神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第二章

タオルとポケットコイル

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 新しく使用人を招き入れてから数週間。漸く、屋敷も落ち着いてきた。使用人が雇われたと知った門前の人だかりも徐々に減って行き、今ではスイとイアンが見回りと門番をしているからか1人も居なくなった。

 そして、落ち着いて来たと同時にリーンの生活も快適になって来た。雇い入れた職人達がリーンの要望通り次々と開発してくれたからだ。

 その中でも気に入っているのはタオルだ。被服師のアリアは目が悪いから仕事が雑になった、と言いがかりをつけられて減給され、辞めようとすれば、店の主人は物を盗んだり、暴言を吐いたりする厄介者だと噂を流がし、少ない賃金で無理矢理働かないと行けない状況にさせていた。
 そんな時に舞い込んだ屋敷での仕事に期待を寄せていて、面接にも一番乗りした程だった。リーンからのアイディアは被服師の彼女からすれば専門外にも思えたが、彼女のやる気は凄まじく、今までの鬱憤を晴らすかのようにタオルを僅か2日で完成させたのだ。

「ハルト様。タオルを更に使い心地が良くなるよう改良してみました!ご覧下さい!」

 以前のものからどう工夫し、どう改良したのか語る彼女はとても楽しそうだ。
 
(これは…極上、ふわふわだ…)

 この様な感じで毎日何かしらの品物がリーンの書斎へ運ばれてくるようになった。

 勿論ポーションも薬草が採取されたその日に完成した。品質もかなり良く、温室で育てた薬草でも特に問題は無さそうだった。欲を言えば温室を少し広げたいところだが、キールの負担を考えると今はその時ではない気がする。

「ハルト様!やっと完成しました!」

 この巨漢の男はサーベル。その大きい体に似合わず彼のクラスは【細工師】だ。
 彼には以前より構想していたポケットコイルのコイルをお願いしていた。

「以前は銅を使って作ったのですが、やはり硬さが足りず潰れて戻ってこなかったので、今回は硬い“バネ”なる物を鋼で使ってみました!少しコストはあがりますが…お試し下さい」

 サーベルは四角い箱に詰められたバネの上にクッションを置きリーンに手渡す。リーンは言われるがままにそこに座る。

「サーベル、よく出来ました。これは完璧です。レスター、アリアを呼んできて貰えますか」

「畏まりました」

 レスターが出て行くと、完成した喜びでサーベルは涙を流す。

「サーベル。無理を言ってすみませんでした。ゆっくり休んでください」

 突然泣き出したサーベルにリーンは心配の声をかける。鼻をずるずると啜りながら大粒の涙を流すサーベルの声だけ聞いていれば誰も大男だと思わないだろう。
 彼もこの体格でかなり苦労して来た。
 彼の夢は細工師。しかし、体格が良いため両親は給料が良く、食いっぱぐれない衛兵や騎士を進めて来た。元々裕福な方ではなく両親の為一度は夢を諦めて衛兵になった。
 しかし、争いを好まない性格と体格の良さが災いし、更には不景気が追い風となり、ストレスの捌け口に兵士仲間から強いイジメを受けた。
 初めは、物を盗まれて使用する日に持ってこなかった事で上司に叱られるくらいの小さな悪戯だった。しかし、味を占めた仲間達は行為がエスカレートし、終いには水に頭を押し付けられて彼は死にかけたのだ。
 不景気の中、彼の稼ぎを当てにしていた両親は彼が兵士を辞めることを反対し、息子が死にかけたのにも関わらずその程度の事で辞めるな、と彼を罵った。
 苦しくても辞めに辞めれず1年が過ぎた頃、リーンからの手紙を受け取ったのだ。少ししか文字が読めなかった彼は両親にも仲間にも頼れず、ラテに教わりながら涙を流して手紙を読んだそうだ。

「ハルト様、すみません。…違うのです。私は両親を捨てる覚悟でこのお屋敷に来ました。同僚や両親から受け続けた耐え難いほどに辛い日々から抜け出せただけではなく、夢を叶えて、そして今日ハルト様に任された仕事を成し遂げて、更にはお褒めの言葉まで頂いたのです。これは嬉し泣きなのです」

 リーンはそっと彼の頭を撫でる。大きな体を縮こまらせている彼は涙を止める事が出来なかった。
 それからアリアが来て泣きながらもポケットコイルについて話し合うと言って部屋を後にした。

「まっとれす?が完成するのですか?」

 レスターの辿々しい言い方に少し驚く。

「そうですね。2人にもしっかりと休んで欲しいのですが、どうもこの調子だと3日くらいで完成してしまいそうです」

「そういえば、先程ベンウィックスとエマが“べんざ”が完成したと騒いでいました。そろそろ…」

「「ハルト様!!!」」

「ベン、エマ。お疲れ様です」

 先程とは打って変わってソワソワした2人が溜めに溜めて、まるでジャシャーンッという効果音がつきそうなほど勢い良くリーンの目の前に白い大きな物体を突き出した。

「ついに!つ・い・に!!!完成しました~!!」

「べんざです!如何ですか?この凹凸が一切ない滑らかな肌触りは~!!」

「さすがベンとエマですね。完璧です」

「レスター何度もすみません。ジェシーを呼んできて頂けますか?」

「そろそろ来ると思います」

ーーコンコンッ

「どうぞ」

 レスターの言う通りノックして入って来たのはジェシカ・フィルマーク。少し堅苦しい所はあるがそれも彼女のいい所だ。

「レスター様に呼ばれて参りました。べんざが完成したとか」

「はい。完成しました」

 ジェシーは【魔回路師】と言う少々変わったクラスの持ち主だ。彼女の作る回路は言わば配線の様な物で、少量の魔力でも大きな力を発揮するように出来る。同じような【魔道具師】と言うクラスがあるが、その違いは【魔道具師】は1系等の魔力しか付与できない。反対に火と水、水と雷、火と油の様に通常、反発し合い相容れない物同士を掛け合わせ、混ぜ合わせる事の出来るのが【魔回路師】なのだ。
 彼女を街で見つけた時、トイレを作ろう!と思ったのは言うまでもなく。
 リーンがトイレの仕組みを知っていれば問題もなかったのだが、仕組みなど知るはずもなく。

 ・水がぐるぐる回って排泄物を流す
 ・水が入ったタンクがある
 ・圧力で水を押し上げる
 ・座れる形
 
 と何となくを伝えてみたのだった。

 彼女はその一風変わったクラスの使い方を理解できず燻り続けた。【魔道具師】だったならば需要があり、王宮からの依頼などもあるため職人の募集は常にある。【魔回路師】はその上級クラスなのだが、16歳でそこまで至る事は少なく、知られていないため受け入れられなかった。
 ジェシーの家はフィルマーク家と言う男爵家で裕福な暮らしをしていた。子供の頃から大人しく淡々とした話し方をしていたジェシーと対照的な器量も愛嬌もある可愛らしい妹。
 両親の愛情は妹だけに一心に注がれていた。
 そんなある日、大事にしていた両親から貰った唯一プレゼントの髪飾りを妹が欲しがり、拒否すると妹は両親に泣きつき、そして両親を使って髪飾りを奪っていった。
 深い悲しみにより揺らいでしまった感情のせいでジェシーの多すぎるマナが暴走し、溺愛されていた妹を傷つけた。それがキッカケで体裁のため追い出す事はなかったが、まだ4歳だった彼女を使用人以下に扱った。当然使用人達も主人に愛されない彼女を見下し痛みつけた。
 それでも彼女は耐え、マナのコントロールの練習を繰り返し、勉学にも励んだ。“魔”の付くものなら何でも吸収して、九節12年で【魔回路師】となった。
 やっとの思いで抜け出せたのは成人になった16歳だった。希望を持って仕事を探したが【魔回路師】は受け入れられなく、もたされた金は底をつき、とうとう貴族の令嬢から路上生活者にまで落ちてしまったのだ。
 路上生活も3年が過ぎた。彼女は壊れた魔道具を格安で直したりして何とか生活して来た。そんなある日偶々前を通りかかって落とし物を拾ったと言う偶然の縁でリーンに雇われる事になり【魔回路師】としての生き甲斐を見つけたのだった。

「以前お借りしたべんきに魔回路は組み込み済みです。べんきにべんざを取り付ければトイレが完成するでしょう。それと、1つ。如何もべんきを触っているとあの冷たさが気になりましたので、保温も足しときましたので悪しからず」

「さすがジェシーですね。アリアに頼んで便座カバーを作ろうかと思っていたのでとても助かりました。いつかウォシュレットも出来たら良いですね」

「うぉ、しゅれ…と????」

 ジェシーは淡々と喋り、流暢に説明したと思えば、返事はコクコクと頷くだけで、それ以上は喋らない寡黙な子だ。
 反対にベンウィックスとエマは夫婦で2歳の子供がいる。彼らは2人で自作の器や花瓶などを販売する雑貨店を営んでいたが、この不景気で嗜好品となった雑貨は売れず、貯金を切り崩しながら生活していたが、家賃と税金がかさみ、店は手放す事になった。此処に来た時には2人とも痩せ細り、ベンウィックスはろくな食事も取らずエマを何とか支えて来たが、とうとうエマの母乳が出無くなり2歳になったばかりのフレディは衰弱していた。
 そんな最中手紙を受け取り、彼らは僅かな希望を持って屋敷を訪れ、フレディが落ち着いた事により元気を取り戻した。 
 彼らの明るさは周りをも明るくしてくれる。素敵な夫婦だ。


 沢山の人に囲まれてリーンハルトとしての生活が着実に素晴らしいものに変わっていった。
 



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