神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第一章

番外編 恥じらいとは

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 僕はミル。アーデルハイド伯爵家に雇われている私兵であり、忠誠を誓ったリヒト・アーデルハイドに使える侍従でもある。
 そんな僕は先日晴天の空から雷が落ちる、と言うとんでもない物を見た。
 それを起こしたのは可愛らしい幼女…少女だった。

 彼女に出会ったのは任務で赴いた森の中。突然悪魔を倒せるなどと不思議な事を言いだす変わった子だな、とそんな程度の認識だった。そしてあろう事が忠誠を誓った主人が全てを信じた。流石の僕もそれには苦言を呈した程だ。
 しかし、本当に悪魔を倒し、更には雷。思い出しては動悸の様な心の臓の異常な働きに動揺して暫く上手く寝れていない。
 相手は神だか、それを置いといても早く会いたい、見たい、話したい、と次々に欲が出てくる。
 それは単純に彼女の見た目の可愛さだけから来るものでは無く、彼女が持つ落ち着いた雰囲気とクールな部分、偶に見せてくれる幼い行動とのギャップが胸をギュッと締め付けて離さない。
 仕方の無い事だが、主人やジャンに抱っこされている姿は本当に人形のように愛くるしく、いつか自身も、と思うがそれが叶わない事だとも良く分かっているつもりだ。

 いつものように宿前で待っていた彼女を見つけ緩んだ笑顔で挨拶をする。
 
「リーン様、こんにちは」

「こんにちは、ミル様。突然で申し訳ありませんが、少しの間抱えて頂けませんか?」

 そんな事を思っていた矢先のコレだ。
 飛び上がりそうな程に嬉しく仕事中だということも忘れて思わず頬を緩めてしまう。
 何故急にそんな事を言い出したのかは分からない。ただそれよりも嬉しさが増して気になっていたはずがいつの間にか頭の隅の方に追いやられてしまっていた。
 職務怠慢もいいところだろう。

「本日はどちらに向かわれるのですか?」

「いつも通りパン屋に寄った後、少し商店街の方に寄って頂きたいのです」

 そう言えば今日は少し雰囲気が違う。
 いつもの清楚な感じの衣服では無く、今日は少し子供っぽい。ピンクのドレスにはリボンやレースがあしらっていて可愛らしい顔にとても似合っているが、彼女のクールな部分を知っている僕からすれば、当然違和感を感じるし、いつもなら絶対に選ばないと言う事も何となく分かる。
 なら態々それを着て来たのには何か訳があるのだろうと勘ぐる。

 その後予定通り、パン屋に寄る。
 いつもなら、買い物中は外で待機していて彼女が噴水広場辺りまで来ると手招きをしてくれるのでパンを受け取る。それがルーティンだった。
 それが今日は違った。
 彼女を抱っこしたままパン屋に行き、噴水広場まで来て仲良くパンを叩き始めた時、黒髪の男が突然目の前に現れた。
 そしてさも当然のように楽しそうに話し始めた。(楽しそうだったと言うのは彼の主観です)
 相手は仕切りに此方を警戒していて常に剣に手をかけたので、思わず剣に手をかけるが彼女は何も言わずにただそれを見ていた。

「リーン様…大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ」

「私が街までご案内しましょうか?」

「カートのお仕事は終わったのですか?」

「…終わりました」

「終わってないのですね」

 その黒髪の男はそう言われると特に何もなかったかのように笑いもしなければ怒りもしない無表情のまま別れを告げて帰っていった。
 彼の事を聞くかどうか迷っていた時。

「彼は騎士団の方です」

「…騎士団の…」

 あの黒髪の男は確かに只者ではないオーラを発していた。あまつさえ2人よりも自分の方が彼女を守れるとでも言いたげな態度だった。

「商店街楽しみです」

 不機嫌な僕はその言葉に途端に笑顔になり、気持ちを商店街へ向けた。

 目を離さなくてもよく声の掛けられる彼女は目を離す暇がない。でも今日は自分の腕の中で大人しくしている。何と言う優越感だろう。
 商店街について早々何故か下ろしてと言われ、しぶしぶ下ろしたのだが、これまた不意をつかれたように彼女はその小さな手で僕の親指を握ったのだ。
 これにときめかない訳がない。
 親指に感じる程よい圧と暖かさ。
 勿論普段余り表情の動かないジルもこれには心打たれたようで頬をほんのり赤く染めながら彼女を見つめていた。

「…お二人とも、話しを上手く合わせてくださいね?」

「「…え?」」

 そう笑顔で言うと彼女は近くにいた女性の服をツンツンと引っ張る。
 途端に感じなくなった圧と熱に寂しくなる。

「ねぇねぇ、おねえさん。“ハッコウ”はくだものでできるってママがいってた!ね?にぃに?」

「「…う、うん!言ってたね!」」

 にぃに。何と良い響きだろうか。
 ただ少し無理が無いだろうか、と冷静に考える。軽装備ではあるがとても私服には見えないだろうし、まず兄弟に見えるわけが無い程に容姿がかけ離れている。

「あら、そうなの?お嬢ちゃん物知りねぇ!良い子にはお姉さんがピートひとつご馳走しようかな?」

「ほんとー?うれしい!私これだーいすき!」

「すみません。ありがとうございます」

 突然の出来事に動揺を隠せない。
 ジルが頭を下げるのに習うのが精一杯だった。
 甘えた声を出すリ彼女は勿論彼女なのだが、余りにも普段の雰囲気とかけ離れた姿なのに寧ろこっちの方がしっくり来るのはやはり今までが大人過ぎたからだろう。

「あら、良いのよ!とっても良い事を聞いたのだから」

「おねえさん。そういえばママがね“ハッコウ”にこれ使ってたよ!」

「え!そうなの?ピートで良いの?それは安上がりだわ…。今までプルーを使ってたから大変だったのよね…」

 ぶつぶつと何か考え始めたお姉さんは自分の世界だ。

「にぃに、お腹すいた!アレ食べたい!」

「はいはい、危ないから手は繋いでね」

「はーい!」

 なりきるジルは流石だ。諜報に特化している彼は潜入調査時には変装もする。
 元気よく返事した彼女が再び親指を握って歩き出す。もう頬は緩みっぱなしだ。

「すみません、こんな事にお付き合い頂きまして」

「「…いえ、寧ろ役得と言いますか…」」

「…?」

 何故こんな事をしているのかを聞く事も忘れて、またやってくれないかな、などと思っていたのだった。


 翌日。
 
「まだ、起きてらっしゃらないぞ」

「んー、だろうな」

 軽く背伸びをしながら受け答えする。
 もう今更もう一度寝る、何て事は流石に難しそうだ。身体は疲れているし、欠伸も出る。それでも欲の方が優ってしまい、もしかしたら早めに目覚めるかもしれない、と思ってしまうのだ。

「最近寝れてないだろう」

「リーン様の事を考えると如何も…」

「…おい、ミル。相手は神で信仰の対象で存在そのものが神秘で更に幼女なのだぞ?!お前、分かってるんだろうな…」

「分かってるよ。そうじゃなくて、いや、そうなんだけど…」

 はぁ、とため息をついたジャンに対して同じくため息を返して、バタンと再び布団へ倒れ込む。
 これは一体如何言う感情なのか全く分からない。尊敬、まぁそれもある。神だし、信仰してるいるし。ただそれだけなのかと聞かれれば多分違う。絶対的違うのは会いたい、見たい、話したいと言う欲求の他に“触れたい”と思っているからだ。
 誤解のないように予め言っておくが、僕はロリコンじゃない。絶対に違う。これだけは信じて欲しい。
 可愛い、美しい、凛々しい…色んな言葉を使っても彼女を言い表す事は出来ない。

「なんて言うのかな、妹…娘?みたいな…何か放って置けないと言うか…昨日も…」

「その話はもう聞いた」

 昨日の役得話は既に3回した。
 交代の時にジャンに、報告の時にリヒトに、休憩中にログスに。何回話しても伝えきれない。そんな気分なのだ。
 昨日昼頃、彼らが護衛の交代を引き継いでいる時、リーンはパン屋にいた。おばさんのお勧めを買うのもそろそろ日課のようになっていて、外を歩くのもかなり慣れてきていた。

ーーコンコンッ

「…おはようございます」

 ノックの音を聞いて扉を開けたジャンに目を擦りながらリーンが言う。

「おはようございます。リーン様」

「おはようございます!」

「あの今日はお昼まで寝ても良いですか?」

「勿論です。リーン様のお好きな様に…ってあぶなッ!」

 コクリ、コクリと頭を揺らしていたリーンはそのまま部屋に戻る前に事切れたのだ。

「…はぁ、良くやったな、ミル」

「僕は素早さが売りですから」

 咄嗟に動いてくれた身体に感謝だ。滑り込んだ時に少し両膝を擦りむいたがリーンに怪我がない事の方が重要なのだから勲章だ。
 リーンを寝かせるために部屋に入る。勝手に入るのは良くないが、自分達の部屋に寝かせる方がもっと良くないので、ここは許して貰おう。
 特に物も無くこざっぱりした部屋がリーンに似合わない。
 机の上にはよく分からない文字で色々書かれていて勿論読む事は出来ない。
 スヤスヤ眠るリーンに肩までキッチリ布団をかけると静かに部屋を出た。

 昼まで寝る発言通りお昼過ぎには着替えて出てきたリーンにいつも通り着いていく。
 今日は抱っこも手を繋ぐのもなく。ただひたすらに後ろをついて行くのみ。

ーービタンッ

「リーン様!!!」

「…大丈夫です」

 盛大に転んだリーンは汚れてはいるが怪我はない様で痛みから目には涙が浮かんでいる。(痛くてではなく恥ずかしくて)

 ジャンと僕は慌てて泥を払う。

「ジャン様、ミル様。…みんなにはナイショにして下さいね?」

「「勿論で御座います」」

「すみません。今日も抱っこ良いですか?」

 昨日の抱っこの理由はこれか。
 彼女は転ぶ恥ずかしさと抱っこされる事を天秤にかけて抱っこを選んだのだ。
 少し大人ぶりたい年頃なのかも知れない。
 いや、神はそんな事考えないか。

 とにかく2回目の役得話は誰にも話す事は出来ないけど、それはそれで良い。もうこの感情が何かなんてどうでもいい。僕はただ彼女の側に在りたいだけなんだ。











 
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