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かわいい仔犬ちゃん

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「は?」
「はっ!」

しまった。つい可愛くて仔犬扱いしてしまった。私ドジっ子なのよね。王家の者のくせに詰めが甘すぎるとよく叱られた。

「じゃなくて!私は人間で夜目がききませんの。じっくり陛下のお顔を拝見したいので、少し身を屈めて頂けません?」
「……何をするつもりだ」

些細なお願いに、陛下は眉を顰めて胡散臭そうにこちらを見ている。

「いやだわ、私はか弱い人間の女ですのよ?何もできませんわ。こんなひらひらの薄い下着一枚で武器も隠せませんし。もちろん毒も持参してませんわよ?当然じゃないですかなんで結婚して早々に人殺し犯にならなきゃいけないんですかアホらしい」
「……」

信用して欲しくて無駄にペラペラ喋ってしまった。余計怪しいな、これじゃあ。
己の迂闊さと詰めの甘さに内心で反省しながらも、鍛え上げられた王女の仮面の下に隠して顔には出さず、私はニッコリと可愛いワンワンのお耳がついた陛下を見上げた。

「と言うわけで、ちょっと屈んでくださいません?」
「お前、王国の姫のくせに砕けすぎじゃないか?偽物じゃないだろうな?」

本気で怪しむ眼差しで私をギランと見据えてくる。やーん、青灰色の瞳がクールで素敵。銀色のお耳と相まってナイスだわ。神様さすがの神作画よ。

「こんな金髪紫目で父国王にそっくりの顔してるのに?替え玉じゃありませんわよ、ご心配なら魔力鑑定でもなんでもしてくださいませ」

中央神殿に依頼して行う血縁鑑定の最高峰検査を己から提案すれば、私と同じく詰めが甘いタイプなのか、「いや、そこまでは」と遠慮してきた。良い仔だな。

「我が王家はわりとフリーダムでTPOを弁えれば何してもオッケーだったので、そのせいでこんな感じに仕上がったんですの。お気になさらないで?」
「てぃーぴおー?」
「まぁそれは置いておいて」

つい前世のワード出しちゃったよ。こういうことを頻繁にやらかす天然で抜けてる性格、まぁ要はアホさゆえに、王国でも割と浮いていた私だ。相手のクエスチョンマークを受け流すのはお手のものである。

「とりあえず座ってくださいませ。妻となった女と初夜の代わりに、それくらいのお願い聞いてくださってもよろしいでしょ?」
「……背後を取られたくない、怪しいから行きたくない、お前がこっちに来い」
「警戒心マックスじゃん」

まぁこっちの世界の女性や雌って、慎ましく清楚でナンボって感じだし、女からアクション起こすことがほぼ皆無だから、警戒するのも無理はないか。
私は大人しく寝台から立ち上がり、入り口の扉を背にして毛を逆立てながらこちらを睨みつけてくる皇帝のところに向かった。別に急ぎもせずテクテク歩きで。

「陛下、お名前でお呼びしてもよろしくて?」
「嫌だ」
「ありがとうございます、ルーク様」
「嫌だと言ったが?」
「イヤヨイヤヨもスキのうちという言葉が我が祖国にはありまして」
「なんでだ!人間はやはり頭がおかしい!」
「否定しませんわ。でもご安心なさいませ!セクハラに悪用されまくりでしたので、その文化は廃れつつあります」

でも私は採用いたします。
だってこれからルークに、セクハラするつもりなのですもの!
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