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どうしてこんなことに!あいつのせい……じゃ、なかったのか?1
しおりを挟むニュースで僕らが襲われた事件についての速報が流れた。
退屈に倦んでいた世間にとっては格好のネタだったのだろう。
半日足らずの間にあらゆる憶測が流れて収拾がつかなくなったため、手当を終えた僕は一人、記者会見をすることになった。
悠はまだ、手術中だ。
会見までの控室。
病院からの連絡をイライラしながら待っている間、ふと開いたネットニュースについたコメントに、目の前が怒りで真っ赤に染まった。
「とうとうユーが刺されたらしい」
「マジかウケる」
「悪魔祓い師って今もいたんだ」
「悪魔?なんで悪魔払い?」
「最近、界隈では悪魔と呼ばれていたんだよ、あの人」
「てか生きてるん?面白くないわー」
「もう見たくない。飽きた」
「同じ顔二つは食傷気味。重い。目が胃もたれ」
「でも顔を切られたってことは、もう出てこないんじゃない?」
「おお、やったー。あの顔見なくて済むんだ」
「でもまたシュンはユーにかかりきりになるんじゃない?」
「兄離れ弟離れできなさすぎー」
「束縛兄だな。厄介なお荷物抱えて、シュンも可哀想に」
「いっそ死んでたらシュンも解放されたかもしれないのにねー」
「神様まじイジワル」
悠を襲った理不尽な暴力が、気楽な娯楽として消費されている。
そして、その方が面白いから、なんてふざけた理由で死を願われている。
僕がどれほど悠を愛しているか、必要としているかも知らないで、勝手気儘なことばかり言う人々。
悠を手放せないのは、悠から離れられないのは、きっと僕の方なのに。
勝手な憶測で、僕から悠を奪おうとする世界に、僕は初めて心の底からの憎しみを覚えた。
「全部、消えちゃえばいいのに」
僕から悠を奪おうとするものなんて、全部、消えてしまえばいい。
「瞬、もうすぐ時間……どうしたんだ?」
「何が?」
ドアを開けて入ってきた社長は、ゾッとしたように一歩引いて僕の顔を凝視している。
「その顔、……さっきより、ずっとひどいよ。怖い」
「怖い?ふふ、こんなに可愛らしい顔なのに、ひどいね」
軽やかに言い返し、僕は立ち上がる。
「さて、記者会見か。楽しみ」
「ちょ、瞬、落ち着いて!何を言う気だい!?」
固まっている社長の横をすり抜けて歩き出せば、社長は金縛りが解けたように慌てて追いかけてきた。
焦ったように訊かれる言葉に、僕は笑って返す。
「何も言わないよ。聞かれたことには答えるけどね」
『今回の犯人は、女性だったそうですね。お知り合いでしたか?』
「いえ、まったく知らない相手でした」
『では、無関係の他人に、いきなり斬りかかられた、と。……犯行時、女は「王子様」と叫んでいたそうですが』
「そうですね。僕……僕らは、犯人をまったく知りません。向こうは知っていたようですけれど」
『犯人は、お二人のファンだった、と?』
「ははは、ファン、……そうですね、おそらくは僕のファンだったのだと思います」
『では、悠さんには関係ないと』
「はい、そうです。だから、僕がこの世で一番愛する悠に、逆恨みして犯行に及んだのではないかと思います」
『なんと……そのような、危険なファンの存在は、分かっていたのでしょうか?』
時には氷点下を感じさせるような冷たい微笑を浮かべながら、僕は淡々と質疑応答を続ける。
「知りませんでしたね。でも、僕にはこういうおぞましいファンがいるようです。しかも、たくさん」
吐き捨てるように答える。
心の底からの嫌悪と憎悪を込めて。
「女は、同志がたくさんいる、と語っていたそうですから、これからも類似の事件が起こらないとは言えないかもしれません」
不穏な発言に、ざわりと、取材陣がどよめく。
動揺の走る会場を、僕はどこか正気を手放したような気分で、笑みすら浮かべて見回した。
「いやぁ、吐き気がしますね!あの女に、悠が触られたと思うだけで腹が立つ。むしろ、あんな奴らが悠と同じ空気を吸うことさえ許し難いですよ。全員この世から消してしまいたいくらいです」
「ちょ、ちょっと、瞬!」
過激すぎるコメントに、慌てた社長からストップがかかるが、僕は構わず話し続けた。
「でも、こんなこと二度目はありません。悠の隣を手放す気は無い。この世の何者にも、譲る気は、毛頭ありません。だから」
にっこりと、天使の微笑みと謳われるにふさわしい笑みを浮かべ、断言する。
「次にこんなことがあったら、僕は死を以って抗議します」
ひゅっと息を呑む音が聞こえた。
静まり返った会場に、感情の削ぎ落とされた僕の声だけが響く。
「彼を傷つけるのならば、僕を殺すつもりでやりなさい。あなた方を僕の手で殺してなんかやりませんよ。喜ばせるつもりはありませんからね。僕の世界から、あなたたちを消します」
テレビの向こうにいる敵達に向かって、僕は淡々と宣告する。
そして、怯えたように凍りついている記者たちの前で、どこまでも美しく笑った。
「あなた方が最も苦しむ方法でもって、僕は復讐してやりましょう」
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