神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第一章

アリスとのお出かけ

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 ーーー西陽が眩しい。
 
 馬車でトコトコ揺られながらやって来たのはブティックだ。

「リーン様…私が居ないと手に入らないものってこれのことですか?」

「はい。そうですね」

 真っ白なドレスに身を包んだアリスが何か悩ましげな表情で此方を見ている。アリスの周りには無数の真っ白な衣類が乱雑に落ちていて、悩ましげな表情の意味を物語っている。

「全部購入させて戴きます。今着ている物はこのまま着ていきます。あと、派手すぎないアクセサリーを見繕って頂きたいのと、それとそれ、これとこれは包んでください」

 リーンの言葉に目を輝かせた店員は、はい!ととても良い返事を返してバタバタと準備を整える。中々良い値段のする商品を価格を気にせずどんどん買って行くリーンはかなりの上顧客と思われているだろう。
 店の奥の方で優しい笑顔をした店主らしき男性が楽しそうにその様子を見ていた。

「色々悩まれてましたね」

「そうですね。今日は大切な用がありましてそこに着ていくのに用立てたのですが、白でも色々あるので大変悩みました」

 このブティックに来た目的はこの優しそうな男性ハーニアム公爵と会い、交渉して協力を仰ぐ為だ。
 貴族御用達のブティック・ロマニスはハーニアム公爵が経営するお色々な店の中の一つで、1番公爵が顔を出している店だ。公爵と言うのだから勿論皇族であり、かなり高位な人だ。
 ハーニアム公爵は先代皇帝の弟で当時から優秀で上流貴族からは皇帝になる事を望まれていたが、裏方の方が性に合うと身を引き、国を発展させてきた功労者だ。先代と年が離れていたとは言え、かなり高齢。それでいてその活動が衰える事はなく、今もなおこの国を支配している裏の皇帝だ。

「それでお話はなんでしょう」

(何故分かったのだろう)

 ここに来たのは勿論彼と話す為で間違い無い。リーンの視線を感じて直ぐに近寄って話しを振ってきた公爵にリーンは笑顔を向ける。

「ご挨拶遅れまして、申し訳ありません。私リーンと申します。本日は公爵にお願いがあり参りました」

「頼み事をアポなしとはなかなか大胆な方だ」

 豪快に笑ってはいるが、それが嫌味には感じる事はない。店員の教育が行き届いているのか、周りから視線をもらう事もない。

「ご無礼なのは重々承知で御座います。重ねてお詫び申し上げます」

 ブティックを見渡しながらハーニアム公爵はニッコリと笑った。

「元々このブティックはその為に作ったのですよ。しかし、本来の使い方をされたのは今日が初めてでね。とても楽しい。…おっと、話をお伺いしましょうか?お時間もあまり無いようですから」

「ご厚意感謝致します。単刀直入に申しますと、見張って頂きたい人が居ます」

「ほう。見張って欲しい人、ですか」

「はい、公爵様にしかお願い出来ませんので」

「ハッハッハッ。確かに私以外に適任はいないでしょうな。いいでしょう。では、直ぐにでも彼と秘密裏に会談出来るよう場を設け話をつけましょう。明日には監視も密偵も全て無くなると保証しますよ。それと色々と物入りでしょうし、中々会う事も出来無いでしょうし、うちの領の衛兵の副団長の小隊が丁度30名だったと思います。それをお貸ししましょう」

「…よろしいのですか?」

「私も公爵という身ですから、それなりに良い部下を持ってましてね。この国の事で知らない事はあまり無いのです。勿論あなたの事も彼らの事も」

 控えていたミルとライナに視線を向けてニッコリ笑った公爵の返答に只者では無いと言うことだけは分かった。敵なら相当な強敵だが、味方なら寧ろ心強い。

「感謝申し上げます」

「あぁ、こういった楽しい時間はあっという間に終わるものだ。この後は教会に?」

「…おっしゃる通りで御座います。さすがはハーニアム公爵様です」

 男性の話しやすくそれでいてさっぱりした雰囲気は店主として相応しい。店の雰囲気もスタッフの対応もきめ細かく、貴族御用達の店の中でもより上質な場所だ。
 ただそれは店主としての彼であって公爵としての彼は話しやすいが、気兼ねない訳ではない。

 ハーニアム公爵と暫く話していると、商品を包み終わった店員と共にアリスが真っ白な服に身を包み出てきた。会計は勿論完全に存在を消し切ったログスが終わらせている。

「リーン様…こんな高級なお店…私足がさっきから震えてますよ…?」

 確かにプルプル震えているアリスの足に一度目を向けたが、そのままニッコリと満足感が満ち溢れた表情でアリスを見つめる。

「これにもゆっくり慣れてもらわないといけないですしね」

「え?リーン様?今何かおっしゃいましたか?」

「いいえ。次の目的地、教会に行きましょうか」

 アリスに掴まれる前にリーンは店員が開けていた扉から外へと悠々自適に馬車へと歩を進める。アリスはそんなリーンの態度に流石に諦めた様でまだ震えが止まらない足に精一杯の力を振り絞って歩み出す。

 馬車が教会についた頃やっと足の震えが止まり、今度こそとリーンが立ち上がるより前にアリスがリーンを抱える。護衛として同行していたジャンは同じく上げていた手が手持ち無沙汰になりしょげているが、リーンは全く気にしていない。正直どちらでも構わないのだ。

 今日は事前にちゃんとした予約を取っての訪問なのでお出迎えの司祭達が入り口の前で待ち構えている。勿論教会で会う予定人物はベノボルトだ。

「リーン様、本日は御足労頂きまして誠にありがとうございます。儀式の用意は整っております。私は本日ご案内させて頂きます、ベノボルトと申します」

「リーン様。儀式…されるのですか?」

 儀式と言う言葉に即座に反応したのはアリスだけだ。ここに来た目的を知らないのもアリスだけだった。
 儀式は8歳と16歳の成人の儀が通例で例外は有るものの、一般人が教会の儀式と聞いて想像するのはそれくらいだろう。アリスが疑問を持つのは仕方がない。

「はい。今日は貴方の成人の儀を行なって貰うために教会に来ました」

「わ、私のですか!?」

 アリスが驚くのも無理はない。成人の儀は通例で皇帝陛下の誕生日に執り行われると決まっており、それ以外の日程で行うには高額な寄付が必要だ。
 リーンは今後を見越して秘密裏にビビアンに資金提供をしたかった。カモフラージュで教会に高額寄付が出来る日程外の成人の儀をする人員が元々必要だったのでアリスを使っているだけに過ぎないのだが、それを知っても金額が金額な為恐れ多く感じてしまうだろう。それ程の金額なのだ。

「アリスは8歳のハーフパーティーも行えてないとミシェルに聞きました。16歳ではクラスも決まるので受けておいて損は有りませんよ?」

 アリスは熱くなった目頭を押さえて何度もリーンにお礼を言う。リーンは利用しているだけなのでいたたまれない気持ちになったが、微笑みを返して誤魔化す。

「では、アリス様此方へ。案内をお願いします」

 リーンはジャンに抱えられたまま、ベノボルトの後をついて行く。ベノボルトが他の司祭にアリスを預け、リーンを別部屋へ案内する。
 相変わらず殺風景なビビアンの部屋は防音魔法が掛かっているので密会、密談には持って来いの場所だ。
 アリスからリーンを受け取ったジャンは何も言わないベノボルトに脇目も振らずリーンをソファーに座らせると斜め後ろに控える。もちろん手の届く程直ぐ側だ。
 正直ベノボルトとの交渉はかなり厄介だ。彼は彼なりのポリシーがあり、決してお金や脅しでは協力はしない。ましてや情やギリなどもっての外で唯一彼の心が動かされるのは楽しい事、笑える事。これだけなのだ。

 ビビアンが部屋に入って来たのを確認すると早速本題だ。

「ベノボルト枢機卿様、今回はご足労頂き感謝致します」

「ベノボルト、本当に貴方が協力するのですか?私にはどうにも信じられないのですが…」

「ビビアン。私にもそれなりに考えがあるのだよ。決して楽しそうだからとかは考えてない、訳じゃないけどな!」

 ベノボルトが協力の条件に出して来たのは案の定楽しいか、という事だった。なので教皇猊下、枢機卿達の奇行(汚職や犯罪に手を染めた)の理由を話す事になった。正直面白いかと問われればリーンは首を振るだろう。
 しかし、それが彼にとっての楽しい事、笑える事になるのは神示で確認済みだ。リーンの少ない経験則から言っても身内ネタは大体鉄板だった。知らない人からすれば如何と思わない内容でも身内の事だと何故か面白い、なんて事はよくある事だ。例えば担任教師のモノマネなどはいいネタだろう。笑える話の定義はよく分からないが。
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