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血飛沫が飛び、僕の瞳は絶望で赤く染まった。あぁ、どうして。
しおりを挟む閑静な住宅街の中の、人の少ない公園。
カメラのシャッター音だけが響いていたその場所に、突然の悲鳴が上がった。
「きゃあああああああああ」
数人いた見物人の中から、一人が出刃包丁片手に走り出る。
動揺して固まっていたスタッフは、逃げ出す者と押さえようとする者に別れ、けれどがむしゃらに振り回される凶器に、なかなか近づくことができない。
あちらこちらで悲鳴が上がり人々が逃げ惑う。
完全に恐慌状態だ。
「早く、警察を!」
「悠、瞬!早くこっちに!」
焦った声が悲鳴の中から聞こえてくる。
僕はその声の方に逃げようとしながら後ろを振り返り、その場に立ち尽くす悠を見た。
「ちょ、悠!早くこっちに!」
恐怖に動けないのか、悠は暴れる凶刃をぼんやりと見つめるだけだ。
そして包丁を振りかざしている女は、明らかに悠の元へ向かっていた。
「あはははっ、ついに成敗される日が来たのよ!」
狂ったような大声を上げながら、女が止めようとする男達の中を突き進む。
押さえ込もうとする人間達に向けて、女は包丁を思い切り放り投げる。
「うわっ」
人々が慌てて避けたことによってできた隙間を駆け抜け、女は胸元から新しい刃を取り出した。
遠目から見ても分かる。
太陽の光を反射してぎらついているのは、刃先の鋭いナイフだ。
「だめだ、悠!逃げて!!」
全力で駆け寄っても、間に合わない。
女の方が早い。
「死ね悪魔!」
絶叫する僕の目の前で、女は高らかに叫んで、ナイフを振り下ろした。
「っ、ぁ」
まるで凶刃を待つかのように見つめる悠の顔へ、銀の光が残像を引きながら襲いかかる。
「ゆうッ!!」
目の前で飛び散る、真っ赤な血飛沫。
ナイフは上から下へ、右から左へと駆け抜ける。
悠の左腕が切り裂かれ、左眼からは真っ赤な涙が滂沱と流れ落ちる。
「ゆぅうううーッ」
ふらつきながらも逃げようとしない悠の前で、高く振り上げられたナイフ。
心臓を目掛けて振り下ろされる狂刃の前に、僕は必死で飛び出した。
悠に飛びつき、押し倒すようにして抱きしめた。
「うぁっ」
「あっ、ああああっ!いやァアアアアアア!」
右肩から背中にかけて焼けるような痛みが走り、背後から狂ったような悲鳴が聞こえた。
悠の左胸を狙っていた血濡れた刃は、僕の背中を切り裂いたのだ。
「あぁあぁあああ!王子様!王子様のお体が!!」
切りつけたはずの犯人の悲鳴とともに、ナイフは投げ捨てられる。
ガチャンッという硬い音とともに、女は力尽きたように呆然と地面に蹲った。
「押さえろ!」
「あぁあああ!美しいお肌が!あぁ、王子様信者様!ごめんなさいごめんなさいぃぃ!」
狂ったように謝罪しながら凶器を手放した女が、何人ものスタッフに押さえ込まれる様を目の端で捉えて、僕は気づいた。
これは僕のファンの仕業なのだと。
「フザ、けるな」
怒りと悲しみと衝撃と、あらゆる感情で頭がぐちゃぐちゃだ。
けれど、今は、それよりも。
「悠、悠!大丈夫か!?すぐに病院に連れていくから!」
悠の左腕からの止まらない出血を、必死な思いで圧迫止血する。
腕の中で自分の顔を押さえながら呆然としている悠に、僕は泣きながら声をかけた。
「……しゅ、ん、は大丈夫?……どっか、痛い……?」
「僕は平気だよ!ちょっと背中をかすったくらいだから。それより悠、悠が……あぁ、血が止まらない!」
血まみれの顔で、腕からもだらだらと出血しながら僕を気遣う悠に、僕は泣きながら傷口を抑える。
どんどんと流れ出ていく血液が悠の命のようで、僕は必死に唇を噛み締めて嗚咽を堪えた。
「しゅ、ん、背中?怪我したの?見えな、い」
悠の右手が弱々しく僕の背中をまさぐる。悠は僕の胸に顔を埋めたまま、必死で僕の背中を確かめようとしている。
血液が目に入って見えないのかと、悠の顔を確認しようとして、僕は凍りついた。
「あ、……ゆ、う。目、が」
悠の顔は、右目の中心に大きな傷があり、悠の眼球は明らかに潰れていた。
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