神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第四章

予知では見えなかった景色

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 心が揺さぶられる。
 押し込めていた、隠していたものがどんどん溢れていく。でも、それを認めてしまったら全ては水の泡になってしまう。
 自分でも分かっている。私は一人になるのが怖い。一人になることを極端に…誰よりも恐れている。それはただ周りに人がいるか、いないか、では無い。好きな人たちが、大切な人達が文字通りいなくなってしまうことを恐れているのだ。

 傷ついたレスターを目の前にした時は血の気がひいた。何を間違ったのか、神示を見ればすぐに分かることなのにそのことすら忘れてしまうほどに冷静さを失った。
 今もそうだ。いつもの自分では居られなくて、元気な姿を見れたと言うのにまだあの時の光景が目に浮かんできて、冷静さを欠いてしまう。

「そう見えたのなら申し訳ないですが、私は感謝なんてしてません」

 だから、出来るだけハッキリと本心を言っていると、冷静な判断だと伝わるように言う。それが今できる精一杯だった。

「ハルト様…」

 リーンの必死な主張もラテ達には寧ろ痛々しく見えていた。相手のことを思っているからこそ、口には出さなくてもその目の揺らぎを見るだけで思いは伝わる。その潤む瞳はあからさまに言葉にしなくても感情が表れていた。

「リーン様が何を成し遂げようとしているのか知っているのかラテだけではありません。私も…多分イアンも…そして、リヒト様だって分かっております」

「…何を」

「私達は全て分かった上で貴方の側に居たいと願っているのです」

「そんな訳…。それを知っていて一緒に居たいなんて思うなんて…」

「私達は馬鹿でもなんでもありません。私はあの馬車で貴方と知り合ったあの日、私は初めて生きる希望を持てました。
私の生きる希望である貴方が私の世界の全てである事は当然です」

 息継ぎもなくただ淡々と話すレスターから目が離せない。何を言われているのか分からないのに、片膝を突き、私を乞うように差し出された手は僅かに震えていて、本当にあのレスターなのか、と思ってしまいそうな程不安そうな瞳を向けられている。

「レス…」

「どれだけ気にしないで欲しいと願っても優しい貴方はきっと気にしてしまう。だから、私は貴方に示したかった。運命なんて変えられる、と。気にせずに思うままに進んで欲しい、と。でも、今回ばかりは私の考えが甘かったのは間違いありません。消えろと言われれば素直に従い、今回貴方様の目の前に現れません」

「…それは…」

「そして、もし許されるのならば私は貴方の『居場所』になりたい。私が入る場所が貴方の『帰る場所』になりたい。それ以上は何も望みません。罰も全て受けます。どうか…貴方の心の拠り所として…私を求めては頂けませんでしょうか」

「私の『居場所』…?」

 そんな所があるのか。いつも望めば望むほど離れていったそれがここにはあるのだろうか。
 そして、このタイミングでふと思い出した。

 ーーー凛。お前の願いを叶える

(神様…私が望んでも大丈夫なのですか…)

 ーーー今更なんだ。何度も言っただろう。好きにしなさい、望みなさい、と。そして、呼び寄せた時も言ったはずだ、『私はしっかりとお前の願いを聞いた』と

(ここが私の居場所なのですか…?)

 ーーーお前が望むのならそこがお前の望み通りの場所になる


 感情が溢れて来て止まらない。

「良いのかな…。望んでも…」

「当然で御座います。その為に我々がいるのですから」

「怖いの…」

「それは私の手に追えるか分かりませんが、全力で頑張りますので」

 止めどなく流れる涙を受け止めたのはレスターの腕の中だった。
 どんなに望んでも離れていかない、無くならないものなんてないと思っていた。それでも、求めずにはいられなかった。
 私は失ったもの全てを受け止められるほど強くなかった。だから、やっと手にしてもいつも隙間からこぼれ落ちていって最後には何も残らなかった。
 求めれば求めるほどこぼれ落ちた行くこれらを必死にかき集めては情けなくて、辛くて、苦しくて、次第に諦めるようになって行った。
 諦めると凄く楽だった。だから、段々色んなものを諦めるようになっていった。

 その中でも、唯一諦めなかった母の存在が“凛”と言う人間が生きている唯一の理由で、最後の砦だった。
 そして、それが無くなった時。簡単に崩れ去ってそのまま“凛”は命を落とした。

 この世界はとても息苦しい場所だった。諦めたものが手を伸ばせば届くところに沢山転がっているからだ。でも、一度崩れてしまったものはなかなか取り戻すことは出来なかった。
 そして、“ベンジャミンの大冒険”を見て、こうして神様として崇められているのはある意味運命だと思った。
 父の死、弟の死、母の死…親戚達に疎まれていた自分。なんだか既視感を覚えた。

「どうか、私を信じて下さい。貴方の幸せを諦めないでください。私の世界を奪わないで下さい…」

「ハルト様…皆んなでやっていきましょう。確かに貴方は神で誰よりも気高く神々しい存在ですが、だからと言って全てを貴方様が責任を取る必要は無いのです。悪に導かれるままに受け入れていた世界も悪いのです」

「もっと我々にお任せ下さい。ドール様には何もかも及びませんが、意外に私手先は器用なのです。マナの操作も得意ですし、かなり役に立つと思いますよ!」

「わ、私も!御礼を兼ねて…ぜ、全力で頑張ります!」

 一人でやろうと思ってた訳じゃない。一人では足りないことも分かっているから、こうして、必要な人材を探していたんだ。
 でも、どうだろう。私は彼らの何を知っているのだろうか。神示で沢山のことを知れるが、今彼らが何を思って、何を考えているのかは分からない。神示が教えてくれるのは何があったのか、と言う事実と事象だけなのだ。

 何処か彼らを信じきれていない自分は大切なことは全部自分こなして来た。本当に表に出たくなかったのなら、もっと彼らに任せて、隠れていれば良かったはずだ。
 それが出来なかったのは分からないから。彼らに近づこうとしていなかったから。怖がっていたからだ。

 だからレスターは自分で考えて行動した。自分に出来ることを考えて、行動して、今回の結果になった。いいか、悪いかで考えれば悪かったと思う。
 でも、レスターはそうするしか無かった。リーンはここまでしなければ多分、こうして涙を見せることも無かっただろう。

 レスターからすれば皆んなリーンを神様として崇め、期待し、押し付けて、本当に身勝手だと思っていた。こんなに人間らしい神様がいるだろうか。一緒にいれば、リーンが普通の人だと言うことは直ぐに分かる。
 その人間臭さは経典や神話なんかより、よっぽど説得力があった。あれが嘘で作られた物なんてことはすぐに理解できた。

「リーン様、私はこれからも貴方の側にありたい。それが私の望みです。リーン様のお望みは…?」

「…ずっと側に居で欲しい。誰もいなくならないで欲しい。
レスター無茶しないで…一人にしないで…」

「かしこまりました。もう、一生無茶はしません。貴方の側を離れませんし、お一人にはしません。他はありませんか?」

「…一緒に寝てもいい?」

「勿論です。私からお願いしたいくらいです」

「温泉入りたいなぁ」

「イアンが向かってるはずです。時期に連絡が来るでしょう。そうしましたらゆっくり入りましょう」

「ハトハ酒飲んでいいかな?」

「それはお供えになるのでしょうか?」

「神様だから、そうかも知れないね」

 子供っぽく、無邪気に、沢山の涙を堪えながら少し恥ずかしそうに笑うリーン。
 
「やっと…私が一番見たかったものが見れました…」

「…ん?なんて言ったの?」

「何も言ってませんよ」

 微笑ましい限りに寄り添う二人。優しくリーンの手を握っているレスターと涙に濡れながらも嬉しそうに笑うリーンをラテはただただ見つめていた。












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