神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第三章

聡さ

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 早速次の日から穴掘りが始まった。
 結果的に言えば前日見ていた所はお蔵入りになった。と言うのもリーンが指定した場所なら“おんせん”が出ると分かったのなら後は平坦で建材となる木々も生い茂ていて建物が建て易いく、薬草などを育てる為の環境が整った場所が近くにあって、飲水などの確保が出来、尚且つ邪魔なものがないそれなりに広大な土地である事を考慮すると場所は1箇所に絞れたからだ。
 ただ初めは何故他にも土地を提示されたのかが疑問だった。と言うのもリーンなら初めから其処が1番良い場所だと分かっていた筈だからだ。
 結論としては何処でも良かったのでは、となったが多分他にしっかりとした理由はあったと思われる。
 それでも此処にしたと報告したら、わかったと間も置かずに返信が来た所を見るとその理由に当てはまっているのだと分かったのでそれ以上は誰も考えなかった。

 穴掘りはなっけなく終わった。
 それは土や鉱石関係に強いドワーフであるガンロのお陰でもあるが、やっぱりリーンのお陰とその意図を読み取ったキールの活躍が大きい。

「ここに“おんせん”を作るんじゃがどう思う?」

「良いんじゃない?」

「なんじゃ、適当じゃなぁ」

 あまり興味なさげに言うキールに眉毛を下げて言うガンロ。
 散々話し合いに混ぜろ、と怒っていたのにも関わらず、いざ話し合いをしてみるとキールはあまり混ざって来ないのだ。

「んー、だって“おんせん”がメインなんでしょ?なら何処でも良くない?そんな事気にしてたらいつまで経っても終わらないよ?」

「なんじゃ、わしを舐めとるんか?こんなの1日で終わるわい!」

「ふーん、じゃあ、あと10日かー。長いなぁ」

「待て待て、わしは1日で終わると言っておろうが」

「…?え、全部1日で終わるの?流石じぃだね」

 嬉しそうに言うキールに何故か違和感を感じるガンロ。

「“おんせん”は終わるぞい。館は流石にわしは専門外じゃからな。誰かに頼むしか無かろうが」

「まぁ、そうだよね。建物は多分あの入り口作ってくれてる巨人のにぃさんに設計してもらって、手伝うだろうから要望は伝えて来たよ。やっぱり前のところよりも大きい温室が欲しいからね」

 思い違いか、と胸を撫で下ろす。
 流石に建物までを今日中にと言うのはないと分かっていたか、と。

「じゃあワシは作業に取り掛かろうて」

「ん、じゃあ僕は昨日の所に行ってくるね?“おんせん”の場所もちゃんと決めておくから」

「…なんじゃと?」

「え?だから、次の温泉の場所も決めとくって」

「…次…じゃと?」

「…?何言ってるの?ハルト様が指定した所全部“おんせん”出るんだよ?何の為に複数箇所指定したのか分かってなかったの?」

 
 大口を叩いて出来ると言ってしまった手前、そんな事はお構い無しに楽しそうに次の場所へ向かうキールを止める事も出来ずガンロはガックリと頭を垂らした。
 キールの姿が見えなくなった頃。

「ハボック、テオドア、ライガ、ローラ…少しまずい事になったようじゃ」

「…やな予感が致しますわ」

「薄々感じてたんだ、何かあるって」

「何ゆうとるん、不安にさすな」

「ガンロ様…キールが居ないようですが…」

 ガンロの明らかに暗い表情にかなり深刻な事態が起こっているのだと察した4人はゴクリと生唾を飲む。

「…全部じゃった」

「「「…」」」

「全部って何がや、じぃ」

「…“おんせん”を作る場所じゃ」

「ん?どういうことですの?」

 ガンロの顔色がより一層暗くなった事でハボックは昨日の事を思い出す。
 キールがいない事が関係している事は予想がつく。そしてキールが何か言ったと言う事も。

「リーンハルト様のご指定された場所全ての場所で“おんせん”を作るって…言わないですよね?」

「…ま、まさか~!…って何かゆうてくださいよ…」

「ハボックの言う通りじゃった。キールがの…次の場所見えくるゆうとるんじゃ」

「「「「…」」」」

「ワシ…1日で出来ると言ってしまったんじゃよ…」

 そしてみんなの顔も暗くなる。
 
「て、手分けした方が良さそうですわね!」

「そ、そうだな!昨日の調査地少し山の上なんだ。大変だろうから俺が言ってくるよ」

「そ、そや!俺の所は少し奥まっておってな、見つけにくいねん、せやから俺が行った方が早いやろ?」

「じゃ、じゃあ、キールの向かった、昨日の所はハボック頼むわね」

「…やっぱり…俺なのか…」

「すまん、頼むよ。ハボック」
 
 皆んなキールのところには行きたいないのだ。それは嫌いだからとかムカつくからとかそんな事ではなく、単純に何か言われる事に恐れている。
 これまでガンロとハボックとが話し合いに混ぜなかったのもそのせいだったりする。

「いや、ワシが行こう。ワシが1日で出来ると言ってしまったんじゃ、責任はワシにある。すまんが他の所は頼むぞ」

「す、すみません、お願いします」

 しっかりと空いた大穴中から這い出る。石化の魔法をしっかりと張って“おんせん”が効率よく溜まるように処理をする。

「こんなもんかいの」

 リーンから此処に残る時に選別で貰った“手ぬぐい”で汗を拭きとる。

「全くあの神はドワーフ使いが荒いの…」

 “おんせん”が溜まっていく様を少し観察した後、重い腰を上げてキールの元へ向かう。
 正直言ってこんな作業マナがなんぼあっても足りない。今の穴で総量の3分の1は削られている。1日で全部などもってのほかだ。何故なら他に候補地は8もあったからだ。

「…待ったかいの?」

「流石だねじぃ!もうあそこ終わったんだ!」

「ゆうたじゃろ?1日で出来るとな」

「うん!なんだかんだで意味もなく調査に10日も使ったからね、その分は取り返せるなら文句ないかな」

 恐ろしい事を言うキールに聞こえないようにため息を吐く。

「何処にするんじゃ?」

「んー、この辺かな?どう?水脈はあるよ?」

「この草が目印じゃっかいの?」

「うん、地熱がツキノミチクサで、水脈がヒナタツユクサ」

「こっちに小屋を置くとして、こんくらいかの?」

「おぉ!凄い一瞬で穴が空いた!…これが“おんせん”か…辺な匂いするね」

「ん?さっきはこんな匂いせんかったのじゃが…」 

「うん、でも温かい…」

 それから湯船ぽくなるようにその穴を少し弄る。リーンの要望通りに腰掛ける場所を作ったり、湯が出てくる湯口を作ったり、周りに石を並べてみたり…。

「皆んな此処に来たくないって言ってたんでしょ」

「…なんじゃ、分かっておったんか」

「まぁね、でも此処はそんな事ないって言うところじゃない?」

「ワシは嘘はつかん」

「そっか…」

 少し残念そうに言うキールの肩に手をかける。なんだかんだ言ったって彼は子供だ。幾ら大人っぽい事を言ったって心まで大人になったわけじゃない。

「何もそんな気を張る必要はなかろうて」

「んー、そんな事言われてもなぁ。僕はハルト様の伴侶になりたいから実力を示さないとでしょ?」

「おいおい、彼奴は男じゃろうて」

「ハルト様に関して言うならもうどっちでも良いかな、寧ろ好きになったのは男性の時だったし。本当にカッコよかったんだ。戸惑ったけど」

 ガンロはキールの顔を見る。その真剣な言葉とは裏腹にニッコリと笑顔を見せる彼を茶化さないのはそれが本心だと分かっているからだ。

「…悪い事は言わん。…諦めるのも強さじゃて」

「うん、ん。僕もね、僕なりにちゃんと考えてるんだよ、じぃ。まずね、多分だけどハルト様はそれなりにみんな受け入れるけど際限なくは難しい。だから上限は7ってところじゃないかな」

「ほう?何故じゃ」

「まぁ、7人で1日交代1週間で刻むのが1番分かり易からね。それで言うなら1週間ずつ5人って可能性もあるけども、そこは何とか交渉ってところかな」

 笑う事もやめて真剣に話し出したキールにガンロも向き合って座り直す。

「んで、リヒト様。あの人が1番だろうね。なんたってハボックさんよりもカッコいいし、貴族で紳士だったし。あのハルト様から“アーン”して貰ってたもんね」

「“アーン”じゃと?」

「そう。そしてレスター様でしょ?メイド長でしょ?それからラテ」

「ん?イアンやアンティ嬢は入らんのか?」

 途端にキールは涙を流すほどに大笑いする。ガンロはそんなキールを見て何で笑うのか分からないと言わんばかりに睨みを効かせる。

「…まぁ普通ならそう思うだろうね。でもあの2人はなんか違うかな~。イアンさんは兄弟?みたいな。ずっと一緒にいたいってだけで好きとか恋とかそう言うのじゃない。今は、だけど。アンティさんも同じ。お父さんと重ねてるんだよね。好きは好きでも親愛みたいな」

「そうじゃったか。やはりお前さん周りをよう見とるの」

「まぁ、そんな感じで僕は多分5、6番目ぐらいなら滑り込めるかな?って所なの」

「なんじゃ余裕ではないか」

「ん~でも、やっぱりまだ歳がね。僕は若さも売りなんだけど結婚出来るのは成人の儀を済ませてからでしょ?危ないのは変わらないかな」

 キールはこんなに冷静に細かく分析しているが、まだ8歳だ。結婚うんぬんを考えるにはまだまだ早い年頃なのは言うまでもない。ただ今見ている彼の真剣さと普段のおちゃらけた雰囲気は違うようでいて、全て分析した上での行動なのだとしたら感心してしまう。

「まぁ、じゃが今の所は安泰じゃの」

「それで言うなら大丈夫だと思うよ。僕は他の人と被ってないしね」

「ほう。“小悪魔”も作戦のうちじゃったと」

「まぁ、これに関しては育ちの問題かな?僕達がいた路地裏は大人の遊び場が近かったから、何日もまともに食べれてなかった時とかは少し、ね?あ!にぃさんには言わないでね。面倒くさいから。勿論僕はちゃんと白い子だよ?ちょっと危なかった時もあったけど…ほら大人って世間体とか気にするからいい逃げ方があるんだ」

 人情の男ガンロは想像を絶する彼の人生に少し胸が痛む。どれ程の苦労と辛抱をすればこんな子供に育つのだろうか、と考えてしまう。

「じぃ、この話は此処までで良い?手の内を知ってる人がいたらやり辛いし」

 思うこともある。
 ただそれはガンロからすれば結果がどうであれ彼が幸せならどうでも良いことに思えた。
 だからもし彼が望む結果にならなかった時、彼が幸せでは無いのなら十分でないにしても何かしらの支援は出来るだけのものを自分は持っているのだから。

「そうじゃな。此処までにしておこうか」

「ほら、お昼前に次の場所行こう!」

「ワシは112歳じゃぞ!少しは労れ…」













 
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