神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第一章

計画会議

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「ポール様、質問形式でよろしいですか?答えられるとこは答えます」

「それでいいと思うよ。でも僕は何も知らないから初めから順建てて話してもらえる?」

「畏まりましたライセン様。只一つ初めにお約束して欲しいことがあります。この後、話すことは一切の他言無用。そして私については何もお話ししませんし、質問も受け付けません」

 ライセンはにこやかに笑ってリーンを見つめた。それを肯定と受け取りリーンも少し微笑む。
 ピリついた空気が少し柔らかくなる。

「では…。今回の計画はこの国で起こっている奴隷問題を解決する為のものです。トット・チベットという人物が貴族になれる様計らう対価としてヴェルナード聖王国が奴隷を要求。そしてこの国の女性や子供達が拐われ、教皇や枢機卿達により慰み者にされ死んでいます」

 聖王国…、と笑顔を消し、目を伏せながらライセンは小さな声で言う。やはり聖王国の存在がこの件の1番のネックポイントだと分かっている様だ。同時に怒りの感情も隠していない。他国が大きく関わっているのだ。しかもその相手が聖王国のヴェルナード。信仰を同じくする帝国にとっては一番相手にしたくない相手だ。

「まず、ポール様にトットが奴隷の取引を直接的に行っていたトレース領とハーベスター領を抑えて頂きました。この件はライセン様にもご協力頂き感謝しております。そして、今回の事件の問題点。トット・チベットのような小者がどうやってこの国から女性や子供を誰にも悟られずに聖王国へ送っているかです」

「聖王国が絡んでいるなら転移魔法ですぐでは無いのですか?」

 ライセンの問いにリーンは首を横に振る。

「それができるならトットなどに頼る必要さえ無いはずです」

 確かに、とポール以外の皆が一様に頷く。トットなんかに頼り、そこから情報が漏れる事を考えれば直接行った方が早いだろう。

「転移魔法を使用するには幾つか条件があります。教皇の血筋に連なる者、魔法陣、そして帝国のような探知結界がない。血筋と魔法陣はすぐ用意できるでしょう。でも結界に阻まれる。初めは帝国以外の国で調達するしかなかったでしょう」

「それがどうしてトット、帝国になったのですか」

 リーンがとある資料を取り出す。
 見てくださいとばかりに身を乗り出してライセンの前に差し出す。

「それは…」

「これは原本の写しです。本物は別の所に。この資料通りこの国の地下は王族が逃亡、脱出の為の秘密通路が張り巡らされています。噂ぐらいは聞いたことありませんか?」

「確かに地下の不可侵領域に繋がる道は王城にあると聞いた事があります。そうか…入り口があるなら出口もある…そう言うことですね」

 ライセンが資料を見る目はとても険しい。ぶつぶつと呟く答えにリーンが頷く。

「この資料のお陰でエルムダークの中で帝国が何処よりも安全に奴隷を連れて来れると示されたのです」

「確かに馬鹿な発想だ。だからそこ誰もそんな突端事を考え付かない」

「それだけではないかと。あのレスターという優秀な部下あってこそですね。どんなに貴族もどきを気取るトットが馬鹿な真似をしようともあの者ならば上手く捌くでしょう。ならば、対価に身分を欲するトットは扱い易い。彼以外に条件にあう者はなかなかいないように思います」

「トップが馬鹿で扱いやすく、部下が優秀、奴隷の対価も聖王国に大した害がない事。確かになかなかいないだろうな」

 3人は深く納得したようだ。3人が言う通りそんな条件にあう者は他にいないだろう。

「あの地下室…がその出口なのか…」

「はい、帝国が建った際協力したシャーマル・ハーベスターという人物の手記がその不可侵の領域について記されている資料の本体です。この資料はそこから一部抜粋したものです」

 シャーマル・ハーベスター。彼は建国時に優れた設計技術を認められ携わり、その貢献を認められ異例で子爵となった人物。地下道を設計し作ったのも彼である。

「レスターはその分家の子孫でハーベスターの領官をしていた時に無理矢理トットの屋敷へ連れてこられ、6年もの間仕事をさせられていたのです。その後トットが持ってきたこの資料により噴水の管に“不可侵の領域”が施されていない事を知り、教会との交渉もしたそうです」

「だから、あのパン屋をトットは何としても手に入れたかったのだな」

 パン屋とは?とライセンがポールを問いただす。

「噴水広場の裏手通りにあるパン屋だ。あそこの地下に不可侵の領域に行ける地下室があったんだよ。要は王の脱出用の出口だな。もし賊が知れば誰の目にも触れずに王城に乗り込める」

 リヒトとライセンの目が鋭くなる、王城に最も簡単に不意打ちで攻撃できる手段があれば、一夜にして王の暗殺が可能だからだ。

「あの場所に地下があったのには理由があります。パン屋のおじさんは、色々複雑なのですが…王族の子孫に当たる人物です。もちろんあの土地の所有者はおじさんです。表向きの所有者は違う事になってますが、それは身分を偽るため。今は王族が逃げてきた時用の使用人のような扱いになってます。本人は知っていると思いますよ。今回は気づかれないよう、おじさん、おばさんのお2人には王にパンを献上する件で王城に行って頂きましたので、この事件には一切関与しておりません」

 驚いている暇がないくらいの情報量。皆まで言わなくても自身で答えに辿り着くことが出来るこの人達のポテンシャルの高さにリーンも助かっていた。

「疑問点や質問したい事は山ほどありますが、とりあえず置いておきましょう。それで、この後はトットを捕まえる為の作戦ですかね」

 ライセンはやはり聖王国との繋がりを危惧しているようだ。

「そうです。先程お話し通り、トットが今後も聖王国との奴隷取引を続けるためにはレスター様が必要なので必ずもう一度接触してくるでしょう。レスター様にはトットの元へ戻って貰うようお願いしました」

「そうですね…レスター君はかなり優秀だと言う話でしたがそれはどれ程のものなのかな?」

 ライセンは食い入るようにリーンを見つめる。反応を見ているようだ。

「そうですね、もう二度と会いたくない男の元に行けという私に褒美の要求と口づけするほどの男です」

 なかなかの大物だね、とライセンは笑い出した。
 不服そうなリヒトは笑いを遮るように言う。

「その後私達はどの様にいたしましょう」

 リヒトもよっぽどの大物だとリーンは思った。目上2人を相手に一歩も退くそぶりはない。

「レスターからトットと教会の接触があれば知らせてもらいます。ポール様とライセン様にはトットの方をお願いします。その間に私はリヒト様と囚われている者たちの解放に向かいます」

「いや、私とリヒト君で教会に向かおう」

 ライセンは不敵な笑みを溢す。リヒトは不満の表情だ。

「ライセンの言う通りだ。この件はかなり大事になっている。今私が出ていけば、【オリハルコン】を晒すような事態になる。それだけは避けたい。教会の者は私が家から抜けた事を知っている。リヒトは騎士団の少佐だ。そっちの方がよっぽど大きく出れる」

 分かりました、と頷くリーンにリヒトは不満を隠せていない。

「それでは、まずは帝都の教会の主を味方に付けましょう」

「この件はヴェルナードの皇族の身内同士の権力闘争が鍵となります。確かに教会を味方にするのはいい作戦だと思います」

「後は教会側がトットを自然と追い詰める状況を作りましょう」

 ライセンのいう作戦はどれも完璧だった。欲しい情報は上手くリーンから聞き出し、それを使いすぐに計画を立てる。たった今作った作戦とは思えない程緻密だった。

「これでこの事件はとりあえず終わりです。如何ですか?」

 計画実行のための準備について打ち合わせるとその場でお開きとなった。
 帰り際に名残惜しいとばかりに子供の様に泣き叫ぶリリアにたじろぐリーン。しかし、そんな事はお構いなしにリヒトが思い切り振り切って帰路についた。
 リーンは相変わらずその攻防戦を受けても表情も変えず身を任せていたが流石に疲れたのか、馬車の中では一言も発さず大人しくしていた。






 





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