神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第三章

ピンクサファイア

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「こんにちは」

「お待ちしておりました!」

「美しい屋敷ですね」

「お褒め頂き嬉しく思います。でもこんなに早くお会い出来るなんて…滞在期間を延長しておいて良かったです」

「お忙しいのに今日はお時間を取ってくださいましてありがとうございます」

 照り付ける日差しを目に毒に思うほど反射する真っ白い大きな屋敷は彼らの地位の高さを示す。心地よい風が爽やかな花の香りを運んできて、足取りを軽くする。
 綺麗に切り揃えられた芝生。日差しを遮る為に植えられた木は高く、小鳥の囀りさえ聴こえてくる広い庭には素敵なガーデンハウス。人払いがしやすいようにポツンと開けた庭の中央にあるので存在感が強い。そして侵入者を寄せ付けないようにそれを取り囲むように植えられた花たち。
 とても素敵だか、見ようによっては要塞だ。

「この紅茶、とても良い香りですね」

「アンティメイティア様に喜んで頂けて光栄です。この日の為に無理を言って用意してもらったのです」

「これどちらの?」

「これはトトノと言う村で作られてるお茶です。とても標高の高い場所で作られている為、栽培も収穫も輸送もとても大変で数が出回りません。あ!もし宜しければお土産にお一つどうですか?」

「いえ、そんな高価な物、受け取れません」

「あ!申し訳ありません。遠慮なく、と言いたい所ですが私が持ち上げすぎたのですね。トトノは父の領地内なので購入したものではないのです。…もう、遅いですか?」

「ふふふ、では遠慮なく、お一つだけ頂いていきますね。ありがとうございます」

 彼はユーモアもあって人当たりも良く、相手に遠慮させずにプレゼントまで出来る人で、勿論貴族で地位も高く財産もある。それでいてそれを振りかざす事のない出来た人だ。

「今日は先日のお話を、と思って参りました」

「はい。あ!どうかお気になさらず。家の事とかしがらみとか…そのお好きな人とか」

「ありがとうございます。マーカス様は本当に出来たお方でらっしゃる。そんな方に好意を寄せて頂けて本当に光栄ですわ」

「いえ…。私はそんなに出来た人間では無いのですよ。あまり強くも無いですし、楽しいお話も出来ません。正直なところ、貴方に気持ちがなくとも私は縋ってでも手に入れれるならそれも手かと思ってました。でも…」

「でも…?」

「ある方が言ったのです。貴方が好きな方はとても聡明で謙虚で信じられないほどに美しく、完璧な御人だと。私は幸せな人ですね、と言ったんです。アンティ様はお分かりでしょうが、これは貴族界では完全な憎まれ口、皮肉です。でも彼はその方にいつも幸せを貰ってると言ったんです。私は恥ずかしくなって誤魔化してしまいました。彼はなんて素敵な方なんでしょう。私はアンティメイティア様の思い人の方にはお会いした事はありませんが、お話に聞くその方よりも彼の方が素敵な人に見えました」

「本当に素敵な方ですね」

「はい。それから彼と何度かお会いしたのですが、お話も面白くて、歳の離れた私に合わることも出来て、いつも笑顔で優しくて、そして何より彼はとても一途なんです!どうせ私が身を引くのならそう言う素敵な人と一緒になって欲しい…かな、と」

 アンティメイティアは上品な笑いだが、涙が出る程に楽しそうだ。

「素敵なプレゼンですね」

「彼の事お好きになられましたか?」

「おかしな事を仰られますね」

「…失礼致しました。余計なお世話でしたね」

 2人は和やかにでも貴族らしく無い笑い方で。
 それがなんとも微笑ましい光景に見える。

「今日はお時間を頂きありがとうございました」

「では、お見送りを」

「私、彼を迎えに来ましたの」

「…此処にいると?」

「貴方程に優秀な人なら私から此処に来るという手紙を受け取った時に気付きましたでしょ?」

 アンティメイティアの言う通り、彼女からの手紙を受け取ったマーカスは彼が彼女の元を去ったのだと理解した。
 彼がいる限り彼女を手放すなんてあり得ないと思っていたし、彼女が此処に来ることもないと理解していたからだ。
 だから手紙を受け取って直ぐに彼を探し連れてきた。彼程に優秀な人もまた中々いないからだ。

「いないと言ったら?」

「なら何故あんなプレゼンを?」

「ハッハッハッ!確かにそうですね」

 恐れ入った、と言わんばかりに両手を上げて降参のポーズを取るマーカスにアンティメイティアは眉ひとつ動かさず微笑むだけだ。

「だそうです、ルーベンさん」

「…アンティ様」

 笑い合う2人。本当にお似合いだ。
 夫婦だって聞いたら納得出来るほどに。
 だが勿論ハルト様の次にだ。
 貴族は凄い。ただの平民の僕にはこんな会話は出来ない。
 ルーベンは何も言えずにその場に立っているしか出来なかった。
 ハルト様になら、何て思ってた事すら恥ずかしい。僕よりも彼女を幸せに出来る人なんてたくさんいる。彼のように。
 僕に出来るのは顔色を伺って、偽って、相手の望む者になり切るだけ。本当の自分は何者でもない普通の凡人。いや、それすら烏滸がましいかも知れない。人を騙して生きてきたのだから。
 彼は貴族で、彼女も貴族で、申し分ない相手で、自分は何者でもない。そんな彼がそんな僕をここに連れてきたのか正直わからなかった。
 でもそう言う事だったのか。
 
「あら。演技はどうしたのかしら」

「すみません、ルーベンさんバレてしまいました」

「…お二人とも打ち合わせしていたのですか?」

「「いいえ?」」

「…ハルト様の事はどうされるのですか?」

 だからと言ってさっきと何も変わらない。
 彼女を傷つけて、嘘とはいえハルト様をばかにした。
 緊張で声が震えている。
 何度舞台に立てどもこんなに緊張したことなどない筈のルーベンがだ。
 マーカスは両頬に手を当ててニッコリ笑っている。その可愛らしい笑顔がルーベンの背中を押してくれている。

「ハルト様?何のことでしょう」

「貴方の想い人のリーンハルト様の事ございます」

「何か勘違いしているようなので言いますが、私はハルト様の事は慕ってはおりますが、恋はしておりません。勿論愛してる訳でもありません。憧れているのです」

「「…?」」

「いえ…そんな筈は…私はいつも貴方を見ていたので分かります。貴方の目線の先に誰が居るのかを」

「えぇ、いつも見ておりました。ハルト様はまるで亡き父の様なお人ですから」

「ち、父…」

「えぇ、私のお父様はとても凛々しく、心は優しく、それでいてとても勇猛で知的で強い素敵なお父様でした。ルーベンも知っていると思いますが、お父様は私の国で英雄とされている人で今は亡くなってしまいましたが、本当に立派なお人でして……」

「ア、アンティ様」

「私の幼い頃の夢は父になる事でして、その為に勉強や淑女教育、領地運営など幅広く学び少しでも父に近づこうと……」

「「…」」

「流行病が来た時も領民のみならず少しでも多くの人を救おうと、自分の命の危機があろうとも王命を差し置いてポーションを配り、私財を投げ打って衣食住を提供したのです。そして…」

「止まりませんね」

 その後も父の話を熱を持って語るアンティメイティアに2人は顔を見合わせてクスクスと笑った。

「あ!いま、笑いましたでしょう」

(僕はアンティ様の目の前から消える覚悟をしていた。このままお側にいられるのならこれ以上の幸運はない)

 ルーベンはあの日から胸ポケットに収まったままの箱に手を当てる。
 その小さな箱には薄ピンクに輝く宝石が埋め込まれた指輪がちょこんと可愛らしく座っている。
 表に出る機会を失った指輪の存在を確認して気持ちを落ち着かせる。

「ずっと…お待ちしております」

「ルーベン…ありがとう」

 そんな2人を見てマーカスは幸せそうに、でも少し寂しそうに笑う。
 幸せって言うものはいつも突然に降ってくるもののようだ。

「…ゴホン。では、本題に行きましょうか」

「…?」

 途端に真剣な顔つきになったアンティメイティアと少し罰が悪そうなマーカスにルーベンは首を傾げることしか出来なかった。









 
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