神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第一章

奴隷商人

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(まさか、こんなに大金をくれるとは。いきなり大金持ちだ)

 リーンの小さいな手に大事そうに握り締められている布袋の中には、大金貨25枚分=250万イルの金貨や銀貨でぎっしりだ。使いやすいよう大きい硬貨だけではなくあえて銀貨なども用意してくれた。もちろんかなりの重みを感じる。幸せの重みだ。これでも多いと半分に減らして貰ったぐらいだ。残りは預かっておくと言い張るリヒトを説得するのは大変骨が折れた。あんな小さな葉っぱなんかで金貨50枚分(5000万円)の価値があるとは到底思えなかった。もちろん、とても価値のある物なのだ。成長して【世界樹の葉】になれば瀕死からも蘇る事が出来るエリクサーが作れる世界で一番高価な薬草なのだがリーンがその事に気づく訳もなく。
 早速貰ったお金で練習も兼ねて串焼きや飴のようなお菓子、りんごのようなフルーツのジュースなどに買ってみたが、どれも味はイマイチだった。
 
 少し街をぷらぷらしてみる。賑わう雰囲気はお祭りのようで人出もかなり多い。やはり小さい身体は不自由だ。

ーードンッ

「痛っ、」

「お前達はどこに目をつけている!このワシが大金を払って雇ってやってるのに、小汚い小僧如きも満足に葦らえないのか!!」

 リーンの直ぐ横で突然飛び出して来た少年が、声を荒げて怒鳴り散らす男のタプタプのお腹に弾かれて地面に倒れ込む。少年はぶつけたお尻と擦りむいた掌が痛いのかその場で泣き出してしまった。

「ティム!!」

 少年に駆け寄った若い女性は顔面蒼白だ。豪華な装飾が施された煌びやかでいかにもお金がかかっている服を着ているこの男はどう見ても貴族様と言った感じだからだ。

「た、大変申し訳ございませんでした。私から弟にはきつく、きつく言いつけますので、ど、どうかご容赦頂けませんでしょうか、貴族様…」

(…あいつ貴族じゃない…?)

 あの如何にもな男はチベット商会という大店の5代目店主、トット・チベット。表向きは貴族やお金持ちなんかに宝石や魔石なんかを売る商売をしているが、裏では禁止されている奴隷商を営み、女子供を拐っては他国へ密売して儲ける悪人だ。

 この世界の奴隷制度は基本的に犯罪を犯した犯罪奴隷(待遇はかなり劣悪)借金を繰り返し返せなくなった借金奴隷(食事や寝床など人権は守られている)の2種類のみ。それ以外の奴隷は違法奴隷と言われ、バレれば死罪というかなり重い罰を与えられる。

 こんなのが店主になるなんて立派な先祖様達がさぞ悲しんでいるだろう。

「ほぉ、若いのに見る目のある女だ。今私は機嫌がいいからなぁ、今回は特別にその坊主の事は見逃してやろう」

 男は大層ご満悦でそう言った。

「ほ、本当でございますか!貴族様!ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

「代わりに、お前は今すぐワシの屋敷に来い。中々の上玉だからな」

「そ、そんな、い、今すぐなんて…」

「お、おねぇちゃ、ちゃんに、ち、ちちち近づくなぁぁぁ!!」

 転がっていた少年は必死に姉を守ろうと大きく体を震わせてながらも立ち塞がる。

「ティム、お願い。下がって!今すぐ家に帰って母さんに事情を話してきて!お願い!」

 トット・チベットは連れてけ、と護衛の男達に楽しそうに言い放った。

 護衛の男達が女性に近づく。

「貴族でもない奴隷商犯罪者の癖に」

 外套のフードを目深に被り、リーンはゆっくりとトットの横を通り過ぎながらやっと聞こえるかどうかの声で囁いた。

「い、今の無礼者は何処のどいつだ!出て来い!」

 トットの急な怒鳴り声にリーンの声が届いていない辺りの人々と女性に近付いていた護衛の男達は騒然としている。リーンも騒ぎの中心に決して出たい訳ではない。関わらないのが1番なのも分かっている。しかし、流石に裏の顔を知っているにも関わらず、そのまま見過ごすのは些か心苦しい。ただそれだけだ。

「あ、あれだ!!!あの小童を捕まえてワシの屋敷に来させろ!あんな身すばらしい姿でワシに意見するなどバカな奴だ」

 まるで饅頭の様な顔を怒りと興奮で真っ赤に高揚させた。
 サッとリーンとトットの間に僅かな道が出来る。

 顔は見られてないし…大丈夫、なはず。と周りを見渡す。リーンが門の屯所を出てからずっと兵士が後ろをついて来ていたからだ。大金を少女が持ってたら不自然極まりないし、奪われる可能性もある。あの優しいリヒトなら護衛として少しの間、見守るよう指示を出していても不思議はない。

「あんたみたいな小物なんかに付き合ってる暇はない」

 しっかりとフードで顔を隠しつつ、冷静且、はっきりと聞こえる声で振り返りもせず言う。
 トットはドシドシと音が聞こえて来そうなほどふんぞり返えりながら、リーンの後を部下を引き連れて追っている。

「な、なんだと!こ、小物とはなんだ!口を慎め!」

「同じ平民なのに?」

 そう。貴族じゃない者はみんな平民。どんなにお金を持っていようとも関係ない。現にリーンは子供であるのに関わらず、大金貨25枚程のお金を持っている。お金で貴族になれないわけではないが、お金を持っているだけでは貴族にはなれないのだ。

「な、何を言う!ワ、ワシは、ワシは…」

 お金を渡して仕舞えば色々手っ取り早いのかもしれない。まぁ、こんな奴に1円だってやりたく無い、という気持ちの方が強いが。

「トット。貴方の何もかも知ってるよ」

「き、貴様!な、何を知っている!」

「言ってもいいの?どれ…」

「うるさいっ!!黙れぇぇ!!!」

 トット・チベットはワナワナと巨体を震わせ息も絶え絶えに怒鳴った。周りの騒めきが大きくなる。リーンを遠くで見守っていた兵士達がすぐ近くまで来ていた。

「道を開けろー!」

 兵士の声を聞くとトットはチッ、と大きな舌打ちをして踵を返し去って行った。

(逃げ足早いなぁ…)

「お、お待ち下さい」

 リーンは呼び止められた方へ振り返る。

「あ、あの…何とお礼を言ったらいいのか…私たち姉弟を…身を呈して助けてくれて本当にありがとうございます」
 
 トットに詰め寄られて居た若い女性が目線を合わせようと軽く腰を折り不安そうに声をかけてきた。その顔は蒼ざめたままだ。

「気にしないでください」

 リーンはお姉さんにだけ見えるようにフードを少しだけ持ち上げ笑顔でそう言うと、そっとお姉さんの頭を撫でた。お姉さんは少し驚いたような様子だった。
 年上の女性の頭を撫でるのはおかしなことだろう。彼女を安心させようとしたリーンの行動はその見た目せいでとても奇妙な光景と言える。
 その後気が抜けたのか、ポロポロと泣きながらも笑顔で何度も何度もお礼を言って2人は帰って行った。
 今回は兵士達が見守ってくれていたから何とか上手くいった様なものだ。出来ればもうこんな無理はしないに越した事はない。

 それから少し辺りを見て回った。街並みはまあまあだ。木造が多いが煉瓦造りもある。路面店以外にも小さな出店がいたるところにあり、食料品、屋台、小物、日用品にアクセサリーなど色んなものが所狭しと並んでいる。
 屋台にあった肉串を一本試しに食べてみたが全く美味しくない。パサパサしているし、臭みも強い。味付けは塩のみで水分を一気に持っていかれてしまう程塩っけが強い。
 その他ジュースやスープなども試した。水自体が硬水だからかジュースもゴクゴク飲めず、スープも塩風味といった感じでどれも食べれない訳ではないが試したものは大体そんなものだった。

ーーゴーンッゴーンッ

 正午を知らせる鐘がなった。

 鐘の音を聞くと、リーンは花屋の脇の少し薄暗く、カビ臭い匂いのする人通りのすくない路地を歩き出した。この先にあるパン屋は帝都に来る前に神示で見て気になっていた場所だ。そのパン屋に行ったことはないがまるで行った事があるかのように体が動く。あんなに食べたのにそんなにお腹が空いていたのかな?とと考える。


ーーゴ…ゴロゴロッ…ピカッ

 リーンはそっと後ろを振り返った。振り返った目線の先には先ほどの騒ぎに駆けつけてくれた兵士2人が路地の入り口からこちらを見つめながら駆け寄って来る。2人の目線の先を恐る恐る辿る。目線の先、リーンの足元には剣を手に持ったまま黒焦げ状態の人が3人横たわっていた。
 トットの手先の者に違いない。トットの秘密を知っているリーンをすぐにでも始末しようとしていたのだろう。リーン自身覚悟して前に出たつもりだったがここまでの大事になるとは…兵士達がいなければ、リーンがもうこの世にはいない事は見ての通りだ。
 でも、なぜだかリーンの心の中はとても冷ややかで、黒焦げになって倒れている人が目の前にいるのにも関わらず何も感じなかった。

「お怪我はありませんでしたか…?」

「はい、なんともありません。ありがとうございました。…すみませんが私はこれで失礼します」

(あまり近くにいたら彼らもトットに狙われるかもしれない)

 怒りの矛先がリーンに向いているうちはまだいい。ここに長居は出来なさそうだなぁ、と今危険な目にあったばかりなのにまた呑気な考えが頭を過ぎる。
 もちろん神示で見たこの綺麗な街並みの帝都を色々見てまわりたい気持ちもあったが、それもまぁいた仕方がない事だ。
 トットと言う人物が如何だろうと、何をしてこようと関係ないのだが、それで周りに迷惑をかけるのはリーンの本意では無い。











 
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