神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第四章

対立したとしても

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「その前に自己紹介をしておきましょうか」

 何事にも初めは顔繋ぎが大切だろう。リーンは皆んなが認識しやすいようにヴェルムナルドール成人体になり、真剣な表情で向き合う彼らをリーンは一人一人紹介する。

「此方、エルム帝国の前皇帝の弟君であるハーニアム公爵とその側近であるヒャダルディン様です」

「ベルン・ハーニアムだ。よろしく頼む」

 ヒャダルディンがペコリと頭を下げる。全員が小さく頷く。

「此方は【賢者】を与えたティリス様と聖王国の教皇ビビアン・ヴィカー様です」

「ご紹介に預かりありがとう存じます。リーン様より【賢者】を任されましたティリスです」

「教皇とは名ばかりですが、ビビアン・ヴィカーです」

「此方はダーナロ王国の第一王子であり、【勇者】を任せましたキングストン殿下と侍従のクローテライト様です」

「よろしく頼む」

「それから彼女はヴェルスダルムのヴェールズ帝国、女帝で【錬金王】でもあるエリザベス陛下と皇配であるレオン様です」

「私がエリザベス・ヴェールズ・アルチェンロですわ。よろしくですわ」

「一番目の夫、レオンです」

「最後になりましたが、アルエルムのデロスを治るバルドゥル王とガビロン公爵様です」

「今は女神様のご配慮により此方にお世話になっている。他大陸のしかも王族である私を受け入れてくれたヴェールズの女帝には感謝しておる」

「女神様のすることに私には何の文句もないですわ」

「臣下の龍族ガビロンです」

 リーンの紹介に合わせてそれぞれが挨拶し、皆も静かにこくりと頷く。
 
「【賢者】に【勇者】、【錬金王】ですか。何ともまあ、素晴らしい集まりで私は場違いに感じますれば」

「何を仰いますの?公爵のお噂は此方にも届いておりますのよ?」

 場を和ませようと楽しげに話すハーニアム公爵にエリザベスも加わる。彼らがとても協力的でリーンは心の中で小さくため息を吐く。

「皆さま、大変お忙しい身でありますので…不躾ながら早速本題に入らせて頂きます」

 リーンの言葉に合わせて、近くで控えていたミモザとラテ、キールが参加者にそれぞれ一枚ずつ例の物を配る。

「口で説明しても良いのですが、見て頂く方が早いかと思いまして。キール」

「はい」

 寄り添うようにキールがリーンの横に立つ。
 リーンに身の全てを預けるかのような恍惚とした表情のキールを嗜めるようにラテが彼の足を踏む。

「キール。手を」

「はい…」

「此方は皆さまもお馴染みである水晶鏡を小型化したものです。勿論、機能もそのままです。使い方はこの水晶鏡に…少しチクッとしますね?」

「…はい」

「一滴でいいので血判を押します」

 リーンがキールの傷一つない綺麗な手を取り、その指先に針を当てる。ぷくりと赤い雫が出てきて、キールはそれを水晶鏡に押し付ける。

「血液を介して個人の認識、情報の保護を行います」

「他の者には使えないと言うことですね」

「その通りです」

「まずは冒険者などにと言うお話し出したが、我が聖王国は冒険者とても少ないので聖職者にも回したいと思っておりますが…」

「そう言うお話なら全て其方にお任せします。いずれは全国民が当たり前に持っている、そんな風にしたいと思っております」

 国のトップ達を集めたのはこの水晶鏡を一気に広める為。こう言うものはとにかくスピード感が大切。便利であることをゆっくり解くよりも権力者から強制された方がより広く伝わるだろう。

「ご質問等はございますか?」

「…実際にやってみても?」

「どうぞ」

 事前に大まかな話しを聞いていても、実物を見るのはまた違うのだろう。興味津々のキングストンはミモザから針を借りると躊躇なく血判を押し、水晶鏡をマジマジと見つめる。
 キングストンはリーンからタブレットも貰っているから水晶鏡にもあまり抵抗が無いのかもしれない。

「クロ、見てみろ」

「…私にはただの素晴らしい手鏡にしか見えません」

「なるほど。これは便利だな」

「ご覧の通り、本人が開示を認めない限り他者に能力を盗み見られる心配はありませんし、反対に認めれば開示したい部分のみを写すこともできます。これは脅しや脅迫、洗脳などの類も効きません。当然、偽装もすり替えも出来ません」

「リーン。便利ついでに聞きたいのだが、これには他の使い道はないのだろうか」

「はい、御座いません」

 キングストンはきっとタブレットの事を言いたいのだろう。流石にそれだけの能力をつけるのは難しい。
 …ただ、アルエルムでの作業後は出来る。あそこにはラピスラズリが豊富にあるからだ。
 でも、タブレットは今はこれ以上作る気はない。
 もし、作ったとしたら。
 それはこの世界の崩壊に繋がりかねないからだ。

 便利なのは分かる。だが、その引き換えの代償が大きすぎる。情報が一瞬のうちに遠くの者へ伝わると言うことはそれだけで戦争がどれだけ有利に動くかは明らかだ。

「殿下が危惧していることは起こりませんよ」

「…ならいい」

 キングストンが率先して聞いてくれたお陰で特に説明が必要なことはもう無さそうだ、とリーンはサラリと全員の顔を見る。

「では…。もう聡明である皆様から想像に容易いかもしれませんが、これを広める意義について少しだけ話させて頂きます」

「「「「…」」」」

「この世界は今とある一人の男に管理されています。その男は簡単に言うと私の前任者のような者です。ですが、神の意に沿わない事をしていて、管理者としての資格を剥奪されています。…彼にはもう、その残り香程度の力しかありません」

「…ディアブロ、ですね」

「はい。彼の者はこの世界の発展を恐れている。彼は世界の終わりを一度見ているのです」

「終わりを…?」

「ベンジャミンの大冒険。その物語の最後にある一文…」

「その様子に呆れたドールはベンジャミン以外の世界の全てを消し去り一から作り直した。しかし、その後もベンジャミンが望んでいた平和な世界は訪れない。欲深き者達により、光を闇が覆い、世界は退廃へ向かうのだった。いつの日かベンジャミンの願いを叶える。その日を夢見て…彼らは世界を見守り続ける」

 一語一句間違える事なく淡々と誦じたリヒトにリーンは頷く。

「実際には全てを作り直したのはドールの力を手に入れたベンジャミン自身…ディアブロです」

「ベンジャミンは…ディアブロ…?」

「あの物語は、事実を元にディアブロがこの世界の住民達を管理するために作ったものです」

 この世界は一度全てが消えた。
 神もそれを許した。

「…発展を妨げるディアブロを排除した神は…何をお望みなのですか?」

「神は……何も望んでいません。いえ、何も、と言うのは間違いですね…今すぐ全てが消えようとも構わないと言ってました」

「リーンはそれを止めるためにここにいる」

 何とも気まぐれな神だ。

「では、何故…」

「何と言えば伝わるか…。ただ、消える、衰退する事は許されていますが、現状を維持する事は許されないようです」

 私のしたいようにしていい。
 神はそう言った。でも、私がディアブロと同じ考えなら此処には連れて来られなかっただろう。

「私は世界を動かします。例えディアブロと対立しようともです。……協力して頂けますね?」

「「「「…」」」」

 リーンの強い決意を聞いて各国の重鎮である彼らはゴクリと喉を鳴らした。








 
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