神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

ree

文字の大きさ
106 / 188
第三章

神の声

しおりを挟む


 沢山の人々が行き交う港町。大型船が開発されたばかりだと言う事もあり、漁業関係者や交易、貿易、船乗り人以外が海を渡る事はまだまだ珍しい。
 勿論それだけ危険であると同時に唯の帆船では航海するには日数も労力もまちまちで貴族でさえも嫌がるからだ。
 よって大陸同士の関わりは今のところはほぼヴェルスダルムからの一方的な監視行為だけだろう。
 船乗り達がエルムダークで仕入れてきた物を船から運び出す作業で大忙しの中、少し足場の悪い板をゆっくりと降りる。
 沢山の視線がチラチラと送られているが、決して近づこうとはして来ない。一瞬でも動きを止めると近くの者が引っ叩き、正気に戻らせる。

「いい雰囲気ですね」

「アポロレイドール様にそう言って頂けて大変光栄に御座います」

 久方ぶりに地面に足をつけて早々に明らかに漁港関係者では無い、ビシッと極め込んだ人達がリーン達を出迎える。
 リーンを要人警護かのように取り囲んでいたレスターやイアン、スイ達がスッとリーンを隠すように前に立ち並ぶ。リーンの手を引いていたミモザはリーンを自分の前に出して背後を固める。
 少しでも人々が押し寄せないように、と深々と被らされた鍔の広い帽子はまるでハリウッドスターかのようでリーンは周りの様子をしっかりとは確認できなかった。ただとにかくこの帽子が恥ずかしく思っていた。

「主人から護衛兼案内役を仰せつかりましたポートガス伯爵家当主クロード・ポートガスで御座います。此方にいる、セントフォールは私の倅で御座います」

「お前本当に貴族だったんだな」

「信じて無かったんですか?!」

 少し膨れっ面のセントフォールは勿論可愛らしい。クロードは強面なのでセントフォールは母似なのだろうと推測できる。

「主人は首都におりますので、また暫く移動となります。宿をご用意しておりますので、本日はゆっくりとお休み頂ければと思います」

「素早いご対応痛み入ります。しかし、リーン様の安全が確保出来ない様な場所でしたら困りますので、先に確認をさせて頂きます」

 レスターは感謝を述べつつも少し挑発的な言い回しで、イアンと使用人、職人達は荷物を持って当たり前のように案内役を引き連れて宿屋まで先にスタスタと進んで行った。まるで予め決めていたかのようだ。先程まで寝込んでいたなどとはとても思えない。

「イアンが護衛しやすい建物の構造があるので、彼に見てもらうのが1番早いのです」

「任せます」

「ありがとうございます」

 ミモザとレスターが見つめ合ってる。(睨み合っている)リーンはこの船旅の間何度も目撃し、2人はやっぱり仲良しだ、と思うのはやはり何処かズレているのだろう。決して2人は仲良しではなかったように思う。

「この街は何が有名なのでしょうか?」

「此処、バロッサは港が近い事もありまして、新鮮な海産物が自慢で御座います。他にも【錬金王】がお作りになった大型帆船を初めとした発明品が沢山見学できるのもあり、ヴェルスダルム有数の観光地です」

 初めに挨拶をしたセントフォールの父、クロードはその強面の表情とは裏腹にとても優しい笑顔で話してくれる。なんだか心地よい安心感を与えてくれる人だった。
 当たり前のように周りをうろちょろするセントフォールからリーンを護るように立ってくれているし、説明はひとつひとつがとても丁寧で分かりやすく、それでいて簡潔で如何にもリーンの好きな人種だ。
 それを分かって彼を遣したのなら中々出来た主人だ。
 今はレスター、ミモザ、スイ、カール、アンティメイティア、支店長達を連れているが、他国とは言え貴族であるクロードとの会話中なので皆一歩引いたところにいる。
 単にこれが彼らが優秀な人材だからとは言い切れない程にクロードには背中に冷たい視線が突き刺さる。

「新鮮なお魚を食べられるのはとても興味深いですね。生魚も食べれるのでしょうか?」

「…生、で御座いますか?確かにヴェルスダルムは【錬金王】が作り出した浄水システムのお陰で下水の匂いもなく、常に綺麗な水を海や川へ流してはいますが、元々そのように食べる文化がない、と申しますか…生、ですか…」

「無いのなら、良いのです。あれば、と思っただけです」

「いえ、アルエルム大陸の方では生食文化もあると聞き及んではおります…。勿論、作らせます。今夜にでもお出しいたしましょう。お任せください」

 話し方は動揺しているのにも関わらず、余り表情を崩さない所を見ると、リーンと近しいものを感じる。貴族の嗜みとしてそのような対応をするものは多い。ライセンやレスターも割と崩れないように思う。ただ、最近特にレスターはコロコロと表情を変えるようになったからか、やはり、俯瞰的に見るとかなり他人行儀に感じるのだと分かった。
 ただ、リーンには今のスタンスを変える気は余り無い。大丈夫だろー、とそう言う所はやはり呑気だった。

「リーン様は、生食がお好きだったのですか?」

 セントフォールは相変わらずニコニコしているがやはりとても距離が近い。彼自身の距離感がおかしいのかもしれない。
 最もこの男性の姿でこの反応を見せる彼に疑問は尽きない。女性だったのならわかるが。

(何でこの世界に降り立った時は幼女だったんですかね?神様)

ーーーそれは神示を付けた際に少し凛の心の処理が追い付かなく

(…へぇ、って何で会話出来てるんですか??)

ーーーいつでも出来る

(…では、何故今まで話してくださらなかったのですか?)

 リーンは冷静だ。無表情で淡々と聴き返す。
 突然聞こえてきた声は聞き覚えのある中性的で性別の判別が出来ない様な不思議なトーン。

ーーー凛が呼ばなかったのでは無いか

(…確かに、でも、今も特に呼んではいないと思うのですが…)

ーーー神様 とハッキリ聞こえていた

(…確かに言いましたけど。まぁいいや、この体の事とか、体の事とか、体の事とか、教えてくれるんですよね?)

 如何やらレスター達、周りにはこの声は聞こえて居ない様だ。頭に直接響く様な感覚は少し酔ったような気持ち悪い感覚だが、ミモザが手を引いているし、すぐ横にはレスターが居るので身体の心配は無い。

ーーー何をそんなに聞きたい

(何故その土地によって容姿が変わるのか、なのに何故初めは幼女だったのか、そして何故彼らに神と認識されてるのか、能力の違いとか、その為諸々全てです)

ーーー少し多すぎる 簡単に大枠だけ話そう その身体は元は私自身の一部を切り離した分身体の様なもの 私はこの世界への直接的な干渉が出来ない 代わりのものが必要だった

(干渉が出来ない?では【賢者】や【勇者】、【錬金王】は誰が?)

ーーー干渉とは 即ち 生き物が起こした全ての事柄に立ちいったり しいては私の意思に従わせたり 指図や妨害は出来ない という事 世界に生まれ落ちる前であれば 私も少しは力を与えたり 願いを聞いたりしてやらない事もない 錬金王は生前での行いを勝って能力を私が与えたが 賢者と勇者は凛が決めたのではないか

(私が?そうだといいなぁ、程度に思っただけでしたが)

ーーー今は凛が神というものなのだ この世界の人々はその器自体を神と呼ぶ この世界が遠い昔 滅びかけた時 ベンジャミンという者が私の代わりにその世界を正した 

(ベンジャミン、あの物語は実在したものなのですね。しかし…世界を正す?私は何をすれば良いのでしょうか)

ーーー確かにベンジャミンは実在した しかし あの物語は殆ど偽りだ 実際にはベンジャミンは姿を変える事はなかった 人々が神の姿をそのように望んだからそうなったのだ 始まりが子供の姿だったのは単純に 凛の魂が分身体に馴染むのに時間がかかったからだ

(人々が望んだ形になる、のですね)

ーーー姿形は自由だ ついでに能力も本来なら自由なのだ 馴染むのに時間を要しただけで 今なら全ての能力 姿 もっと言えば そのまま大きさを変える事も出来る

(…では、今小さくも慣れるのですか)

ーーーそれが良ければ 私はこの世界を見守るだけの存在 特にして欲しい事もない 滅びようが 生き延びようが関係がない 創造神が凛を用意しなければこの世界はこのまま滅びを待つだけだった 私はもう諦めたからな

(…諦め…好きにして良い、という事ですね)

ーーーあぁ 楽しむと良い 凛が望まない限りはその肉体は衰える事も 死ぬ事もない たまに覗いているから 楽しませてくれ 天界は娯楽がないからな

(分かりました)

 何か引っかかる言葉を聞いた。
 ただそれはまだ凛が聞いていい事ではないように感じ、それはこの身体が元は神の一部だったからなのかは分からない。感情が共有されたかの様な不思議な気持ちだった。
 神にもそう言う人の様な部分があるのか、と不思議に思ったが、言ってしまえば自分も今は神の様な存在なのだから人間味があってもおかしくないのかも知れない。

 大枠だけ、と言ったからか本当に大枠だけだったが、何となく概要は掴めたように思う。成分的なものなのか、精神的なものなのか、兎にも角にも表面上は人間のように見えるが、1番驚いたのがこの身体は神の一部で出来ていて老いることも死ぬこともないらしい。みんなが必死に守るのも無意味なのかも知れない。
 ただ、やりたい事はリーンの中でもう既に決まっている。好きにして良いのならそれを突き通すだけなのだ。








 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

処理中です...