだ。これに惚れる女性は少なくないだろう。
 難しそうな顔は崩さずリヒトはリーンの顔を見つめつつも何度も視線を泳がす。

「あの…お金くらいなら私が差し上げても構わないのですが…その…このお持ちの木の葉を売る気はございませんか?」

「この木の葉を…?」

 リーンの反応にリヒトはかなり罰が悪そうな表情をさせた。あまりに悲しそうな表情に此方も少し申し訳なく思えて来る。リーンのきょとん、とした表情を見てリヒトは慌てたように否定し始める。

「い、いえ、それは大変貴重なものですし、もちろんリーン様ですから何も無くともお金のご用意は出来ます!なので…無理にとは言いませんが…」

 こんな棒切れの先にちょこんと生えている葉がそんなに価値のあるものなのか?と疑いはとてもじゃないが拭える訳がない。丘を降る時もブンブン振り回していた位、リーンからすればなんの変哲もない葉っぱ。
 神示の記憶で見た限りではその葉は少し大きめの木に生えていて他の葉と重なり上手く光合成ができなかったり育ちの悪い小さい葉を刈り取っただけの物だ。しかも、刈り取られた葉はそこら中に散らばり落ちていたし、効果も“少し”だけ傷などを治す作用がある葉っぱで傷薬などの原料となる”という名前も付いてない無名の葉。何でも知る事が出来るリーンからすれば、ただの薬草に過ぎない。

 (もしかして、ただお金を渡すだけでは、私が萎縮してしまうと思って、気を遣ってくれてるのでは…?これはありがたく好意を受け取っておこう)

「こんな、葉っぱで宜しければ…」

「本当ですか!ありがとうございます!大切に使わせて頂きます!」

 そのまま木の棒を差し出すと、とてもいい笑顔でハッキリとお礼を言われしまっては何も言えない。リーンは苦笑いした。
 そのままルンルンという効果音が聞こえてきそうなリヒトと共に屯所奥の部屋へと案内されるがままについて行く。


「おい、あの嬢ちゃん何者だ?」

「少佐がご自身で対応されるなんて…俺はあんな笑顔の少佐見た事ないぞ…」

「それより、誰もが欲しがる、あの世界樹の葉の新芽を“こんなもの”って言ってたぞ」

「ガキでも知ってる常識を知らない筈ないだろうし…」

「お貴族様でもそんな事言う奴いねぇよ」

「いや、それよりも魔物なら兎も角、悪魔の倒し方なんてあったんだな…」

「俺初めて悪魔を倒したぞ…魔物ならまだしも…悪魔なんて追い払い方しか知らなかったからな…」

「俺もだ…」

「なぁ、これってもしかして勲章とか…」

「…ボーナスが…!」

「「「今日祝酒だな」」」

 遠くから二人の様子を見ていた兵士達の声はリーンには届いていなかった。リーンが信用している神示には少々偏りがある。何せ神様からしたら、世界樹の葉の“新芽”は世界樹の葉ではなく世界樹の成長のために間引いた邪魔な葉っぱに過ぎないし、悪魔や魔物も人間達が犯した罪によって生まれた出た“瘴気”を吸った動物植物達の成れの果て。神の基準で作られた神示には大きな欠点があるようだ。



 そんな様子を眺める光の球もと言い、神がこの兵士達の会話を聞いて無言で神示の内容に【世界樹の葉の新芽】と後から付け足した事をリーンが気付くのはもっと先のことだ。
 そしてこの神が反省など微塵もしていないのもまた、わかり切っている事だ。



 





 





 
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