神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第四章

レスターの過去

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「レスター様。お初にお目にかかります。女神様の現在の付き人としてご一緒させて頂いております、エルフ族エンダの森族長の娘、エイフリアと申します」

「…エルフ族の…【神子】は継承されたのですか?」

「…そんな里内部の…ことまでご存じなのですね…」

 全てを知る女神、もしくは里内部の人間ぐらいにしか知りえないはずの話しをさも当然のように質問してくるレスターに女神の彼との深い間柄と彼への深い信頼度を思い知ったエイフリアは情けない表情を隠すために、視線を下げて大人しく椅子に座る。
 リブリーは自分も挨拶するべきかと相変わらず、おどおどと周囲の様子を伺うだけで行動すら起こせない。

 完全にマウントを取られたラテ、エイフリアはその後何かを言うことも出来ず、ただただ黙って着席せざるを得ない状況にさせられてしまった。

「レスター、貴方は相変わらずですね」

「恐れ入ります」

「決して褒めていません」

「私には褒め言葉に違いありません」

 ああ言えば、こう言う、状態のレスターと、呆れたように、突き放すように言うリーン。
 ただ、その態度とは裏腹に二人の間には温かな空気が流れている。それがまた感じ取れるほどリーンの態度はわざとらしいのだ。

「私は探されたくなかった…!」

 初めて聞くリーンの堰を切ったような声。いつも冷静な彼女が初めて上げた荒げた声は震えていて、その言葉はまるで自分に言い聞かせているかのようで、レスターは『あぁ、探して良かった』と心の底から思った。

「リーン様、私にとって貴方が世界の全てなんです」

「それでも…探して欲しくなかった…」

 リーンは横目でレスターを捉えながらゆっくりと語る。
 そこにはリーンの優しい気遣いがあってレスターは小さく笑った。

 レスターには歳の離れた妹がいた。
 父は小さな商会に勤めていて、母はとある貴族様の遠縁の末端の家の出身ではあったが、身分は平民で極々一般的な家だった。
 ただ、ある日妹が病に倒れた。僅かにあった蓄えはすぐに消え、父は勤め先の商会に借金をし、母も実家や遠縁の家々に頭を下げて回った。
 レスターは少しの足しになればと役所で働き始めた。それがハーベスター領だった。
 そして、トット・チベットと出会った。何があったのかわからぬうちに王都へ無理矢理連れてこられ、あれよあれやと仕事を押し付けられた。頭のいいレスターが悪いことだと分かっていながら仕事をしてたのは妹のことがあったからだ。
 妹の治療には多額の治療費が必要で借金で手が回らなくなった両親はレスターを当てにするようになり、レスター自身もそれしかない、寧ろ幸運だったのだと言い聞かせたのだ。
 暫くすると妹の治療の為に優秀な医者が遣わされたと両親から連絡が来た。自分のやったことは正しかったのだと言い聞かせた。

 でも実際にはレスターを商会に縛り付ける為にもう助かる見込みのない妹を連れ出し、亡くなってしまった事実を抹消していただけだった。
 さらに両親もレスターのお陰で借金どころか日々の生活すら豊かになった両親は金の亡者と成り果て、妹の事よりも贅沢をすることを優先し、レスターの帰りを望むことは無かった。
 それらに気づいた時には既に商会や教会、その背後に控える何かに囲われ、逃げる道を完全に閉ざされてしまった後だった。そんな時にレスターの前にリーンが現れた。レスターを救ったのは勿論、教会も商会に残っていた良心ある人たちも何もかもを救い出し、剰え、妹の遺品と、彼女の死体が埋められている場所を記した地図を協力の報酬としてくれたのだ。
 レスターの言う『世界の全て』は全てを失ったレスターの本心そのもの。それを知っているリーンは言葉を詰まらせたのだ。

「リーン様がそんなお顔をする必要はありませんよ」

「…」

 あの苦しさを表現するのは未だに出来ない。
 でも今は如何だろうか。
 目の前にいる彼女はその後の様子が心配で心配で仕方がなかった相手が元気な姿を見せて心底安堵し、そして自身と同じく自身の不甲斐なさに打ちのめされている。
 そして相手を遠ざけるためにわざと本心とはまるで真逆の言葉を使い、嫌われようと無駄な努力を尽くし、上手く出来ていると思い込んでいるこの可愛らしい人が正真正銘自分の主人であるという真実。
 
「私は心の底からお探しして良かったと実感しております」

「自分勝手過ぎなのでは?」

「これほど望まれていればそう思うのも当然だと思いますが」

「だから、私は探されたくないと…」

「そうですね。ですが、この私がリーン様のために探したのだとお思いですか?」

 リーンは言葉を失う。
 レスターの行動は常にリーンを思っての行動だった。それが例え危険であろうと、無意味だろうと、朝だろうが昼だろうが関係なく、暇を与えれば一日中自室の椅子に縛り付けられたかのように座っていたような男だ。
 当然リーンはレスターが自分のために時間を使った所なんて見たこともない。
 そんな彼から出た言葉とは思えなかった。
 私が自意識過剰だったのだろうか。

「如何されたのですか?お伝えしたはずですよ?リーン様が私の世界の全てだと。今までの私の行動にリーン様のためにとった行動なんて一つも御座いません。人間という生き物は結局自分のためにしか動けないんです。私がやりたかったからやった。ただそれだけです。それの何が行けないのでしょう?」

「…」

 本当に口の回る男だ、とリーンは肩を落とす。言い訳甚だしいが、リーンの為じゃなく自分のために動いただけだと、それの何が行けないのかと、言われてしまうと何も言えない。
 自分がここに来たのも、ディアブロと対峙するのも、神に頼まれたというのもあるが、実行すると決めたのは全て自分で、もちろん自分の為にやってたことだし、神を崇めるこの世界の人々からすれば非道徳的な事。
 それを神の名を使って強制するようなことを自分勝手と言うのではないか。なら、自分の事を棚に上げて責め立てることはリーンには出来なかった。

「お分かり頂けて嬉しい限りで御座います」

「…だからと言って、受け入れられる訳ではありません」

「まだ、迷ってらっしゃるのですか?」

「迷う…?」

「レスター様!」

 常に寄り添って支えてくれていたレスターのこの言い方に戸惑いあ然として言葉が出てこないリーンと不敬だと慌てた様子で責め立てるラテ。

「何を言ってるの?」

「リーン様はこれまで頑なに裏方に徹し、ディアブロと相対してきました。そして、必要な者と要らない者とを選んで来た。必要な者にはとことん甘やかし、強要し、要らない者は突き放し、絶望させた」

「それは…」

「えぇ。分かっております。裏切りや認識の甘い者、意識が低い者。それらが淘汰され、切り捨てられてるのは当然の事です。ただ、リーン様は彼らを犠牲にしない為に突き放していることも分かっております」

「…」

 リーンが内側に入れる者は最低限自力で身を守る術のある者、無くとも周りにいる人間で守れる範囲内の人数に絞り、誰も傷つけないように最新の注意を払って配慮している。
 それでも一度関わってしまった以上彼らにディアブロの手が伸びる可能性もある。だから、突き放し関わりを断つことで守っているのだ。
 それすらリーンにとっては苦渋の決断だったとレスター、そしてラテも知っている。

「リーン様、貴方がどんなに拒もうとも私は私の為に行動します」

「そこに私の意志は尊重されないのですか?」

「私はラテでも、ホワイト氏でもないので貴方様の本当の気持ちは分かりかねます。だから、仰って頂かないと」

「私は何度も言ってますよ。探さないで欲しいと」

「私には探してくれてありがとうと聞こえてますよ」

 リーンはレスターに目を向けて、ゆっくりとラテ、エイフリア、リブリーへと視線を滑らせる。
 彼女達の視線が、顔が、表情が全てを物語っている。みんなレスターと同意見だと伝えていた。






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