神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第四章

屋敷と少女

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 木造の少し古びた館。
 外観はかなりおどろおどろしい。
 玄関までの石畳も何故か石が掘り起こされていたり、割れていたり、白かったのだろう壁には大量の蔦が這っていて、所々ひび割れていて、長く人が住んでいないのは明らか。
 窓もくすみ、中の様子も見えず、庭は長いこと放置されていたせいで草木がぼうぼうで、歩くのにも一苦労する。
 
「お茶をお入れしました」

「ありがとう」

 そんな館に今住んでいるのが、リーンだった。
 この館の所有者はいない。ボロボロで住むものはおらず、とうの昔にその方は亡くなっていて、今では幽霊屋敷とも呼ばれているとか。

 それが何故今リーンの家になっているのかと言うと、屋敷の所有者はいないが、館の主人の死後、名目上は街の物となっていて、その街の長の好意で家の修理、掃除、管理を条件に無料で貸すと言われたからだ。

「今日は庭の手入れを致します」

「では、私は上の階の壁の残りを終わらせますね」

「宜しくお願いします」

 出来ることならリーンには何もやらせたくはないのだが、流石にボロボロの壁や床の修復はやったことがない。
 そもそも、エルフ族の家とは全く異なる姿形をしているため、何処がどうなっているのか、どこをどうすればいいのか、すら分からない。

「…リペアリング」

 庭の雑草を抜くエイフリアから、リーンがテラスに出て黙々と壁の修復をしている姿が見える。
 そして、それを見て自身の無力さに打ちひしがれる。
 本当に側に付いている意味はあるのだろうか、と寧ろ迷惑なのではないか、とついつい思ってしまう。

「…ごめんください」

「はい、何の御用でしょうか」

「ここに、私の主人がいるとおもうのですが」

「主人…?」

 主人を亭主という意味で取るなら彼女は若過ぎる。そう考えるともう何十年も前に死んだというこの館の以前の持ち主のことでもなさそうだ。

「お名前はリーンハルト様です。今はなんと名乗られているのでしょうか」

 少女は歳のわりにとても落ち着いて、とても冷静に質問を投げかけてくる。
 リーンのことを言っているということは直ぐに分かった。だがしかし、だからと言って直ぐに通すわけにも行かない。
 エイフリアは彼女が誰かも分からないし、何故彼女がここに来れたのかも分からない。
 ましてや、先日会いに行った魔女はディアブロとやらに追われて隠れ住んでいる。この少女がその手のものの可能性もなくは無いのだ。

「…リーンハルト様!ラテが参りました!お約束お忘れではありませんよね!」

 リーンが屋敷の中にいると知ってか知らずか、なりふり構わず大きな声で叫ぶ。
 とても大人しそうな子がそうまでして会いたいと頑張る姿はある意味で心に響いた。

「…ラテ?そうですよね。貴方は分かってしまいますよね」

「…ハルト様、私だけではありませんよ。きっとレスター様は【賢者】様に頼むと思いますし、イアン様はエリザベス様にお願いされました。エリザベス様は既にどの国にいるかくらいは分かっているはずです」

 エイフリアのついていけない話しは庭と、テラスで交わす二人に気が遠くなるような感覚がした。

 それに気がついたのかは分からないが、リーンからエイフリアに彼女についての説明が軽くなされた。
 リーンがエルフの里に訪れる前まで使用人として雇われていたことや雇われる前の生い立ちみたいなのを話されたが、中々の壮絶な話しに他人に(エイフリア)こんな簡単に漏らされてもいいのか、と少女をチラリと盗み見る。
 普通にお茶を飲む少女は全く気にもしていなくて、そういう目を向けるエイフリアにもいつもの事だと普通にしている。

「ハルト様、皆様からお逃げになられる気ならこんな所に居られてはいけません」

「ドール様はお逃げになられていたのですか?」

「…逃げたつもりは無かったのですが…まぁ、でも同じことですね。貴方方に危害が向かないようにと思っていたのですが」

「ハルト様、お逃げになるなら私は絶対に必要です。みんなの動向を予測して、見ることが出来ますから」

 確かに、リーンは過去から現在までのことなら神示で見ることが出来る。しかし、未来については流石の神示も見せてはくれない。
 ラテの能力はどちらかと言えば何通りもある未来から予測と事実を見定めて本当の未来を選び取る。
 万能で順応性の高い能力だ。

「そうですね…決して逃げている訳ではないのですが…。早速ですが、一人会いたい人がいます。彼女がいる場所は分かっていますが、中々出会えないのです」

「なるほど。全て私にお任せください。必ずやハルト様の御前にその女性を差し出してませます」

 気合の入ったラテ。
 エイフリアは羨ましく思う。
 リーンから向けられる信頼が違う。こんなに重要な事柄を任せられているのも、なすべき事があるのも、何もかもが羨ましい。

 特に何も聞く事なく、ペコリとお辞儀をして門から出て行った少女を少し見送った後、エイフリアをテラスにいるリーンに視線を向ける。

「彼女とのお約束とは…?」

「…ずっとラテをそばに置く、と約束してました」

「それを破られたのですか?ドール様が?」

 リーンはまだ少し困った顔をして、逃げた訳でないのですがね、ともう一度繰り返した。
 リーンが結果的に何がしたいのかは魔女との会話で分かっている。ディアブロという名前にも実は聞き覚えがあった。
 確か、数百年前に突如として現れた神は全ての国と大陸を魔物抜いた後、姿を決してそう名乗り出したのだとじい様から聞いていた。

 ただ、その神を殺すことが魔女とリーンの目的なのだからどうも納得が行かない。
 一体その神が何をやらかしたのだというのだろうが。その説明が一切ないことがエイフリアに言い知れぬ不安を与えた。

「少し休憩にしましょうか」

「はい、ドール様」

 草刈りをしていたエイフリアに声をかけたリーンは手招きをして屋敷に入るように促す。
 屋敷内は見た目と違って相当綺麗になって来ている。真っ白な壁紙に埃一つない調度品の数々。中でも一際大きい何処かの風景画は黄金色に輝いていて思わず見惚れてしまうほどに美しかった。

 部屋も落ち着いた雰囲気に統一されていて、居心地の良さは抜群だろう。リペア魔法を施されたばかりの家具達は新品同様で傷ひとつないし、木の香りも漂ってくる。
 少し物寂しく感じるのはこの屋敷がそれなりに大きいのに、二人だけで暮らしているからなのだろうか。

「ラテが私の探しびとを連れてくるようなので、その前に色々と話して置こうと思いまして」

「では、お茶をお淹れしますね」

「ありがとう」

 屋敷は物悲しいが二人で暮らすには充分なほどにエイフリアは使用人としても侍女としても優秀だ。
 彼女はエルフの一族。精霊などとの親和性が高い種族なので魔法の腕は確かで、部屋の掃除などは言うまでもなく一瞬だ。
 当然、お茶を淹れるのも一瞬で、エイフリアの声と共に何処からともなく現れる茶器とスプーン、とお茶っ葉。それにお茶用にのみ使われる彼女の魔法で生み出された100度のお湯を注ぎ込む。

「どうぞ」

「ありがとう」

 自分を卑下する必要がないくらいに彼女は良く使える侍女だと言える。

「エイフリア。コロンのところで聞いていたので分かっているとは思いますが、私達の目的はディアブロを倒すことです。ディアブロは世界が発展することによって秩序が乱れていく事を阻止しています。人口が増え過ぎればスタンピードや流行病を起こし人口を減らし、発展しそうになれば研究を中断させる為に国を操ったり、殺しも厭いません」

 エイフリアはハキハキと話し始めたリーンを真剣は目を向ける。これまで何の話もして貰えなかったことに凄く苦しめられていたが、今日それが終わる。
 そのキッカケを作ったのは羨ましく、妬ましく思った少女だった。

(…やっぱり、悔しいな…)

 複雑な思いを抱きながら、彼女は耳を傾けていた。









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