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神殿送りになった転生ヒロイン、隣国の皇太子のMっ気を開花させてしまったので責任を取ります
聖女のSはサービスのSです!1
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「…………え?」
まるで聞き取れなかったように、アルベルトがぽかんと私を見てくるので、私はにっこり笑ってはっきりと繰り返した。
「嫌よ、嫌。お断りするわ」
「な、なんだとぉおおお!?」
なんでそんなに衝撃を受けているのか。むしろなぜ即答で「ハイヨロコンデ!」と了承すると思ったのか。
出会ってから時間も経ってないし、出会ってからお互いひたすら血だるまだし、あとアナタの顔はストライクじゃないって最初に言ったよね?
「なんでだ!?お前、早く結婚したいって何回も呻いていただろう!?」
「あら、よく聞いてたわね」
「だろう!?なのに何故断る!?」
意味不明な強行軍に疲弊して、スパダリ旦那様にベッドでエロくてキモチイイマッサージをしてもらって、そのまま眠りたいって夢想してたのよ。現実逃避で。
「あのねぇ~?結婚したいってのは、私好みのイケメンとイチャラブエロエロ甘々な新婚生活を送りたいって意味であって、相手が誰でも良いわけじゃないのよ」
「お、俺じゃ不服だと言うのか!?」
「まぁ確かにイケメンだけど、好みのど真ん中じゃないのよね」
「この俺が!?」
昔の漫画ならガガーンッ!と効果音でもつきそうな、見事なショック顔である。本当に断られるなんて露ほどにも思ってなかったのね。とんだ自信家だわ。
「そういう自信過剰なところが癪に障るし、常に片方だけ口角上げてる表情管理が鼻につくのよね」
「ひょうじょうかんり?」
「常に人を馬鹿にして自分の方が偉いぜって感じの顔しててムカつくって意味」
「なっ……!?」
キャラクターを徹底していると言えばそうかもしれないが、常にそんなウザ顔しないで欲しい。スチルで見てるだけなら「俺様皇太子のキメ顔これなんだな」ってスルーできるけど、リアルで見続けるのはキツイ。というかコイツの性格が滲み出ていて、シンプルにウザい。
「だ、だが、俺と結婚すれば大帝国の妃だぞ!?女としての至上の位だ、上り詰めたいと思わないのか!?」
権力至上主義~!まぁこの世界の女性、特に貴族女性ならその価値観の方が多いかもしれないけど、あいにく私は疲れ切った現代日本からの転生者な上に、今世も平民だしね。
「まったく思わないわね!チヤホヤされたいのと、権力が欲しいのって別の願望なのよね」
図々しいことを述べれば、アルベルトは絶句している。パクパクと口を開閉させるだけのオモチャと化したアルベルトに、私は彼の普段の表情を真似て、片方の口角をあげた皮肉顔でアッサリと言い放った。
「ましてや、好きでもない男のために、窮屈でお仕事も大変な皇妃様になりたいとはちっとも思わないわね」
「す、好きでもない、だとっ……ッ」
アルベルトは息を飲み、くらりと体を揺らした。膝から崩れ落ちそうなレベルで衝撃を受けているらしい。
「お前、まさか、す、好きじゃないと言うのか!?この俺が!?」
「あっははは!何その自信。その自信の出所が知りたいわ」
面白すぎて爆笑してしまった。なんでそんなに自分に自信が持てるの?客観性とか皆無なの?
「なんで好かれてると思い込んでいたのよ?私、アナタのことを好きだなんて、一度でも言ったかしら?」
「なっ……そ、そんな……!?」
「何でそんなにショック受けてるのよ」
「好意を抱かれないなんて……どんな女でも俺に媚を売ってきていたのに……みんな俺の妃になりたいと競い合っていたのに……!?」
「ぶっ」
びっくりするほどピュア、すなわちアホなことを言うアルベルトに、私は思わず吹き出した。
「っくく、馬鹿ねぇ。アナタに媚を売ろうとしてきた女の子たちは、全員がアナタに惚れてるとでも思ってるの?親に皇太子妃を狙えとでも言われていたのではなくて?そもそも貴族令嬢全員と接したことがあるの?あなたに気がある子しか近づいてきてないんじゃない?」
「ううううぅ」
頭を抱えたアルベルトが、次第に顔色を悪くしていく。己の勘違いに気がつき恥ずかしいのだろう。世界中の女に好かれてると思っていたとか、とんでもない黒歴史よねぇ。
「それに、皇太子の地位にある男に、家臣の位にしかない女の子達が本音を言うわけないでしょう?媚を売ってたのか気を遣ってたのか、好意を抱いていたのか怯えていたのか、女の心の機微を分からないようじゃあ、まだまだお子様ね、アナタ」
「うううううぅ……うぅ……」
遠慮なく言わせて頂いたら、アルベルトが真っ赤になってしゃがみ込んでしまった。ガタイがいいのに小さく縮こまっている様は、割とキュートだ。とてもかっこ悪くて可愛い。私は男の情けなさにキュンとくるタイプなのだ。
「じゃあ、お、お前は、俺のことが嫌いだと言うのか!?」
「いや、嫌いじゃなくても、結婚するほど好きとは限らないでしょ?」
泣きそうな顔で問いただしてくるアルベルトに、私は軽く答える。そんな極端な二択を出されても困る。なにせ私はやる気のない現代日本のゆとり世代なのだ。私のやる気スイッチをオンにしてくれないと、ヤル気が出ない。
「そもそもアルベルト、アナタなんで求婚したの?」
涙目のアルベルトを見下ろして、私は艶然と微笑んだ。床に縮こまっている残念な色男を眼差しで追い詰め、私は自分の内なる小悪魔と嗤い合う。
さぁ、早く平伏して、私を乞い求めなさい。
早く私をその気にさせてちょうだいな。
まるで聞き取れなかったように、アルベルトがぽかんと私を見てくるので、私はにっこり笑ってはっきりと繰り返した。
「嫌よ、嫌。お断りするわ」
「な、なんだとぉおおお!?」
なんでそんなに衝撃を受けているのか。むしろなぜ即答で「ハイヨロコンデ!」と了承すると思ったのか。
出会ってから時間も経ってないし、出会ってからお互いひたすら血だるまだし、あとアナタの顔はストライクじゃないって最初に言ったよね?
「なんでだ!?お前、早く結婚したいって何回も呻いていただろう!?」
「あら、よく聞いてたわね」
「だろう!?なのに何故断る!?」
意味不明な強行軍に疲弊して、スパダリ旦那様にベッドでエロくてキモチイイマッサージをしてもらって、そのまま眠りたいって夢想してたのよ。現実逃避で。
「あのねぇ~?結婚したいってのは、私好みのイケメンとイチャラブエロエロ甘々な新婚生活を送りたいって意味であって、相手が誰でも良いわけじゃないのよ」
「お、俺じゃ不服だと言うのか!?」
「まぁ確かにイケメンだけど、好みのど真ん中じゃないのよね」
「この俺が!?」
昔の漫画ならガガーンッ!と効果音でもつきそうな、見事なショック顔である。本当に断られるなんて露ほどにも思ってなかったのね。とんだ自信家だわ。
「そういう自信過剰なところが癪に障るし、常に片方だけ口角上げてる表情管理が鼻につくのよね」
「ひょうじょうかんり?」
「常に人を馬鹿にして自分の方が偉いぜって感じの顔しててムカつくって意味」
「なっ……!?」
キャラクターを徹底していると言えばそうかもしれないが、常にそんなウザ顔しないで欲しい。スチルで見てるだけなら「俺様皇太子のキメ顔これなんだな」ってスルーできるけど、リアルで見続けるのはキツイ。というかコイツの性格が滲み出ていて、シンプルにウザい。
「だ、だが、俺と結婚すれば大帝国の妃だぞ!?女としての至上の位だ、上り詰めたいと思わないのか!?」
権力至上主義~!まぁこの世界の女性、特に貴族女性ならその価値観の方が多いかもしれないけど、あいにく私は疲れ切った現代日本からの転生者な上に、今世も平民だしね。
「まったく思わないわね!チヤホヤされたいのと、権力が欲しいのって別の願望なのよね」
図々しいことを述べれば、アルベルトは絶句している。パクパクと口を開閉させるだけのオモチャと化したアルベルトに、私は彼の普段の表情を真似て、片方の口角をあげた皮肉顔でアッサリと言い放った。
「ましてや、好きでもない男のために、窮屈でお仕事も大変な皇妃様になりたいとはちっとも思わないわね」
「す、好きでもない、だとっ……ッ」
アルベルトは息を飲み、くらりと体を揺らした。膝から崩れ落ちそうなレベルで衝撃を受けているらしい。
「お前、まさか、す、好きじゃないと言うのか!?この俺が!?」
「あっははは!何その自信。その自信の出所が知りたいわ」
面白すぎて爆笑してしまった。なんでそんなに自分に自信が持てるの?客観性とか皆無なの?
「なんで好かれてると思い込んでいたのよ?私、アナタのことを好きだなんて、一度でも言ったかしら?」
「なっ……そ、そんな……!?」
「何でそんなにショック受けてるのよ」
「好意を抱かれないなんて……どんな女でも俺に媚を売ってきていたのに……みんな俺の妃になりたいと競い合っていたのに……!?」
「ぶっ」
びっくりするほどピュア、すなわちアホなことを言うアルベルトに、私は思わず吹き出した。
「っくく、馬鹿ねぇ。アナタに媚を売ろうとしてきた女の子たちは、全員がアナタに惚れてるとでも思ってるの?親に皇太子妃を狙えとでも言われていたのではなくて?そもそも貴族令嬢全員と接したことがあるの?あなたに気がある子しか近づいてきてないんじゃない?」
「ううううぅ」
頭を抱えたアルベルトが、次第に顔色を悪くしていく。己の勘違いに気がつき恥ずかしいのだろう。世界中の女に好かれてると思っていたとか、とんでもない黒歴史よねぇ。
「それに、皇太子の地位にある男に、家臣の位にしかない女の子達が本音を言うわけないでしょう?媚を売ってたのか気を遣ってたのか、好意を抱いていたのか怯えていたのか、女の心の機微を分からないようじゃあ、まだまだお子様ね、アナタ」
「うううううぅ……うぅ……」
遠慮なく言わせて頂いたら、アルベルトが真っ赤になってしゃがみ込んでしまった。ガタイがいいのに小さく縮こまっている様は、割とキュートだ。とてもかっこ悪くて可愛い。私は男の情けなさにキュンとくるタイプなのだ。
「じゃあ、お、お前は、俺のことが嫌いだと言うのか!?」
「いや、嫌いじゃなくても、結婚するほど好きとは限らないでしょ?」
泣きそうな顔で問いただしてくるアルベルトに、私は軽く答える。そんな極端な二択を出されても困る。なにせ私はやる気のない現代日本のゆとり世代なのだ。私のやる気スイッチをオンにしてくれないと、ヤル気が出ない。
「そもそもアルベルト、アナタなんで求婚したの?」
涙目のアルベルトを見下ろして、私は艶然と微笑んだ。床に縮こまっている残念な色男を眼差しで追い詰め、私は自分の内なる小悪魔と嗤い合う。
さぁ、早く平伏して、私を乞い求めなさい。
早く私をその気にさせてちょうだいな。
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