神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第四章

説得

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 桃源郷の準備が本格的に始まったのはそれから数日経った頃だった。

「マダム・リコース。此方が正真正銘の女神ヴェルムナルドール様です。リーン様、此方がヴェルナード聖王教会、デロス地区最高司祭リコース・ラングルドンで御座います」

「全知全能の麗しき黄金の乙女、ヴェルムナルドール神。お初にお目にかかります。アルエルム、デロス島デロス地区担当リコース・ラングルドンで御座います。以後、お見知りおきを…。それで、本日はどのようなご用件でしょうか」

「ご丁寧にありがとうございます。今日、無理を言って時間を作って貰ったのは早急にご協力頂きたいことがあるからです」

「協力…で御座いますか」

 手始めにティリスの紹介でリコース・ラングルドンとの面会を行うためにリーンは再びデロスに赴く。
 リコースはこの人族が殆どおらず、忌避と怨みを投げつけられ、信仰する神も違い、人間の法など通用しない無法な場所でこうして司祭として大きな屋敷を構えられる程に馴染んでいる。
 どれほどの苦心があったのかは分からないが、相当苦労したことだけは神示を通じてよく見ている。

「私はこの島の問題を解決したいと思っております」

「…そ、そんなことが…可能…いえ、神のみぞ可能なものなのでしょうね。それで、一体わたくしめは何をご協力すれば…?」

「貴方の人脈の中で一番王に近い人を紹介してください」

「それは構いませんが…貴方様は全知全能の神。いきなり伺っても問題はないと思いますが…」

「その方にもご協力頂かないとならないのです」

「左様で…では、直ぐに準備いたします」

 その後リコースから紹介を受け、翌日にはデロスを収めている龍族のガビロンと面会を取り付けた。

 ガビロンの屋敷はデロス島の中心部に聳えるエーテル山の崖に建っていた。とても急な崖を切り出して建てたという白く美しい屋敷は自分達用と言うよりも客人をもてなすように建てられたものらしい。

「リコース殿。今回はまた急な申し出だったな。そういつも対応できるものではないと理解頂きたいものだな」

「もう訳ありませんでした。わたくしも急な申し出は失礼と存じておりましたが、幾分事情が事情、内容が内容でして…少しでも早い方が閣下の為と思慮した次第です」

 きっと二人は良好な関係を築いていたのだろう。それでなければ苦言を呈して入るが、そもそも面会の許しが出る事はなかっただろう。

「事情とな。そこのおなごがその事情とやらだろうか」

 年若い娘、しかも明らかに人族の匂いがする。微かに妙な気配を感じるが、龍族である彼にそれが脅威となる訳などなかった。
 龍族の長である彼が言葉を改めるのも、態度を改めるのも、恩人であるドワーフ族の者達だけだからだ。
 この世界の頂点とも言える存在の彼に恐るものなどある訳がないと周りに控える龍族達もまた見下したような視線を変えることはない。

「こ、此方のお方は全知全能の女神ヴェルムナルドール様で御座います」

「…ほう、そのおなごが神と申すか」

 リコースの言葉に一瞬驚きこそすれど、信じるものはいない。そもそも彼らが崇めるのは武の神アポロレイドールと部族の中のトップである龍族の長ガビロンだけなのだ。

「お試しになりますか?ただ、そうなると相手をするのはアポロレイドールかコートバルサドールですが」

「ほう…我らの神、大陸の覇者アポロレイドール神を化現させることも可能だとでも?」

「化現、まぁ、そうですね」

 ガビロンはリコースからすると目上も目上。決して失礼があってはならない存在だ。だが、リーンはそれ以上の存在でガビロンの発言に大胆不敵な彼女であってもヒヤヒヤさせられている。
 ただリーンにとってはそれはもう、見慣れたもので、彼らの瞬きの間にアポロレイドールの姿に変わる。

「…龍王…。神は五柱ではなく、一柱…。ヴェルムナルドール様はアポロレイドール様で、コートバルサドール様でもあり、また、キャラベリンドールであり…ドール様なのです」

「「「「「…」」」」」

 リコースの説明に言葉を無くす龍族の者達はただただ目の前の出来事を目に焼き付けるように見つめ、ゆっくりと状況を理解していき、顔色を悪くしていく。

「お試しになりますか」

「とんでも御座いません。神よ。我は少し自身を過信していたようで御座います。妙な気配を感じながらもそれを自分の力量ならば、と。貴方様と対峙したのならば我などたちまちチリとなりましょうぞ」

 背後に家臣達を控えさせている手前、威厳を損なう訳にもいかないガビロンにとってはこの状況は手に汗握る状況だと言える。
 本当ならば邪魔なプライドや体裁などかなぐり捨てて全力で謝罪するべきなのは分かっているが、自分が見下していた相手を彼らが見下していた事は見ずとも分かっている。
 彼らを守るためにも自分の首を差し出す覚悟を決めるしか選択肢はなかった。
 寧ろそれで許されるのならば有り難いとまで思う。下手したらこの世界の龍族に纏わる全ての物、事、者が次の瞬間には抹消されているかもしれない。

 これは恐怖とかの話ではない。何に置いても優先すべきものを蔑ろにしてしまったと言う事実に言いようのない焦りのような感情が溢れてくる。

「今日はご協力をお願いに参りました」

「…協力で御座いますか。我に出来ることならばもちろんいくらでも」

「では、ドワーフの王に合わせて貰いたいのです。他にも色々とお願いはあるのですが、それはその後に」

「…かしこまりました」

 滲み垂れる汗を隠す余裕もなく、出来るのは神の言葉を待つだけ。
 そして、無礼だと罵ったリコースの言葉の意味と行動を理解した。彼女からしたらどんなに敬っていても龍王などチリ程の存在になってしまう相手。そしてその龍王にとってもその相手は決して失礼を働いたことのないドワーフ王をもチリにしてしまう存在だった。

「…リコースよ。事情と内容を理解した。全ての事柄を水に流そう」

「有難きお言葉。感謝いたします」

 そこから更に紹介を受け、2日後にドワーフの王バルドゥルと面会することが出来た。
 ドワーフの王バルドゥルはもう既に龍王ガビロンからリーンの正体を聞き及んでいたようで、場内に入ればもうすれ違う全ての者達が深々と額が地面につくのではないかと思うほどに頭を下げて迎え入れてくれた。

「我らの太陽、バルドゥル王。神をお連れいたしました」

「理の全てを知る翡翠の神よ。我が名はバルドゥル・ドュルユク・ファスタン。我らの前に姿を見せて下さったことに感謝致します」

 バルドゥルは威厳はしっかりと保ちつつも、王としては最大限の誠意ある感謝を伝える。

「お手伝い頂きたいことがあります」

「はい。何なりとお申し付けください。我らは常に神と共におりますゆえ」

「バルドゥル様には一度この島を出て行ってほしいのですー

「こ、この島を…ですか…?」
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