神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第一章

救出作戦開始

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 目的地に向かう馬車の中は思ったよりも楽しげな雰囲気だ。今回リーンはリヒトとは別行動の為、カートの膝の上で大人しく座っていた。
 広い馬車の中はもちろん座る席が沢山残っているが、カートは執事からリーンを受け取り馬車に乗り込むと迷わず自身の膝の上に乗せた。
 ポールからは相変わらず恐ろしいものを見るような感じの視線を受け取ったがリーンはまるで気にしていない。
 しかし、ポールのその視線はリーンに向けられたものではない。カートは少し印象は薄いがとても可愛らしい容姿。だが、其れとは裏腹に普段から愛想のない無口な青年で青みがかった銀髪に碧眼のクールな雰囲気は近寄り難い印象を与えており、遠巻きに見られるのはいつもの事だった。
 そんな彼はスキル“意識疎外”と技能“変装”においては【オリハルコン】1番の実力者で潜入調査は群を抜いて秀でている。色々な物を見てきたが、特段何かに興味を持った事がなく、ポールはそんな彼だからこそ貴族や権力者に靡くことなく忠実に仕事をこなす事を知っている為、尚更目の前の光景が信じられないのだ。
 いつだったか同僚が長きに渡る潜入調査から帰ってきたカートにお疲れ様と言う意味で肩に手を乗せようとしたが、それだけのことで寸断の所で止めた刃を突き立てている所をを目撃した事もあった。
 パーソナルスペースに誰も入れたがらないし、触らせるなどもっての他。そんな彼がリーンを自身の膝に乗せて心なしか優しい顔をしているように見えれば恐ろしくもなると言うものだ。

「リーン様、もう少しで到着致します」

 カートが優しく言う。
 リーンはその声の主を見上げる。
 事前情報としてカートは貴族の出て家格はリヒトと同じ伯爵家。いつも仏頂面で波風を立てるような事は無いが幾度となく婚約者候補達を怖がらせていていると告げた神示の情報を無表情ではあるが怖いとは思えない彼を見て雑駁な知識だ、と少し呆れてしまった。

 そうこうしている内に人気の無い裏路地に馬車が止まる。近くに待機していた【オリハルコン】の団員達は思っていたより軽装で騎士団というよりは憲兵のような風貌だ。
 リーン達が馬車から降りるとすぐに馬車は走り出す。こんな裏路地に馬車が止まっていると目立つというのと馬車から誰かが降りたと思わせない為でもある。

「カートはリーン。全員地図は頭に入っているな?あとは予定通りだ。いくぞ」

 ポールの言葉足らずとも取れる激励にも団員達は胸に拳を当て従う。いつもの事なのだろうがそれは彼が団長としての資質が高い故なのだろう。それが無ければここまで統率の取れた団は作れない。

 地図が完全に頭に入っている騎士達は迷う素振りは一切無く路地裏の元々は長屋だったであろう廃屋を進む。人の気配は無い。時折ガサガサと物音がするがそれはネズミや野良猫の仕業だ。
 廃屋から地下へと続く通路を曲がり一度足を止める。次の曲がり角に見張りが数人いるようだ。
 彼らはまだ此方には気付いてないが、このまま気付かれず通り過ぎる事は難しい。

「1人は酔い潰れて寝てるな、あと3人はまだ飲んでやがる」

 夜が明けてそろそろ住人も朝の支度に取り掛かる頃合いだ。そんな時間まで呑み明かして見張りが務まるのか甚だ疑問だが、此方としては好都合だ。
 1人の騎士がサッと何かを見張りの足元に投げ込む。びんの割れる音と共に眠りこけていた仲間も少し目を開けたが、他の3人と共にもう一度眠り出した。

「進むぞ」

 ポールの声と共に足音も気にせず横を通り過ぎる。彼らが起きる気配は全く無い。気持ち良く眠る彼らをリーンは少し羨ましそうに見ていた。

「お眠りになっても大丈夫ですよ」

 カートはそういうが流石のリーンもこんな時に眠る程能天気ではない。カートに向けた何を言ってるの?、という笑顔が伝わったのかどうかは分からないがカートが微笑むので取り敢えず頭を撫でといた。少し目を細めて待ってましたと言わんばかりにリーンの手を甘受しているので少し可愛い、とそんな事を考えていると、ポールがリーンを呼ぶ。声の方に振り返ると先程までの様子を見ていたのか、じとーとした目で此方を見ていた。

「カート、下せ」

 嫌々リーンを地面に下ろす。今日、着替え以外で初めて地面に下りたリーンは石畳の床の硬さを確かめるように歩き出す。
 目の前には怯え体を震わせる女性や子供達が奥の壁にぴったりと張り付いている。一瞬、リーンの姿を見て安心したのようにも見えたが、何が始まるのかと此方を伺う目は恐怖と警戒の色を禁じ得ない。

「そのまま声を出さずジッとしていて下さい。危ないですから」

 リーンの声にヒッと恐怖の声を上げる。たくさんの男達。不釣り合いの少女。状況が掴めない彼女らは声もまともに発せていない。

 ポールが檻に手をかける。初め何の変化も起きないので小さな息遣いだけが響く。しかし、次第に掴んでいる檻がチリチリと音を立てて溶けていく。錠前が完全に溶けるまで然程時間はかからなかった。

「安心してください。見張りの男達は完全に眠っています。このままあなた達をご家族の元へ連れて行きます。魔法が怖くない子は私と共に安全な所まで運びます。怖い子は憲兵達とこのまま外に出れます」

 まだ疑いの目を向けたままで、動き出そうとしない。でも、彼女達を安心させる為だけにこんな危険な場所にニーニャとアーニャを連れてくる訳にも行かずどうしたものかと考えていると、

ーードタドタ

 と大きな足音と荒い息遣い、まだ大丈夫だッ、と繰り返す怯えた声が反響して響き渡る。その声を聞いたからか急にまた体を震わせ始める子供達。それを抱きしめるようになだめる女性達。

「ポール様お願いします」

 頷き身構えるポールを見てリーンは地面に魔法陣の巻物を敷く。大丈夫よ、と皆んなに声を掛けながら開いた巻物に重りを足していく。

「あ、安全な場所にに、に…逃れるのですか」

 女性は掠れる声で必死に声を出す。

「はい、騎士団の本部に医者と侍女達が待機してますので健康状態を調べて治療し、身支度を済ませたらお家にすぐ帰れますよ」

 リーンは勇気を出してくれた彼女に感謝の意を込めて全力の笑顔で答える。涙を流す彼女はそれを端切れのような服で拭い、子供達からお願いします、とリーンの手を握りながら言った。
 リーンが地面に魔法陣を敷き終わると同時にその声の主が現れた。

「止まれ!!トット・チベット!」

 ポールの大きな声が響く。今の今まで寝ていたであろう男達の叫ぶ声も聞こえてきたが、あちらは予め縄で縛り上げており、此方に来る様子はない。

「グ、グランドール、様。こ、こんなところで何を…」

「何を、だと?ライセンと会ったのでは無いのか?」

 ビクッと身体を飛び上がらせ恐怖を隠せていないトットはそのまま地面に崩れ落ちる。周りをチラチラと確認して状況を判断しようとしているが、リーンと目が合う事は無い。リーンが其方を見てないという事もあるが、カートや憲兵達によって視界が遮られており、檻の方の様子は伺う事ができないからだ。
 少し遅れてまた大きな足音が近いて来る。それも1人や2人では無い。大人数の足音だ。
 檻の中の女性や子供達の様子といえば自分達を攫ったもしくは買ったのがトットであると知っていたようで、そのトットが現れて剣を向けられている様子を見て、ようやく助けに来てもらえた事が理解できたようだった。

「この絵の上にそっと乗って下さい。少し眩しいと思うので目を閉じていて下さいね」

 安心させるようにゆっくりと優しい声色で話す。
子供達はギュッと目を瞑り声に従う。女性達はまだ自分で目を隠せない子達の目を塞ぎ、そっと自分達も目を閉じる。
 リーンは皆が目を瞑った事を確認する。そして、事前にビビアンに教えられたままに“ポート”と唱える。すぐに強烈な光が辺りを包み込む。一瞬トットの叫ぶ声がしたが、すぐさまサンミシェルの声で掻き消された。

「リーン様!!!」

「サンミッシェルさん、後の事はよろしくお願いします」

 リヒトの家のメイド、サンミシェルの他にライセンが用意した医者や治癒師、侍女が駆け寄ってくる。本当はこのままここに残り、サンミシェルと共にリヒトの家へ戻る予定だったが、トットが現れたのなら話は別だ。

「リーン様、戻られるのですか?」

 サンミシェルは止める様子は無いが、止めたいという顔をしているが、リーンは淡々と答える。

「向こうにリヒト様もいらっしゃるので大丈夫ですよ」

 それでも表情を変えないサンミシェルにもう一度攫われた子達のお願いをしてリーンはまた石畳の上に戻っていった。

 


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