神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第二章

商会設立に向けて

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「おい、親父!もう出来たか?」

「おいおい、にいちゃん。毎日そー言いに来られてもよぉ。4階建の建物がたった1週間で出来るわけねぇーだろうが」

「んー。でも、早く作ったら追加で報酬出すって言ってたのになぁ。えーと、幾らだっけ?1日大金貨1枚だったか?」

「…おいおい、そうゆう事はもっと早く言えよ。…おい。おめーら、3日で、いや!明日には完成させるぞ!いいなッ!」

「「「「へい!」」」」


 ーーーイアン、貴方の能力を買って頼みたい事があります

 そう言われたのが1週間前。
 リーンから頼まれたのは商会の設立だ。
 一口に商会を作ると言ってもそう簡単に出来るものではない。土地、建物、商人ギルドへの登録、人材の確保…やる事は山程あるのが現実だ。

「んじゃ、宜しく」

 そう言うと、ひらひらと手を振って踵を返す。
 とりあえず、土地、建物、商会登録は早々に済んだ。後は人材とその教育だ。
 人材の確保はかなり難航していた。イアン自体を怖がる人が多いのもあるが、彼の目が厳しいと言うのが1番大きい。
 やる気問題が1つ。リーンへの醜い恋心や嫉妬心を持っていたり、お酒や金にだらしないような人材は要らない。次に盗みや横領などの裏切りをしないか。そして何より見た目。小綺麗にしてるかなどは如何でも良い。そんなのは後から如何にでもなる。しかし、外見の美醜は正直如何にもいかないのが現実だ。
 この数日で候補者を選んだ所だが、頭にチラつくのはリーンとレスターの顔だ。偶々なのだろうが、初めに連れてきた使用人の子供達もかなり美しい容姿をしているし、その他に集まった職人や使用人達も種類は違えど、なかなかの粒揃いだ。基準が高くなるのも致し方無いと言えなくもない。
 勿論、路上生活者もいたし、死にかけの者もいた。しかし今では皆、リーンの指示で栄養のあるものをお腹いっぱい食べ、伸び切った髪や傷や怪我、病気を治して体調を整え、アリアが腕を振った最高傑作である制服や作業服は勿論の事、普段着、靴、小物に至るまでデザイン性はかなり高く、それでいて機能性も兼ね備えた素敵な衣服を与えられている。
 更に皆んなリーンが神示から選んだ選りすぐりの人材であるのは言うまでもなく。
 だからそこ、優秀でありながら美しさも求めてしまう。正直、イアンの目は肥えてしまっているのだろう。
 かと言ってリーンまでの美しさを求めていては、従業員を採用する事など到底不可能に近い。兎に角、明日の建物完成までに選りすぐりの精鋭10人程度は決めてしまいたい所だ。

「こんにちは!おじさん今何してる?」

「わ、私ですか?」

「うん!そうー、私!」

「その…そろそろ店仕舞いする所でして…」

 じーい、と顔を見つめられて数歩後ずさる店主。イアンのお眼鏡に叶った候補者の1人シュミットだ。

「回りくどいのは得意じゃないから単刀直入に言うけど、店うまく行ってないでしょ?」

「…そうですね。お恥ずかしながら立退も迫られておりまして…潰れかけ、でしょうね」

 シュミットは気弱そうな下がった眉に同じく下がった目尻がとても優しそうな印象のおじさま。スラッと長い足。年季の入った良く磨かれた革の靴。シワひとつない3ピースの一張羅。所謂イケオジだ。

「じゃあさ、俺のボスん所のてんちょ?やってみない?」

「その、てんちょ?と言うのはどう言うものなのでしょうか?」

「んーと、説明するの面倒だから、これ読んでくれる?」

 そう言って渡されたのは、丸められた高級な羊皮紙。イアンの様子を伺いながら結び目を解く。

「…金勘定、上客への接客、クレームの対応…えー、要するにボス様の商会の責任者という事なのでしょうか?」

「ん、そういう事!たぶんなー?勿論だけど商会長はウチのボスな!んで、その指示を受けて頑張るのがアンタね!」


「そんな大役を私などがさせて貰えるのですか…」

「な!良い話だろ?んーと、まぁーボスには見せないとだからー、あーでもこれから他の奴にも声かけてー、んー、あ!そうだ、これ!此処に書いてある所に行って!」

「…これは」

 渡されたのは丁寧な字で名前や所在地、商会名などが書かれた小さな高級紙。絵なども添えられていて初めて見るが素晴らしい物だと理解した。

「それね、うちのボスがくれた奴ね。“めいし”って言うらしい」

「めいし、ですか…」

 んじゃ!と言って颯爽と消えていくイアンを少しの間、ボーと見つめる。少し肌寒い風が頬を撫で身震いする。
 外に出していた看板を軒先に片付けると、貰った“めいし”をじっと見つめる。
 道行く人たちが話す噂。男であろうと目を奪われる絶世の美男の大貴族がいる、という話はシュミットも何度も耳にした。潰れかけの薬屋を営むシュミットもこの時代の大波に晒されていて、客足は減る一方。主力商品は勿論ポーションだった。
 王城に召し上げられた事で店にポーションが無くなった今、自慢の技能《接客術》はもう何処にも披露する事は無いのだろう、と嘆いていた。
 そんな最中に盗み聞いた、貴族の使用人と言う大きな働き口。大貴族ならそれなりの給料も望める。妻に先立たれて、男手一つで育ててきた娘を独り立ちさせるためにも、後1年は何としても稼がなくては、とシュミットも何度か屋敷の前に足を運んだ。
 しかし、一向に姿を表さない幻の美男。募集もかかる事なくあっという間に屋敷の使用人は決まっていた。
 そして今何故募集が無かったのかを理解する。

(あの人が選んでいたのか…)

 想像に容易い。男も見惚れるほどの美男だ。街中を出歩けば大騒ぎになる。募集を掛けようにもこの街は荒廃の真っ最中で誰もが職を探しているし、あの容姿で金持ちならば、例え罪を犯そうとも一か八か、あの手この手で手に入れようとする輩も必ず出てくるだろう。ならば信用に足る者を何らかの方法で選定し、使用人するのが1番なのだ。

 そして、自分が選ばれた。しかも、重役と来た。自分が何をして評価を貰えたのかは分からないが、何か信用できる要素を見出して貰えた。
 諦めかけた矢先の幸運に年甲斐もなく胸が躍る。
 貰った“めいし”を大事に3ピースの内ポケットに仕舞った。

「次は“うけつけちょ”だな!」

 そんなシュミットを置いてけぼりにした後に向かったのは2人目の候補者の所だ。
 もう誰も住んでいないボロボロの平家の生垣にその人物は座り込んでいた。本人も勿論ボロボロで今にも魂が抜け落ちるのでは、と思うほどに生気が感じられない。虚に一点を見つめるその目は焦点が合っていない。

「もしもし、聞こえてる?」

「…誰」

「仕事をくれる人」

「…」

 案の定警戒の色を示すが、睨みつけるだけの体力もないのか、視線は一点を見つめたまま変わる事は無い。

「やって欲しいのは、“うけつけちょ”って奴。店の案内とかする人らしい」

「…うけ、何ですか、そんな職業聞いたことないです」

 掠れ紡がれた言葉は興味を示している。生きる気力は明らかに失っていた筈だ。

「それはボスに聞いてくれる?お腹すいて動けないならさ、コレやるから」

 イアンは腰の革バックから“惣菜パン”を取り出し、彼女に差し出す。震える手はなけなしの力を振り絞りパンを掴む。

「それな、俺のお気に入り“からあげパン”だけど、仕方ないよな、リーンからの仕事だから」

 そそられる香りに周りの目も食べ方も気にする事なく齧り付く。久しぶりの満たされる感覚に溢れて止まらない涙の塩気が口に広がる。

「んと、じゃあここに行ってね」

 イアンはまた名刺を取り出して渡す。
 涙を拭く袖はない。涙も鼻水も垂れ流しのまま大きく頷いた。

「さて、次行くかー」

 リーンとの会話を思い出しながら、イアンは軽く身体を伸ばす。

 ーーーどこを選び、どんな建物で、誰を雇うのか 全部自由にイアンが決めてください

「ん。自由って何かわかって来たかも。あーそこのにいちゃん、“どあまん”やらない?」

 猛獣の影を隠す。
 自分で考え、行動する。自由を手に入れた、イアンはそんな気がした。
 初めは歩くのも、馬車に乗るにも、ご飯を食べるにも人の手を借りているのに、慰め、指示し、時には頭を撫でる。不思議な存在。それを何となく肌で感じ取っていた。
 旅に誘わられた時は特にする事もなく、信用を置くレスターの存在とそのレスターが羨望するリーン。今までは生きて行けるなら何でもよかった。でも、頭を撫でられ、褒められた時のふわふわとした新しい感情。嬉しい、もっとして欲しい、求められたいー普段はそんな感覚を持った事がなかったので、このふわふわした感情を理解出来ず、イアンは少し戸惑っていた。

 なので一緒にいてみることにした。
 街に着いた時に回った露店、ツアー、ケーキ。どこにいくのも“自由”だと。またふわふわした。
 路地にいけ、と感が叫ぶ。感は子供と引き合わせた。リーンが喜んだ。またふわふわする。
 次はいつふわふわ出来るのか。
 欲しい、ならまた喜ばせればいい。

「ほい!コレ持ってれば大丈夫だからさ~」

(コレは喜んでくれるのかな。何したら喜んでくれる?)

 楽しそうに笑ってまた次へ、次へ…ふわふわの為に。

 
 

 

 
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