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第一章
みんなの役割
しおりを挟むグランドール邸での会議後直ぐに4つのチームに分かれて作戦を開始した。
まず初めにこの作戦のメインは“ビビアンを教皇に据える事”。そうする事で奴隷問題の解決と事件の黒幕を排除ないし、手を引かせる事が出来る。
ビビアンを教皇に据える為には現教皇であるラミアンを何らかの形で退けるのが1番早い。
元々教会内の支持率が1番高いのはビビアンで、世襲制から教皇になる可能性が高いのは教皇の息子で枢機卿のユリウスか教皇の姪であるビビアンの2人だ。
ここでの問題はラミアンの退き方。ただ普通に退かせるとユリウスが教皇になるのが自然だ。
ユリウスを次代の教皇にしない為には教皇の悪事を暴き、教皇一家を丸ごと聖王国から追い出すのが得策だ。
有難いとこに教皇の悪事は山ほどあり情報も証拠もビビアン自身が集めた物でほぼ間違いなく足りている。
では何故、彼女はそれを使い彼らを追い出さなかったのか。
勿論、即刻使って退けるつもりで彼女もずっと動いていた。仲間を集め、証拠を集め、準備を整えて来た。しかし、どうしても足りない物があった。それが教皇だけが持つ転移結晶。
転移結晶は皇族である者が持っている特別な水晶だが、教皇が代々受け継いでいる水晶だけは格別に能力が高い。
ビビアンやユリウスが持つ転移結晶は転移石の場所に行けるだけ。そう一箇所だけだ。
しかし、ラミアンが持っている転移結晶は元々の結晶の規模が違う。リーンがリヒトから貰ったピアスのように基本的にその結晶毎に蓄積された記憶のような物があり、その結果結晶同士が呼応する。転移結晶はもう採掘し尽くされた希少な物で新たに見つかる事は無い。よってラミアンが持つ転移結晶だけが類稀なる能力を持っている事になる。
聖王国は同盟国や同じくヴェルムナルドール神を信仰する国の貴族や要人にその転移結晶のカケラを神の加護があるエンブレムとして加工し渡している。そして、そのエンブレムを持つ者のところへラミアンは瞬時に移動できるようにしているのだ。そう、リーンがリヒトから渡されたラピスラズリのピアスと同じく1つの塊を分けることによってカケラのある所であれば何処へでも行けると言う大層な効力を発揮させる事が出来るのだ。
まさにこれがビビアンが動き出せなかった原因だ。その転移結晶を持っていれば何処にだって逃げれる。幾ら証拠を持っていようとも本人を捉える事が出来ない。更にはそれが教皇の証となる為、ラミアンがそれを持っている限りビビアンが教皇になる事は出来ない。
そこで重要になって来るのがその能力を奪う方法がある事。それが魔法封印。
魔法封印を施すにはかなりの時間と労力、そして大量の封印魔石オニキスが必要だ。更にはそこが魔法封印が施された場所だと気付かれずにラミアンを連れ込む必要がある。
これが何より難しい。
魔法封印は本来魔法使いの犯罪者などを閉じ込めておく為の牢などに仕掛けられる。勿論魔法の痕跡が明らかに分かる程強力な魔法だ。
なのでそれらを纏めて解決する為の準備に必要なのがこの3つだ。
1、これ以上奴隷や誘拐などの被害が出ないようにする。
これはポールとライセンが担当する。
初めにグランドール邸に出入りする信頼のある商人の中から数人用立てて聖王国周辺での偽の魔物目撃情報を市井に流させた。
魔物の目撃情報は直ぐに広まり、討伐ギルドの方から直ぐに討伐依頼が組まれ、その後騎士団の方にも討伐ギルドと協力して対処するよう国から要請が出た。
国は国民を守るという体裁があるので大義名分を果たす為にも必ず騎士団を動かすと言うライセンの読みが見事に的中した形だ。
討伐ギルドの募集の方も予め信頼できるパーティーに協力を要請し、討伐依頼開催後直ぐに受注して貰ったので身内に等しい。トットの事件から事情を知っている【オリハルコン】の団員も数人、騎士団として同行して聖王国周辺の検問を行えるようにした。
こうする事で何処からも目をつけられる事なく、聖王国国境周辺を行き来するの行商人の検問を行う事が出来る。更には聖王国内に出入りする人物を調べる事が出来て一石二鳥だ。
リーンが神示で片っ端からピックアップして作った奴隷商を営んでいる商会リストを参考に取り締まりを強化することも作戦の1つだ。これで帝都エルム外の領地からの奴隷密輸も他国からの奴隷商も抑え込み、一網打尽にするのが最大の狙いだ。
2、枢機卿達の居場所についての調査。
これは一度反旗を翻し降格した事のあるビビアンがトット・チベット逮捕という失態により再び、降格。或いは、破門を阻止する。
この重要な任務は隠密、調査に特化したクラスを待つカート、ローゼルの2人が担当する。
実際にビビアンの追放を望んでいるラミアンにとって破門にする最大のチャンスと言える。
何故なら、その大罪人トットと繋がっているのがビビアンだからだ。幾らラミアンからの指示だったとしても議会に司教であるビビアンは参加できない。
なので勿論ビビアンが反論する術はなく、ラミアンによって証拠を出されれば誰にも反論される事もなく議決されるだろう。この機会を見逃す事は無いだろう。
そして枢機卿達は今まさに年2回春と秋に行われるセレモニーの前巡業の真っ最中で、各地で行われている収穫祭に顔を出している。収穫祭は収穫の喜びや感謝を神へ伝えるお祭りなので神の信徒である彼らを受け入れない所はない。
枢機卿達は布教と言う表向きの活動をしつつ、各地で資金や貢物を集めているのだ。
聖王国は代々、皇帝や国王などと同じく世襲制で教皇が選ばれる。しかし、聖王国発足当時はまだとても国と呼べる程の規模では無く、後々ヴァルムナルドール神が降臨したと知られるようになるまでは選挙でリーダーを決めていた。
聖王国が女神が降臨した国として知られるようになったきっかけがあの水晶鏡だ。
ステータスなどという概念のない時代に突如現れた水晶鏡の存在はまさに叡智の極みと言える。
そしてそんな物を生み出せるのは知識の神と知られるヴァルムナルドール神しか居ない、と情報ツールのない時代にも関わらず瞬く間に広がって行ったのだ。
国として大きくなってから周りの国々を見習って世襲制に変わっていったと言う経緯がある。
なので、教皇と幾ら崇められていたとしても、そもそも帝国や王国と違い、始まりは村民から選挙で選ばれた代表という立場であるので、全ての決定は議会を通して行われるのだ。
巡業が終わり、枢機卿達が帰ってきて議会が開かれれば、破門は確実。幾ら教皇の身内であろうと破門され、国外追放になったビビアンが教皇になる手段はない。
その前に枢機卿達の身柄を確保する事が出来れば議会自体行われず、ビビアンを破門にする事を回避できる。と同時に教皇を焦らせて帝都へ誘き出せれば尚良い。
3、協力者を増やす。これはリーンの仕事だ。補佐としてリヒトやレスター、私兵達が手伝う事になる。
現状、敵対勢力が2つ。聖王国教皇ラミアン・ヴィカー、トットを裏で操っていたディアブロだ。
情報に関してはリーンがいればほぼ完全無双と言って良いだろうが、情報だけではどうにも出来ないこともある。
その為に協力者にしたい人物は聖王国枢機卿ベノボルト、アーデルハイド家のメイドになったアリス、アーロン商会の大店主ハロルド、エルム帝国の公爵家ハーニアム、の4人だ。
ベノボルト枢機卿には教会側の対策として来てもらう。2、の枢機卿達を誘き出し、捕らえて行動を抑え込む事。魔法封印に関する協力。
アーデルハイド家に招き入れたアリスはディアブロと直接的な繋がりを持つ人物で其方へ偽の情報を流したり、向こうが動き出さないよう牽制、抑制する為。
アーロン商会の大店主ハロルドは作戦に必要な物を調達する為と聖王国の奴隷問題を完全に食い止める為の人材や職人達の支援。
ハーニアム公爵は皇帝オーガスターに唯一意見出来る程の力を持つ人物。全ての的に関して牽制になるだろう。更に数が必要になって来る兵を借りる為と何かあった時の為の保険だ。
最後に4.それらを全てを解決する為の情報や証拠を集め、その裏どりをする。これはライセンが適任だ。集めた情報達により直ぐに臨機応変に作戦の変更が出来るからだ。
大まかにはそのような事を頼む予定だ。彼らにはそれぞれ望む物があり、リーンには其れを為せるだけの知識、情報がある。
彼らを完全に味方につけるのは骨が折れそうだが、味方について仕舞えば、作戦の成功は間違いないと言えるだろう。
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