神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第二章

使用人の1日

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 使用人の朝は早い。主人が起きた時には全ての準備を整えている必要があるからだ。使用人頭であるレスターはとても厳しいがその全てがリーンハルトの為なのだから厳しいのは当たり前だと少年少女全員が認識している。
 当然文句が出る事も辞めたがるものもいない。
 ここはこの国で1番働き甲斐がある。王宮で働くよりもずっと価値のある場所だ。
 
「兄さん起きてる?」

「あぁ。他のみんなも揃ってるか」

 子供1人1人部屋与えられるなんて、当たり前な訳がない。王宮でさえ4人1部屋だと自慢している奴を見た事がある。普通のお屋敷では大体大部屋かこの部屋に2~3人詰め込まれるのだ。

「皆さん、揃ってますね」

「「「「はい」」」」

 そんなお屋敷も今日から一変する。昨日新しく使用人や職人を大勢雇い入れたからだ。
 勿論部屋は1人1部屋のままだ。

「リーンハルト様からメイド長の任を仰せつかった、ミモザと申します。兼任でリーンハルト様の専属メイドもこなします。本日より宜しくお願いしますね」

 ミモザと名乗った女性は20代後半くらいでメイド長としてとても若いが、此処で働く使用人の平均年齢がかなり低いため、ミモザは此処では若くない方になる。

「秘書兼使用人頭のレスター様はリーンハルト様に常に付き添われておりますので、屋敷の業務全般は私が回させて頂きます」

「今日からの方が多いので始めに軽く自己紹介をしましょう。ではカールさんからお願い出来ますか?此処では皆さんが先輩になりますから」

「メイド長。お気遣い頂きありがとうございます。ですが、私達はリーンハルト様に皆さんより少し早くお会いできただけの事。仕事は皆さんの方が詳しいのです。私達は主人にお仕え出来る、それだけでいいのです」

 カールの言葉に集まっていた使用人全員が感心する。
 彼らはほんの数日前までは大人を憎んでいた。自分達を捨てた親。苛立ったからと子供でも容赦なく暴力を振るう勝手な大人。死にそうになっていても見て見ぬふりする大人。彼らに手を差し伸べてくれる人は全く居なかった。
 そんな時に声をかけられて、食べ物を与えられ、また明日と声をかけられた。信じられなかった。
 それだけでも信じられないのに、次の日本当にまた現れた。そして屋敷に来ないか、と誘われた。
 勿論みんな初めは疑っていた。でもそれ以上に飢えていた。嬉しかった。
 そうして向かい入れられて、カールが照れ隠しに言い放った悪態ですら見抜かれて、受け入れて、撫でられて、抱きしめられて、沢山の優しい言葉を掛けられた。

 未だに大人は信じられない。ただ、彼らだけは違う。屋敷に招き入れられた使用人達も同じ境遇の者や底辺を這いつくばってきた者、然程歳の変わらない若者ばかりだ。
 彼らがそんな自分達を思って揃えた人材では無くとも感謝しか出てこないし、彼らが選んだ人材なら…と思うのだ。

「そうですね。私達はとても恵まれています。これまでの人生、其々辛い経験もあったでしょう。でも今日からはリーンハルト様に快適にお過ごし頂けるよう精一杯努めましょう」

 その後、軽い自己紹介を済ませて準備に取り掛かる。

「今日は“お客様”はそんなにいらっしゃらないとレスター様に伺っております。其方の準備はカール、ラテ、ストックにお願いします。キールとモニカはリーンハルト様のお部屋周辺のお掃除から始めてお目覚めのお出迎えをレスター様と共にお願いします」

「「「「「はい」」」」」

「えー、それからランドン、シャシャは、大広間……」

 メイド長ミモザの指示通り皆んな其々の持ち場に散開する。

「モニカ行こうか」

「うん。ハルト様のお部屋綺麗にだね!」

 キールはモニカと手を繋いで大広間から階段を上がり、リーンの部屋へ向かう。まだまだ起きるまでには時間があるので応接室や休憩室などの掃除をテキパキ済ませる。

「キール、文句言わなくなったね」

「うーん、そうかも。プライドも何もハルト様は何も気にされないから」

「んー?」

「モニカもいつか分かるよ」

「うん!」

「そろそろハルト様も起きる頃だね。お部屋の前で待っていようか」

 部屋の前に着き、身だしなみを軽く整えて背筋を伸ばす。
 相変わらずハルトの部屋からは物音ひとつしない。そして、タイミングを測ったかのように直ぐにレスターと共に部屋から出てくる。
 今日もいつも通りだ。

「おはよう御座います。ハルト様」
「おはよ、ございます。ハルト様」

「キール、モニカ。おはよう」

「キール。今日は重要なお客様が来ることになったとメイド長に伝えてくれ。内容は話してある」

「畏まりました。レスター様」

 モニカと共にハルトとレスターが見えなくなるまで深々と頭を下げる。
 レスターの言いつけ通りメイド長が担当する在庫部屋に入り声をかける。

「メイド長。レスター様からご伝言を賜りました」

 メイド長は、鏡のような物に何か文字を書き留めていて、モニカと共に不思議がる。

「レスター様からですか」

「はい。何でも重要なお客様がいらっしゃるとの事でした」

「まぁ!それは大変!キール、モニカ。カール達を温室まで呼んできて頂戴!」

「「はい!」」

 気遣いのメイド長が慌てる様にはとても驚いた。
 キールとモニカはレスターに言われた通り屋敷を走る事はないがついつい足早になり、みんながいるホールへ向かう。

「メイド長が温室に集まって欲しいって」

「こっちの準備は終わったから、カールは門に向かったわ。でも何故温室に?」

「重要なお客様が来るらしい。兎に角急いで」

「お客様…!」

 それだけ聞くと、ラテもストック慌てて2人について行く。温室に向かう途中で門の前で静かに佇むカールにも声をかける。早足で向かい光がいっぱい降り注ぐ温室の扉を開ける。そこには見知らぬ男性2人と女性2人がミモザと話していた。

「先生方、此方が授業をお願いしました生徒達です。宜しくお願いします」

「こんにちは。私は植物の研究をしているビル・コンラッドだ。キール君はどの子かな?」

「は、はい!僕です」

「私はマナー講師をしております、メイシャン・ルーと申します。ラテ、モニカ、頑張りましょう」

「「はい!宜しくお願いします!」」

「では、次は私が。剣術の指導者として呼ばれたスイと言う。カール覚悟は出来てるな?」

「はい!勿論です!」

「最後になってしまいましたね、ストック。加工職のミューズです。アクセサリーや陶器、ガラス細工まで色んな加工に携わっているから授業楽しみにしててね」

「よ、宜しくお願いします」
 
 今まではイアンやレスター、時間のある時はリーンが文字や体術、最低限の礼儀作法などを手分けして教えていた。でもこれからは専門的な勉強もできるようになる。なりたい者になれる。流行る気持ちを抑えきれない。

「申し訳ありません。少し遅れてしまいました。先生方宜しくお願いします」

 先生方はリーンに一礼する。そして子供達も更に深いお辞儀をする。沢山の感謝の気持ちを込めて。

「先生方は週3回勉強を教えに来てくださいます。スイ様はお屋敷の護衛騎士としていらっしゃって頂きました」

 大人顔負けの使用人をしていた子供達の輝かせた目にリーンも満足する。無事先生方との顔合わせも済み、授業は明日からと言う事で子供達はウキウキと持ち場に戻った。

「あんなに嬉しそうに。子供達が羨ましい限りです」

「ミモザも習いたい事が有れば遠慮なく言ってくださいね」

「いえ!私はお仕事を頂けるだけで充分過ぎるほど幸運です。ハルト様の専属メイドとして精一杯努めます!」

 リーンは少し遠くを見つめて静かに言う。

「ミモザ。確かに私は貴方をメイド長兼専属メイドに指名しました。責任感があるのは大切だと私も思います。でも初めにお話しした様に1週間のうち2日はお休みです。貴方は前のお屋敷で刺繍を褒められたそうですね。他にも色々聞いておりますよ?」

「…ハルト様。…ありがとうございます」

「レスター。手配宜しくね」

「直ちに」

 リーンの変わらない表情は一見クールに見える。ただ、ミモザは気がついた。クールとは程遠い呑気な心の内に。そして感謝の意を込めて深いお辞儀をした。



 
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