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第三章
クラス
しおりを挟む「まぁまぁ、ってところですかね」
「…それは良かった」
「キール君!僕のところも見てください!」
ハボックはホッと一息つき、肩を撫で下ろす。
勿論キールから合格点を貰えたって事もあるが、キールがテオドアに着いて行ってここにはいなくなったということの方が大きい。
「初めはあんなに可愛かったのになぁ」
「なんや、そんなに毛嫌いせんでもええやないか」
「毛嫌いしている訳じゃない」
「俺はもう諦めたね、プライドも折られてもーたし」
「もうとっくに俺も諦めてるよ、ただ…いや、それで、そっちは終わったのか」
「?おぅ!バッチリ合格もろたで」
初めはガンロ様がこのチームのリーダーだと思っていた。そして俺が副リーダー。僕は支店長メンバーの中で初めに《鑑定》を取得して、勿論レベル一早くMAXにした。これが何処かで驕りになっていたと今は思う。
だから、蓋を開ければリーダーはキールでそれも完全なる単独トップ。あのガンロ様でさえ顎で使う始末だ。
ただ、それに逆らえないのはキールが正しいからで、キールがいなかったら確実にハルト様をガッカリさせていたのは想像がつくからだ。
それに未だに殆どのことが理解できていないのは自分だけで、話し合いに参加してなかったローラでさえ何となく状況を理解して考えるようになった。
それはハルト様の采配あっての事なのか、それともキールの実力たるものなのか、はたまたどちらもなのか…。いや、未だにいじけている俺が悪いのだろう。
もう皆んなはこの状況を受け入れて年下だろうとキールに従っているのにも関わらず、未だにその輪に入れていないのは自分が幼稚すぎるからだ。
それも分かってはいるんだ。
ただ今まで慕ってくれていて、ヨシヨシしてたほんの8歳の子供が途端に上司だと思うのは難しくはないだろうか。
とハルト様がこの街を離れてもう1週間経つのにまた言い訳をしている自分の情けなさに嫌気がさす。
「もっと気楽に考えたら?諦めも肝心やで?頭を使うようなことはあいつに任せて、俺らは身体を動かす。そうやろ?人間誰しも得意不得意があって、それをハルト様が上手く使う。今は頭を使う奴が必要でそれが出来るのがあいつなだけで、お前が皆んなを使う時もあるっちゅうことや」
「…そうだな」
「とりあえず今はハルト様が喜んでくだされば良いっちゅうだけで、誰が上とか下とかない。指示する奴が偉いんか?身体を使う奴が下なんか?そないな事よりも先に俺らはハルト様の僕やろ」
「…」
「それになぁ、そろそろ俺の出番の様やで?お前も顎で使ってやるさかい。楽しみにしとき~」
「は?何でだよ!」
ヒラヒラと手を揺らして楽しそうな笑い声をあげて何処かへ行こうとするライガにまたため息をついた。
認めてる。
もうキールの凄さは認めてるんだ。
でも皆んなみたいに素直に教えを乞う事も、指示を聞くのもまだ俺には難しい。
「…あったかいなぁ」
溜まった“おんせん”に足だけ入れて空を見上げる。
でも何故か視界が暗い。いや暗いんじゃ無い。
「お疲れ様です」
「…」
「サボりですか?」
「…お前が合格出したんだろ。…テオドアはどうだった」
もう戻ってきたのか、とまた下を向く為に話を逸らす。明らかに遠ざけているのに何故キールはこうして戻ってくるのだろうか。
「ちょっと様子を見に戻ってきたんです。ほら、入り口が完成したらしいので建物の建築も始まりますし」
「…あぁ、ドレイクか」
「そうです。“おんせん”の報告をしに戻らないと行けませんから」
「…戻る?」
「あれ、言ってませんでしたっけ?僕は入り口が完成したらドレイクさんに報酬を渡してハルト様の所に戻るのです」
あぁ、そうか。キールはいつも初めから答えを言うタイプだった。
あの時に言っていた。
ーーー此処に私を残すと言う事の意味が分かりますか?皆さんが頼りない、ということです
要は頼りなくなくなった、と言う事なのだろう。
「ハッキリとは言ってはいなかったが、その様な事は言ってたな」
「ふふ、分かったのですね。安心しました」
「…安心ね、だとしても回りくどいと思わないのか?」
「えぇ、思いますよ」
悪気もなくハッキリとそう言うキール。
寧ろ清々しい程だ。
「お目付役的にはどうだった」
「そうですね、ハルト様の為にって思っている事はわかったのでまぁ良いんじゃないでしょうか。ただハボックさんは手強かったですね」
「だろうな。今気付いたんだから」
「今?何をですか?」
「…言わない」
ふふふ、と笑うキールはそれすらもお見通しなのだろう。
でも、恥ずかしいじゃないか。ハルト様大好きキールがここに残ったのは俺の為だったなんて分かったところでそれを本人に言える訳がない。
「でも、ありがとな」
「いえ、ハボックさんは師匠ですから」
「俺はもう外れたのか」
「ん~どうでしょう。ハルト様は0か100の人ですから結果さえ出せば良い気がしますが、とりあえず今のところは圏外なのでその間は何をしても圏外のままです、大丈夫ですよ」
「圏外って…で、今回でお前は更に可能性を上げたと」
「否めません。難攻不落のハボックさんを落としましたので。…おっと日が沈む前に行かないと」
「…俺は諦めないから」
「えぇ、受けて立ちますよ」
楽しそうに手を振りながら去っていく彼が視界から居なくなるまで眺めていた。
「いやー、皆さんお集まりありがとう!明日からは俺が責任者になるさかい、宜しゅう!」
「「「「…」」」」
「何でお前なんだよ」
「何でゆうたってキールが指名して行ったんやからしゃーないやろ」
その日の夜汗を流し、空腹を満たし、疲れを癒す一杯を流し込んでいる時にライガがノリノリで言い放った。それには流石に皆んな納得していない様で一同ガンロに無言の視線を送る。
「…なんじゃ、わしはリーンから別の仕事を依頼されたんじゃわい。それに此奴はこう見えても【大工】で
【木工】も持っとる。“おんせん”が終わったらこいつの出番じゃろ」
「なんだよ。【大工】でなんでずっとクラス隠してたんだよ」
「そうですよ、僕なんてただの【レンジャー】ですよ。何なら早く【錬金術師】になりたいです」
「私だって弱い土魔法しか使えない【魔術師】ですよ。直ぐにでも【ウィザード】か難しければ【ソーサラー】でも良いので上がりたいですわ!」
「他の上位クラスを取得したら、元のクラスのレベルは上がらないんだ。テオドアも慎重に考えないと」
「せやよ。まぁ、もう上位持ってるハボックには言われとうないやろが。して、ハルト様は何になれると言っとったん?」
「…おい、上位言ったって…分かってるだろ。俺の前職を」
「そりゃー、まぁ。キールの師匠だし?」
「分かってるなら、辞めてくれ。【男娼】…だぞ?胸をはれるかよ…」
「でもこの前【身売り】から【魅了】に上がったんですよね?」
「アンティさんの【魅了】に比べたら子供もいいところだ」
顔を赤らめながら話すテオドアは周りの声はあまり聴こえていないようでもじもじと言いづらそうにしている。
「…その…【スカウト】、【シーフ】、【ハンター】とか…」
「支援系と戦闘系か…」
「あと…その…だ、だだだ【男娼】…って」
一同目をパチクリと揃える。
言ってしまえば、真面目過ぎるテオドアには一番あり得ないと思うクラスで、真面目な彼は恥ずかしがりながらも隠せず言ってしまうのだからそれにも驚いているのだ。
「テ…テオはどれになりたいとかあるのかしら?」
「支援系も捨てがたいかな…と。戦闘系はイアンさんやスイさん、カール君も居ますし…それにミモザさんも。ハルト様って元々お強いからこれ以上は要らないと思うから…その、処理…の時だけでも…良いかな、って…その、才能があるなら…」
何故ハルト様は彼に隠さず言ってしまったのだろうか。隠す事も出来たはずだし、寧ろ彼みたいなタイプには隠すべきだった、とそう思う。
もっとも、真面目な彼がそのクラスの意味を本当に理解しているのかとかも気になるし、理解してたとしてハルト様の為にそれを選んでどうなるのか。相手にして貰えなかったら?と不安になる。
それは彼がとてもいい奴で、ピュアで、真面目だからだ。
「それでね、ハルト様がね僕が良いならって…言ってくださって…でもよく考えるように…って。本当にお優しいよね」
…うん、羨ましい。正直言って羨ましいよ、それ。上げ膳の据え膳なら、もうそれはそれを選ぶしかないよね。あー、羨ましいよ。俺はそんな事言ってもらってない。
「狡いですわ!テオドア!テオドアのスキルと技能を見せてくださいまし!」
「え、え?スキル?技能?…良いけど…なんで?ハボックさんの見ればいいじゃ?」
前にも少し話だが、クラスは持ってるスキルと技能で変わる。スキルと技能のレベルを上げれば上級のクラスにランクも上げることが出来るし、他のクラスの取得条件を満たすと新たなクラスを獲得したり、クラスはそのままで他にスキルや技能としてそのクラスを使えたりと組み合わせ自由なパズルだ。
なので人気の高いクラスは必須スキルと技能を公開されていたり、研究されていたりする。よってなりたいクラスになる為にはスキルと技能が重要なのだ。
「見比べるのよ!んー、…《探索》《アナライズ》…《鑑定》、…《器用》
「器用?これか?」
「どうやって取るのかしら」
「ん~これなんやろな~」
不安の表情を浮かべるテオドアを安心させる為に皆んな笑ってみせる。
「取り方わからないわね」
「そうなんだ…ならハルト様にしか分からないね」
「そうやろな」
少しの疑問を残しつつ、明日に向けて解散になったのだった。
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