神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第一章

親子の再会

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 それから今までの時を埋めるように話す2人をリーン達は微笑ましく見つめる。

 アリスが話すこれまでの生活は本当に悲惨なものだった。彼女が6歳の時に母が死に住んでいた家を追い出された。家を貸していたらしい男はたった6歳の子をその場に放置して家財道具や家にあった僅かな現金すら全て奪っていった。
 6歳で何処かに売り飛ばされなかっただけマシだと話すアリスは何処か吹っ切れた様子だった。

 それから小さな盗みを働きながら何とか命を繋いできた彼女はある日、等々食べる物も飲む物も無くなり倒れている所をとある少年に助けられる。
 10歳まで路上で暮らしてきたがその少年がある時小さな食堂を紹介してくれてそこで働く事になった。一日中働いて日給大銅貨1枚(100円)とかなり少ない賃金だが貰えて、尚且つ住み込みでお昼の賄い付き。路上暮らしの彼女には大変嬉しい話だった。
 少しずつ仕事に慣れていき、その愛嬌とお客さんをすぐ覚えたことから可愛がられるようになった。
 しかし、それはその店の店主の娘の怒りを買う事になった。今まで自分1人が皆んなから愛されていたのを取られたと彼女を虐げ始めたのだ。
 同じ歳だったのもより店主の娘の怒りを増幅させていったのだ。
 ある時はお昼の唯一の賄いを捨てられていたり、またある時は必死で貯めたお金を盗まれたり。ぶたれて突き飛ばされた事もあった。
 それでも良くしてくれる店主には何も言えず、何とか自分を鼓舞して仕事をし続けた。
 そうして4年ほど経ったある日、いつものように仕事をしていると、ある初老の風変わりな男に声をかけられた。何でも彼は自分が仕える主人の屋敷で働いてくれる人が減り、代わりを探していると言う。賃金も月大銀貨5枚と成人前の少女が稼ぐ金額としてはかなり破格で、更には住み込みで賄いも3食付き。
 彼女に疎まれたままだったアリスは自分がいなくなれば彼女も元通りの優しい子に戻ると考え、今の生活も周りに愛されていてそれなりに楽しんでいたが、その男に雇ってもらうようお願いをした。
 全てから解放されると思っていたのも束の間。
 その男の主人が彼女の今の雇い主だ。

 その後から彼女は急にしどろもどろになり、話しは支離滅裂だった。誤魔化しと嘘を嘘で塗り重ね、矛盾が矛盾を呼び、隠し事が有るのは明白で、この場にいる皆が必死な彼女を悲痛に感じる程だった。

「アリス。いや、アイリスだったかな?大変な思いをさせてすまなかった。これからは秘書のメイビスと共にこの商会と私を支えてほしい」

「卿。おひとつお話をさせて頂いても宜しいでしょうか」

「リーン様、お気になさらず何なりと」

 ハロルドの返事を聞くとリーンはアリスをじっと見つめる。その視線にアリスから心臓の音が聞こえてくるのではないかと言うほど体を強張らせた。

「卿。アリスはアーデルハイド家のメイドの前に辺境伯様の配下でもあります」

「…そう、ですね…。リーン様からアイリスという名が出てきた時点で気付くべきでした。…そこまでご存知で何故私を専属になさったのですか?」

 アリスはリーンが何もかも知っていると理解した。そしてハロルドは驚きのあまり目が点になっていた。
 それもその筈。他の貴族の配下の者が他家のメイドとして働いているのはスパイ活動に他ならない。自分の娘がそんな事をしているとは思いたくないだろう。スパイは見つかり次第、殺されてもおかしくないからだ。

「アリスには2重スパイをして貰っています。私達の嘘の情報を流して貰っているのです。卿には申し訳ないですが私達が辺境伯を押さえ込むためにはコレが一番確実でした」

「わ、私が…?に、2重スパイ…?をしていて…、嘘を流していた…」

「正確には嘘では無いですね。リーン様の情報を勝手に勘違いするようにする。そしてリーン様に目を向けて、聖王国に向かないようにコントロールしてる、と言った方が正しいです」

「アリスは嘘の情報を伝えたわけではないですし、この情報が上手く伝われば、辺境伯の狙いは完全に私に向くのでアリスが邸から出るとなっても引き留められないでしょう。それに卿には私達よりも辺境伯よりも更に大きなバックがついて下さるので手出しもないかと」

 リヒトが説明を付け足し、それをハロルドとアリスは静かに聞き入る。
 これまでの経緯を一通り説明し終わると2人とも脱力したようにへたり込んだ。

「…やはり、ハーニアム公爵様にお願いされたのですね…」

 リーンは静かに首を振る。

「あの方はそういう方なのです」

 そして、アリスの今後について話し合い、まだ暫くはアーデルハイド家のメイドとして働く事に決まった。アリスにはまだ辺境伯家を押さえ込む仕事が残っているし、アリス自身もまだ辺境伯の配下から抜けていない。なのでこの件が全て片付いてからまた話し合う事になった。

「そしてもうひとつ大事な話があります。アリスは成人の儀で知っているとは思いますが、彼女のスキルはとても珍しい物です。お母様から譲り受けたスキル《トレース》これは代々ユーラシェード子爵家の子孫にのみ受け継がれている珍しいスキルです。あらゆる物を瞬間的に記憶し真似できるスキルです。それが技能《審美眼》(その人の嗜好や考えを少しだけ読み取ることが出来る)と合わさると厄介な事に新たなスキルに変化します。《審美眼》は印象を良く出来る、気が利く、程度の効果ですが、この技能が成長すると最大でスキル《鑑定》になります。《鑑定》は優秀すぎるが故に引くて数多でしょうが、身の保証はありません。奴隷のように毎日鑑定だけさせられ続けるのは貴方も嫌でしょう。どちらも使い方に寄っては良くも悪くも働く事をお忘れなく」

 その場にいる全員が息をゴクリ飲むのが分かった。リーンには脅すつもりがあった訳ではなかったが、結果それが危うい能力なのだと理解して貰えたのなら何でも良かった。

「リーン様。《審美眼》を得るには、それに《鑑定》にまで成長させるには何をどうすれば良いのでしょう。《鑑定》スキルを持つ者は国からも重宝されます。それにクラス《錬金術師》には必須とされています。かなり貴重なスキルです」

 リヒトの問いはアリスの為のものだろう。リーンは特に気にする事なく答える。

「まず、《審美眼》は沢山の人と関わって行けば取れます。それも相当な数が必要ですが、《審美眼》だけなら食堂や市場で働く人なら割と持っている人も多いです」

「それなら16歳の成人の儀を過ぎた後に獲得する人も多そうですね…」

「おっしゃる通りです。中々一般の市民が成人の儀以降に再度洗礼を受けたりはしないでしょうから知られていないのも無理ありません」

「では、《鑑定》はかなりの人が持っている物なのでしょうか?」

 リーンは周りの反応を確かめるように静かに首を振る。

「《審美眼》をただ強化していくと《鑑識眼》と言う《審美眼》の強化版になります。《審美眼》のその人の嗜好や考えをだけ読み取ることが出来る。と言うのが《鑑識眼》はに変わるのです。《鑑定》には別の要素が必要になります。それまで通り偏りなく沢山の物や人を見ていくと同時にこの世界のあらゆる物に関しての豊富な知識が必要になります」

「…知識、ですか…。本物を見た事のない人が偽物を見抜けないと言う事ですね…。そして市民はその知識が足りないから、《鑑識眼》になる…と、い、言う事は…《トレース》を持っているアリスは…」

「はい。アリスは卿と共に商売をし沢山の人と関わりながら《トレース》で錬金術の本を見続けさえすればすぐにでも取れます。なので《錬金術師》にも直ぐ成れるでしょう」

 アリスはなんて相性の良いスキルを持ち合わせているのか、と誰もが思ったであろうがこの世界に《錬金術師》が少ないのはこの世界の環境によるものだ。確かに瞬時に記憶できる《トレース》を持っているアリスは簡単に慣れるだろうが、知識を増やすだけなら勉強して記憶する努力さえすれば良いので何とかなるのだ。本来ならもっと居ても良いはずの職業なのだが。

 情報過多により、リーン以外が混乱や酩酊している
がリーンは早くアリスが錬金術師になってくれないかなぁ~、などとまた呑気に考えていたのだった。


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