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第三章
得手不得手
しおりを挟む翌日。
ポータルの開通により各地に散っていた使用人達が次々に集まってきた。
いまいち誰もポータルの原理を理解できていないのだが、みんな同じ木のうろから現れたのを見ると、行きたい所へ自由に行けるようだ。
ハルト様の説明は難しく(要領を得ない)理解できたのはたったの3人。そう、《ポータル》を使えるあの3人だ。
疑問なのは頭が良ければ理解出来ると言うことでもないっと言う所。理解する事だけならレスターやアイザックのような天才にも理解できる筈なのだが、あの天才を持ってしても理解に苦しむらしい。
最も彼らは頭が良すぎてダメだと言う可能性もあるが。
多分だが、頭の良し悪し、たくさんの知識、ではなくて想像力や発想力が大切なのだろう。
一番面白いのは《ポータル》は誰でも通れるわけではないという事。《ポータル》の作成者の許可が無いと木のうろはそのまま木のうろのまま。だから、尾行者などがいて《ポータル》の使用を目撃されても基本的には使えない仕様になっている。まぁ簡単に侵入を許すわけにも行かないし、防衛策としては完璧なのかもしれない。
この山合いの立地も問題かもしれない。
登るのも降りるのも《ポータル》が無ければ中々に辛い。森も迷いやすいほどに深く緑が生い茂っているし、山も殆ど岩山で普通の登山感覚では登れない。今回登れたのはドワーフであるガンロのお陰だ。
そうなってくると問題なのは住民が集まらないという事。今後この場所がどのような形態で運営されるのかは分からないが、街にするにも国にするにも住民は必要で、もし受け入れるつもりが無いのならこんなに広い土地は必要がないだろう。
「想像してたより大規模だね」
「そうだね」
「おぉ、アイザック来たか!ライガ、アイザックとあれ進めてくれ!他はワシについて来てくれ。テオドア行くぞ」
「ほい、来た!任せときー」
「はい!」
「僕が必要なんですか?」
「そういう事!物分かりよくてたすかるわー」
到着早々ライガに連れ去られたアイザックに冥福を祈っていたのも束の間。グレイやアリア達にもそれぞれ役割を当てがわれた。
それ程までに人が足りなかったのか、と不安になっていたが、如何もそうでは無いらしい。家や商店街のような物を一気に建て始めているようでそこら中に木材や土嚢、石などの建材が置かれている。
しかし、この規模の街だ。何処からそんなに住民を連れてくるのか不思議でならない。人が来なければこの建物全てが無駄になるのだから。
そんな作りかけの街を横目にグレイ達が連れてこられたのは他に類も見ない規模のお屋敷。もう、これは城と言ってもいいのでは無いだろうか。
「これ、この短時間で出来る規模じゃ…」
「おう!3日で建ったぞ」
「3日…?」
「アイツのお陰じゃな」
ガンロが指を指す先にいたのは一際大きな躯体を器用に使いこなす大男。当然、人以外の血が混ざっているのは見るも明らかだ。
「そう言えば、ハルト様が交渉してたわね…って待って!この横の建物、工房じゃない?」
「じゃない??」
「職人達用の別棟だ。ワシの希望を聞いてくれてな。アイツに感謝しろよ?」
グレイが言っている“短時間”とはアルドで彼らと別れてからの半月程の話だったのだが、それよりも短い期間で建てられたのなら寧ろ構造物として大丈夫なのか心配になってくる。
まぁ流石にリーンの屋敷を作るのに手抜きはしないだろうとグレイは口を噤んだ。
「まぁ、いつも通りだよ。アリアさんとジェシーさんは工房で必要な物揃えてもらったり、グレイ君はアイザック君が戻ってきたら街の経理とか運営についてとか、国の法整備とか、色々作ってもらうからその前の準備お願いね」
「かなり重要なお役目ですね」
「こっちで出来そうなのキール君だけだったんだけどリーン様の所に戻っちゃったから、お願いできるかな?」
「あぁ、大丈夫だよ。テオドア」
「あー、良かった。それじゃイッシュさんはこっちに!」
かなり様子の変わったテオドアに少し驚きつつも、嬉しい変化にイッシュとグレイは顔を見合わせて笑い合った。
それからはとにかく仕事が忙しいかった。どんどん運ばれてくる資料や書類に埋もれていた。
お屋敷にいるのにも関わらず、外では金属を叩く音や、男達が何かを持ち上げよう声を掛け合っていたり、大きく重たい物を引き摺り回す音などで騒がしかった。
ただそれが気にならないくらいに屋敷内も大変忙しく、駆け回る使用人達で騒がしかった。
一人部屋で書類整理や収支報告書を作ったりと籠っていたグレイは目の前の扉が開くのを今か今かと待ち構えていた。
しかし、扉はとうとう開かれる事はなく夜を迎えた。一体“アイザックが必要な場所とは此処以外の何処なのだろうか。相当色々と連れ回されているのだろうと想像すると可哀想になってくる。
あのライガの事だ。アイザックの言葉など聞く耳も持たず、処構わず連れ回し、ただひたすらに話し続けているのだろう。
一方。
グレイの予想通りアイザックには話す隙間ないくらいライガの口が止まらない。連れ回されている理由について疑問を投げかけたいのだろうが、どうすることも出来ない。
これまでいかに大変だったか、とかキールから聞いた今後の話、とか温泉という物の素晴らしさ…とか…確かに内容はそれなりに興味深かったし、キールの考える今後については意見が一致していたので黙って聞いていたが、此処に連れてこられた意味は未だにわからない。
ただひたすらに建物の建設現場に立ち合っているだけなのだから。
「まぁ、こんなもんやろな」
「見た感じかなり豪華な…何でしょう?」
「カジノや。お前の家みたいなもんやろ?」
「確かに入り浸っていましたが、それを言うならグレイの方が適任ですよ。グレイは【ディーラー】だったんですから」
「ちゃうちゃう!それを伝えたかったんやない。街見せたから何となく分かったやろ?建物の大きさ、希望、建物の間隔、道路の幅とかがよ」
「まぁ、わかりましたけど」
「よしゃ!ほな、次はハボックとルーベンの所に向かってくれや!」
今度はなんなんだろうか。
先程までとは打って変わって静かな空間。永遠と線やら文字やら書き込んでいる2人を少々観察する。
多分、図面だろうか。
何処となくだが、ルーベンの仕草がライガに似ているような気もする。彼も図面を引いているときは大人しいのだろうか。
「ルーベンがバロッサの調査してたのってこの為だったの?」
「あぁ、アイザック。来てたのか」
「んで、どこまで進んだの?…って何これ」
「今、投げ出した意味分かったところ」
「ハボックはあの中だと1番頭回ると思ってたんだけど」
「あの中だと、だろ?」
まぁ、それもそうか。とアイザックは机の上に目を向ける。
どうやら街は大小はあれど全部で9個あり、1番広いのが今いる場所。此処がバロッサ程の大きな街で、中心街になる。今はどのように街を作るのか細かく練っていた所のようだ。
二人の説明によると、初めはライガがこの街の図面を作っていた。しかし彼にはそっちの才能はなく苦戦。頭のいいハボックに頼んだが知識がなく苦戦。それなら知識があればと実際に街を調査していたルーベンと作業を始じめたが、彼も建築などの知識がないので【役者】のスキルで【大工】の役をしてたが、やはり苦戦。今に至る。と言った感じだそう。
「街の全体像は決まってるの?」
「はい。とりあえずこの屋敷から扇状に街を作るっという事ぐらいは」
「ハルト様のご要望は?」
「“おんせん”ですね。今屋敷が立っているここのほぼ真下に“げんせん”があります」
「他には?」
「“おんせん”だけです。というか我々もそれしか知らないんです。だからいつでも入れるようにと“おんせん”を屋敷の地下に作ることにしました。“おんせん”は地中に埋まっているので」
アイザックは二人の頭をパンッ叩く。
何故突然そんな事をされたのか、と頭を摩る二人にアイザックは深いため息を吐く。
「地下はダメです。辞めましょう」
「え、」
「でも…」
「あの方は神なのですよ?我々がハルト様を見下ろす様な事はあってはなりません」
「もう作り始めてるのに?」
「はい、今すぐ中止で」
「「…」」
その2人の悲しげな表情にかなり苦労したのだな、と察する事は出来たが、一刻も早く始めないとリーンの帰郷に間に合わないという事も分かっていたので、アイザックは背を思い切り叩いて2人を鼓舞したのだった。
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