生まれる前から一緒の僕らが、離れられるわけもないのに

トウ子

文字の大きさ
14 / 25

どうしてこんなことに!あいつのせい……じゃ、なかったのか?1

しおりを挟む



ニュースで僕らが襲われた事件についての速報が流れた。
退屈に倦んでいた世間にとっては格好のネタだったのだろう。
半日足らずの間にあらゆる憶測が流れて収拾がつかなくなったため、手当を終えた僕は一人、記者会見をすることになった。
悠はまだ、手術中だ。

会見までの控室。
病院からの連絡をイライラしながら待っている間、ふと開いたネットニュースについたコメントに、目の前が怒りで真っ赤に染まった。



「とうとうユーが刺されたらしい」
「マジかウケる」
「悪魔祓い師って今もいたんだ」
「悪魔?なんで悪魔払い?」
「最近、界隈では悪魔と呼ばれていたんだよ、あの人」
「てか生きてるん?面白くないわー」
「もう見たくない。飽きた」
「同じ顔二つは食傷気味。重い。目が胃もたれ」
「でも顔を切られたってことは、もう出てこないんじゃない?」
「おお、やったー。あの顔見なくて済むんだ」
「でもまたシュンはユーにかかりきりになるんじゃない?」
「兄離れ弟離れできなさすぎー」
「束縛兄だな。厄介なお荷物抱えて、シュンも可哀想に」
「いっそ死んでたらシュンも解放されたかもしれないのにねー」
「神様まじイジワル」



悠を襲った理不尽な暴力が、気楽な娯楽として消費されている。
そして、その方が面白いから、なんてふざけた理由で死を願われている。
僕がどれほど悠を愛しているか、必要としているかも知らないで、勝手気儘なことばかり言う人々。

悠を手放せないのは、悠から離れられないのは、きっと僕の方なのに。
勝手な憶測で、僕から悠を奪おうとする世界に、僕は初めて心の底からの憎しみを覚えた。

「全部、消えちゃえばいいのに」

僕から悠を奪おうとするものなんて、全部、消えてしまえばいい。



「瞬、もうすぐ時間……どうしたんだ?」
「何が?」

ドアを開けて入ってきた社長は、ゾッとしたように一歩引いて僕の顔を凝視している。

「その顔、……さっきより、ずっとひどいよ。怖い」
「怖い?ふふ、こんなに可愛らしい顔なのに、ひどいね」

軽やかに言い返し、僕は立ち上がる。

「さて、記者会見か。楽しみ」
「ちょ、瞬、落ち着いて!何を言う気だい!?」

固まっている社長の横をすり抜けて歩き出せば、社長は金縛りが解けたように慌てて追いかけてきた。
焦ったように訊かれる言葉に、僕は笑って返す。

「何も言わないよ。聞かれたことには答えるけどね」




『今回の犯人は、女性だったそうですね。お知り合いでしたか?』
「いえ、まったく知らない相手でした」

『では、無関係の他人に、いきなり斬りかかられた、と。……犯行時、女は「王子様」と叫んでいたそうですが』
「そうですね。僕……、犯人をまったく知りません。向こうは知っていたようですけれど」

『犯人は、お二人のファンだった、と?』
「ははは、ファン、……そうですね、おそらくはファンだったのだと思います」

『では、悠さんには関係ないと』
「はい、そうです。だから、に、逆恨みして犯行に及んだのではないかと思います」

『なんと……そのような、危険なファンの存在は、分かっていたのでしょうか?』

時には氷点下を感じさせるような冷たい微笑を浮かべながら、僕は淡々と質疑応答を続ける。

「知りませんでしたね。でも、僕にはこういうおぞましいファンがいるようです。しかも、たくさん」

吐き捨てるように答える。
心の底からの嫌悪と憎悪を込めて。

「女は、同志がたくさんいる、と語っていたそうですから、これからも類似の事件が起こらないとは言えないかもしれません」

不穏な発言に、ざわりと、取材陣がどよめく。
動揺の走る会場を、僕はどこか正気を手放したような気分で、笑みすら浮かべて見回した。

「いやぁ、吐き気がしますね!あの女に、悠が触られたと思うだけで腹が立つ。むしろ、あんな奴らが悠と同じ空気を吸うことさえ許し難いですよ。全員この世から消してしまいたいくらいです」
「ちょ、ちょっと、瞬!」

過激すぎるコメントに、慌てた社長からストップがかかるが、僕は構わず話し続けた。

「でも、こんなこと二度目はありません。悠の隣を手放す気は無い。この世の何者にも、譲る気は、毛頭ありません。だから」

にっこりと、天使の微笑みと謳われるにふさわしい笑みを浮かべ、断言する。

「次にこんなことがあったら、僕は死を以って抗議します」

ひゅっと息を呑む音が聞こえた。
静まり返った会場に、感情の削ぎ落とされた僕の声だけが響く。

「彼を傷つけるのならば、僕を殺すつもりでやりなさい。あなた方を僕の手で殺してなんかやりませんよ。喜ばせるつもりはありませんからね。

テレビの向こうにいる敵達に向かって、僕は淡々と宣告する。
そして、怯えたように凍りついている記者たちの前で、どこまでも美しく笑った。

「あなた方が最も苦しむ方法でもって、僕は復讐してやりましょう」






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

アルファの双子王子に溺愛されて、蕩けるオメガの僕

めがねあざらし
BL
王太子アルセインの婚約者であるΩ・セイルは、 その弟であるシリオンとも関係を持っている──自称“ビッチ”だ。 「どちらも選べない」そう思っている彼は、まだ知らない。 最初から、選ばされてなどいなかったことを。 αの本能で、一人のΩを愛し、支配し、共有しながら、 彼を、甘く蕩けさせる双子の王子たち。 「愛してるよ」 「君は、僕たちのもの」 ※書きたいところを書いただけの短編です(^O^)

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

処理中です...