神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第三章

桃源郷

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 雲ひとつない青空と囀る小鳥達も今日という日をお祝いしてくれている様だ。
 私達はやっと調査というなのお見合いを終了し、隣町で仕事を続けているガンロ様達と合流し、またその手伝いをする。
 親愛なるハルト様との再会はまだ先の様だが、気持ちは晴れ晴れとしている。
 何せ今度は本当に仕事だからだ。

「みんなには色々と迷惑をかけました。本当にごめんなさいね」

「アンティさん、謝る必要は無いですよ。僕達が早とちりで動き過ぎたのですから」

「もうー!ストック私のせいだって言いたいんでしょ!私だって分かってるわよ~。もう凄く反省してるからやめてよ~。アンティメイティア様もこれ以上は私のガラスの心が砕けます」

「ふふふ、上手いわね。ごめんなさい。もう、辞めるわ」

「はい!是非そうして下さい!」

 周りの優しい気遣いもあり、何よりルーベンと言う心の拠り所を手に入れた私は今までで1番強い私になった。
 これから向かうのはハルト様の理想の楽園。
 “とうげんきょう”を作る場所。
 此処では暫く腰を落ち着けるとの事なので、気合も入る。

「アンティメイティア様、なんだが楽しそうですね!」

「そうね、ハルト様の理想…“とうげんきょう”なるものがどんなものなのか、今から楽しみじゃない?」

「そうですね。一体どんなところなのでしょうか」

 そんな風に夢や希望を語らいながら進んだ先がまさかこんな険しい山々だとはこの時誰も予想していなかった。

「…ガ、ガンロ…様、何処まで登るのですか…」

「だから言ったじゃろ、ポータルで来いと」

 呆れた、と言わんばかりのガンロの反応。流石ルーベンとオリバーはまだ余裕がありそうだ。
 私も余裕がある訳では無いがスイ様に鍛えてもらっていたお陰でついていく事は何とか出来ている。ストックは初めから無理だと諦めて合流した他の支店長と一緒に麓の立派な小屋で待機している。
 でもメリッサは限界のようで地べたに腰を下ろしてしまった。【観測者】になりたいメリッサは見聞を広める為に凡ゆる物、事、人を見る必要がある。《鑑定》のお陰で人は沢山見てきたのでだから少し無理してでも物事を見たいのだ。着いていきたい、と自ら名乗り出た感情は認める。が、その気持ちを知っているから何も言わなかったのだが、やはり止めておくべきだったのだろう。

「私がメリッサと此処に…」

「ほら、よっと」

「オリバー!止めてよ!」

「何言ってんだ、みんなお前のせいで止まってるんだぞ!リーンハルト様の“トウゲンキョウ”の為に頑張ってるのにお前の恥なんかで迷惑をかけるな」

「…ごめんなさい」

 オリバーはフン、と鼻で一喝していたがやはり2人は名コンビだ。

「アンティ様もお疲れになられたら私に仰ってくださいね」

「…わ、私は大丈夫だわよ!」

「ふふふ、そうですね」

 慌てて変な返事をしてしまった。
 ルーベンはいつも距離が近いからドキリとさせられる。本当に心臓に悪い。
 でも、もっと可愛く…メリッサのように素直に言えたら…そんな風にも思ってしまう。
 やはり私には難しい。

 それからさらに半刻ほど山を登り、川を渡り、滝を眺めて、日差しに照らされて…漸く辿り着いたのはえらく開けた土地。
 奇妙な事にここは山頂でもなく、平地でも無い。山の上なのは明らかなのだが、そこにバロッサ程の街がすっぽりと収まるのでは無いかと言うほどの土地が広がっているのだ。
 勿論それはバロッサが狭い街という意味ではない。
 本当に信じられない話だが広い土地が広がっているのだ。まるで山を丸々一個切り裂いたかのよう。
 そこにまだ疎らだが数件簡易的な家も立っているし、商店のような建物もある。
 目を引くのはやはり温泉で、凝った作りの門構えは小さな関所のように見える。

「此処が…“トウゲンキョウ”かー」

「凄いわ!こんなところがあるなんて!本当に不思議!」

「色々夢が膨らみますね」

「ええ。…ただ、何の香りでしょう…?…これは水?」

「おぉ、アンティ嬢これはな“おんせん”じゃ!」

 ガンロは誇らしげに語る。
 なんでも“おんせん”はハルト様の理想の1番強い要望でそれは土の中に埋まっている物らしい。
 独特の香りが鼻をくすぐる。
 決して不快では無いが、形容し難い香りなのは間違いない。

「色も匂いも様々での。そんなのが後8個ある」

「全部で9種類も有るのですか…。さぞ大変だったでしょう」

 自分達は割とヌクヌクしてたなぁ、と少し罪悪感を感じる。

「ここにポータルを頼めるかの?」

「えぇ」

 簡単にポータルを開く為にガンロが用意したであろう枝垂木が折り重なって輪になっている不思議な空間にポータルを繋げる。
 直ぐに懐かしい笑い声が聞こえてきた。

「ヘぇ~。そんな事があったのか、大変だったね」

「そうなんです、此方は如何でしたか?」

「うーん、まぁ色々大変だったよ。でもこれからだからね。皆んなにも手伝って貰って終わらせないと!」

「そう言えばハボックみんなは?」

「メリッサ、最後まで来れたんか?登りきれないに小銀貨1枚かけとったのに!」

「ほら、メリッサさんは根性あるって言ったでしょ?」

「いや、俺が途中からおぶった」

「オリバー!余計な事に言わないでよ!…あー、ごめんね、テオドア。信じてくれたのに」

「やりー!ほい、小銀貨1枚!」

「もー、だから僕はかけないって言ったのに」

「全く…お前は…」

「ガンロ様、私も止めたのですわ」

 なんとも和やかな雰囲気だ。
 相当大変だっただろうに和気藹々とした雰囲気で安心する。

「早速でわるいんじゃが、手伝って貰わなきゃならん。アンティ嬢はローラとゲートとポータルの起動をお願いしたい。ストックは“おんせん”周りの装飾。オリバーはテオドアとライガと共に倉庫小屋の方に頼むの。メリッサとルーベンはわしと共に少し下の本殿の建設じゃ」

「…え、ここまで上がってきたのに降りるんですか…?」

「お前さんはおぶられてただけじゃろ」

「…そうでした」

「ハルトが来るまで後半月じゃ。あまり時間がないからの、頼んじゃぞ。夜は下の本殿に野営地を設けとるからの、そこに集合じゃ」

 其々持ち場に急ぐ。
 慌ただしくも思うが、急いでいるのは間違いない。
 指示通りに持ち場にローラと共に向かう。

「ゲートを開けれるのはアンティ嬢と、フォークネルさん、フレディ君だけですから。アンティ嬢には本当にお手数をおかけいたしますわ」

「偶々適性があっただけですから」

「アンティ嬢、少し雰囲気が変わられましたわね?丸くなったと言いますか、話しやすくなったと言いますか…」

「ふふふ、そうですね。今まで肩肘張りすぎていたようです。本当は無理してたんです、でももう辞めました。焦ったりしなくなった分気持ちがとても楽になりました」

「まぁ!ルーベンさんのお陰かしら」

「え!」

「あら、私が気付いていないとでもお思いでしたの?」

 ふふふ、と笑い合う2人の間に優しい風が吹き抜けた。

「此処ですわ」

「では開きますね」

 ローラが指し示す先に樹の幹に空いた穴、うろがあった。中は綺麗な空洞で人工的な物に見える。この穴は腰を屈めば通れる程の穴でアンティメイティアはそっとしゃがみそのうろに触れる。ずっしりとしていて少しヒンヤリとした空気が漂い始めて細かい土埃が舞う。
 それらを全て吸い尽くす様にうろの中心に渦が出来始め、そして少しずつ大きくなっていく。
 風の渦によって背景がカメラのピントがずれたかのように少しずつぼやけていって…唸りをあげる風の音がどんどん増していき、あたりの草木がカサカサと音を立て始める。
 地面に落ちていた枯葉がその渦にひとたび飲み込まれれば跡形もなく切り刻まれてそのまま吸い込まれていった。
 そうして中心から徐々に暗く、悍ましい闇に包まれていくと、完全に背景、樹の裏の中が見えなくなった。しかしそれも時間と共に薄れていき今は元のうろになっている。

「…フー。終わりました、やっぱりごっそりとマナを持ってかれますね…」
 
「えぇ。これで他の皆様も直ぐにいらっしゃれます」

「…本当馬鹿でした」

「…?お馬鹿でしたの?」

「あ、いえ。此方の話です」

 今更ながら良く考えればハルト様はこの為に此処に私を残したとすぐに分かったはず。何故か分からないが、この《ポータル》スキルに関しては適性がなければ使えないらしい。
 だからリーン様は私にしか出来ないと言ってくださったのだ。なのに何を血迷っていたのか、ルーベンにあんな事まで言わせて本当に情けない。

「それでですね…あと8個開かないといけないのですわ」

「…えっと…8個…は…ちょっと…」

「あら、大丈夫ですわ。イッシュ様からポーションもお預かりしてますし、何よりリーンハルト様のためですもの!貴方なら大丈夫ですわ!」

「え、えっと…その、頑張ります…」

「えぇ!頑張りましょう!明日は12個ですから」

 ローラこそ変わったのではないか、と苦笑いになる。こんなに逞しい人だっただろうか。もっとお淑やかな女性だった筈だが…。
 此処での作業が死ぬほど壮絶だったとは知らないアンティメイティアにはこの場の雰囲気がやけに和やかに見えたが、彼らはただ疲れを通り越して空元気だったのだと知ったのはもっと後の事だった。
 




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