神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

ree

文字の大きさ
11 / 188
第一章

転移魔法陣

しおりを挟む


 お昼の鐘がなる少し前に目的地へ到着した。

「ここより先に進めば王城に繋がる扉があります」

 リーンの発言にジャンが驚く。
 やはり【オリハルコン】の団長であるポールはこの事を知っていた様だ。敢えて口にする事は無かったかも知れないが、ジャンが口を滑らせる可能性は詰んでおきたかった。
 何故ならこの地下道を使えば王城まで誰の目にも留まらず侵入することが出来るからだ。

「リーン、ここはどこに繋がっている」

 ポールの真剣な声にジャンは唾を飲み込んだ。

「ここは噴水広場の地下にあたるところです。あの噴水の水はエンダ水と謳われているのはご存知の筈」

「噴水広場と繋がっている…でも、行き来はできないはずですが…」

 ジャンが言う通り普通なら行き来はできない。

「ジャン様、ではどうやって噴水の水は地上へ送られているのでしょうか?」

 ジャンはリーンの質問に答えられず口を固く結んで押し黙った。

「確か、水を吸い上げる大きな魔石が噴水の先端に置かれていて…そこから出てたはずだが…まさか!」

「はい、そのまさかです。その魔石の大きさは持ち上げられるくらいの大きさです」

 そんなことが…とおどろきを隠せない2人。

「でも、人目があるはずです!ここは帝都、夜だって噴水広場の周りは人通りも少なからずありますよ!!ましてや息も出来ない水の中に押し込むなど…出来るはずは…」

「そうか、転移魔法…」

 リーンは笑顔で頷いた。流石は侯爵と言った所だろう。

「て、転移魔法…って聖王国の秘伝ではありませんか…」

「そうです、転移先を直接噴水の管の中にすれば何も毎回魔法石を持ち上げずとも水の中を通って地下へ行けます。魔法石を動かすのは一度だけでいいのです。転移魔法陣を設置さえ出来れば、この水風の魔法石は水だけを吸い上げる仕様なので人は吸い上げませんからそのまま川に流されて国の外に」

 どう考えてもバカの発想だ。でも、この帝都から誰の目も触れずに出ることは不可能。

「帝都に王の手によって張られている結界もこれなら潜れる、という事か」

 ポールが言う結界は元々半球状に建っている帝都をすっぽりとドーム状覆っており、侵入者や密入国者また、中の人間が門以外から出ようとすると一様に結界に弾かれてしまい入る事も出る事もできない。

「そうか、一度だけなら工事業者などに扮装すれば良い…」

「この方法を使えば、不可侵の魔法に触れず、更には誰の目にも触れず女子供を外に出せるわけだ。確かにこれでは奴を捕まえられない。しかし、何故直接帝都の外に転移させないのだ」

「転移魔法は聖王国の秘伝ですから知らないのも無理はありません。簡単に言うと転移といても消えて無くなる訳ではありません。どちらかと言えば早く移動し移動している、ようなものですから結界は通れません」

 秘伝なのに、何故…とジャンが言い掛けたが、すぐハッとして口を噤んだ。魔法と言えども万能ではないのだ。出来ない事も勿論ある。だからこそ、不可侵領域とされる地下に行く抜け道もあるのだ。

「転移魔法陣を移動させましょう。そろそろ転移してくるはずですから」

 この情報はジャンから貰ったものだ。
 予め仲の良い門番にチベット商会の者が出国したら出入国確認の際に馬車の大きさに対して積荷の量に差がないかを調べて貰っていた。
 普通の商会や商人ならその街で物を売り、その売上でまた商品を仕入れて馬車を一杯にしたら、また次の街へ商品を売る。それなのに積荷が少ないのならば、その馬車は魔法陣を潜った人達を回収する為のものだと踏んたから。そしてその馬車を抑える必要があるからだ。これからその馬車が“商品”を回収し損ねれば確実にトットに連絡がいく。
 今はまだトットに此方の計画を知られるわけには行かない。

「移動、なんてお前に出来るのか?」

「いいえ、出来ません」

 リーンはこの数日間トット・チベットを神示を使って徹底的に調べていた。その過程で転移魔法の情報を得た。リーンは魔法の存在を知ってからというもの自分でも魔法が使えるか実験をして、リーンは久しぶりの子供の頃のようなワクワクを思い出していた。
 しかし、魔法は全く使えなかった。問題なく使える方がおかしいのだが、何せ神示のおかげで魔法の知識も神レベルなのに何も出来ないのが悔しかった。
 魔法を練習しているとジャンが扉の前で行ったり来たりしている事に気づき、リーンは実験を終了せざるを得なかった。
 不貞腐れ気味なリーンにジャン達兵士はこの数日間散々悩まされたのは言うまでもない。

「移動はお願いします」

 リーンは手を掲げながらポールに言った。それに対してジャンもポールも無言だ。

「何をすれば良い」

「魔法陣は紙のようなものに書かれていて剥がせば移動も出来ます。ギリギリ手が届くので管に手を突っ込んで下さい」
 
 リーンの言葉を聞くや否、ポールは大きなため息をついた。水の中に入るなら先に言っといてくれ、とポールが思ったのは言うまでもない。濡れる前提の服装ではないのだ。

「それは私でもよろしいですか?」

 ジャンが言う。ジャンからすればポールは貴族抜けしたとは言え目上の存在なのは間違いない。決してジャンも濡れる前提の服装ではないがそう言う仕事なら、と勝手出てくれた。
 リーンからすればどちらでも構わなかったので承諾の意味で頷く。ずぶ濡れながらあっさりと剥がされ、ジャンの手に収まっている魔法陣の紙をポールはチラリと覗いたが、今までに見たこともない程複雑すぎたので解読する事は諦めた。
 3人はすぐに店の食料庫の手前の地下室まで戻った。
 その間、魔法陣をグランドール家に持って行って転移して来た人をそこで直接出迎えれば、と何度もポールが主張したがリーンは全て却下した。
 何故なら時間がないからだ。転移先が貴族の家と分かるや否や女性達が恐怖するのは目に見えているし、ましてや何人転移してくるかわからない状況では移動中の馬車の中では対応できない可能性もあるからだ。
 地下室にはリーンに言われた通りお湯の貼った大きな桶と綺麗な布を用意して待っていたニーニャとアーニャの姿があった。
 ジャンに魔法陣を床へ置くようにお願いする。

「あとは転移されてくるのを待つだけです」

 正午を知らせる鐘が鳴る。鐘が鳴ると同時に魔法陣が激しい光を放ち始めた。

「リーン、これは…」

 リーンが小さく頷く。それを見たポールとジャン、その後ろで見守るニーニャとアーニャも生唾を飲んだ。
 
 光が落ち着くと同時にガタンッと床に物が落ちる音を鳴らす。

「あ、あ、ぁ…」

 物音の正体の人物は此方を見て声が発せない程カタカタと全身を震えさせている。

「大丈夫落ち着いて下さい。私達は人攫いからあなたを取り返したのです」

「大丈夫ですよ。もう大丈夫です」

 ニーニャがしゃがみ込み優しく女性を抱きしめる。ニーニャより少し年上風な若い女性。囚われてから何日もちゃんとした世話をして貰っていなかったであろう風体だ。
 髪はボサボサで何日も洗われず、泥だらけの服。暗がりにいた為か少し目は虚ろで、身体は痩せ細り目も窪んでいる。
 後ろからアーニャがお湯を含ませた布で優しく顔を拭いてやる。2人の献身的な対応に少し震えが治まった。

「あ、あの!他の子はどうなるのでしょうか!!私の他にも拐われた子達が急に牢から連れ出されて変な部屋に押し込まれたんです!!!」

「大丈夫です。落ち着いて。あなたの他に何人いたか分かりますか?」

「わ、私の他に大人が3人ほど、子供が2人だったと思います」

 その答えにリーンは少し微笑み、皆さんここに来ますよ、と言うと女性も安心したのかアーニャと共に布で身体を吹き始めた。
 それからは同じ事を何度も繰り返した。皆一様に始めこそ身体を震わせ怖がっていたが、ニーニャとアーニャの献身的なサポートにより安心して貰えたようだ。

「彼女達はこれから安全確保の為、計画が終わるまでは私の屋敷で預かる。それで良いな、リーン」

「えぇ、それで構いません。囚われていた子達はみんな同じ牢に入れられていたようなので彼女達が居れば事情の説明は出来るでしょう。この後下流の川で待機している者達の方もお願いしますね」

 リーンは床の魔法陣が記されている紙を渡し、ポールは受け取りつつ軽く頷き、任せておけ、と言って住居用の裏口から颯爽と外へ出て行った。

「リーン様、出来ればこの後主人、リヒト様にお会いになっていただきたいのですが、御足労頂けませんか?」

 ジャンの問いにリーンは頷いた。リヒト達には今回の計画について大した説明もせずに協力をして貰っていたので、確かに説明は必要だな、と少し申し訳ない気持ちとそんな中でも協力してくれた事に感謝の気持ちでいっぱいになった。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...