俺の幼馴染がエロ可愛すぎてヤバい。

ゆきゆめ

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銀色の思い出(1)

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 最近、ヒロさんとあまり会えていない。もちろん教室では同じ空間にいるけれど。
 朝も、昼休みも、放課後も。それぞれ体育祭の練習で忙しい。

 ヒロさんは特に、ダンスに苦戦しているみたい。去年なんかはダンスを諦めて、後ろで軍旗を振っていたのに。
 今年はちゃんと踊るみたいです。
 
 ヒロさんのダンスを見られるのは少し楽しみかも。

 でもやっぱり、寂しいです。
 それに、ヒロさんが星乃さんや、白軍の団長さんと一緒にいるところを見ると心がモヤッとします。

 嫉妬、してしまいます。

 私の居場所が盗られてしまったみたいで、なんだかとても悲しくなる。
 胸がとても苦しくなる。


 それを紛らわすかのように、私は部屋のベッドに飛び込んだ。
 お風呂上がりの身体はポカポカしていて、ベッドに寝転がるとすごく気持ちがいい。

 それから、私は近くの棚に手を伸ばす。取り出したのは1冊のアルバム。

 ほとんど、私が撮ったものだ。

 ヒロさんは、私が事あるごとにスマホを構えていることに気づいているだろうか?

 このアルバムには出会った頃から今までの、ヒロさんとの思い出が全て詰まっています。

 今日の私はとてもナイーブでな気分。そんな時はいつも、昔のことを思い出す。

 特に思い出すのはやっぱり、出会った頃のこと。

 2人の、最初の思い出。

「ちっちゃいヒロさんも可愛い……」

 アルバムの最初の方をめくると、そこには出会って間もない頃のヒロさんの姿が。
 とても愛おしくて、思わず写真を撫でてしまう。

 そこにはかけがえのない、私とヒロさんだけの特別が詰められているから。

 今日まで続くはずの、私たちだけの銀世界が広がっているから。

 今夜も私は、あの頃に想いを馳せるのだ。



✳︎ ✳︎ ✳︎


 ——10年前。

 私は小さな池の水面を見つめていた。
 近所の公園。桜の森。その最奥だ。

 そこに映るのは幼い私。
 白銀の少女だ。

「なんでユキの髪の毛、こんな色なんだろ……みんなは黒なのに……」

 この頃の私はいつもひとりだった。
 ぬいぐるみのぴょん吉さんは一緒だけど、お喋りはしてくれない。

 お母さんから受け継いだ、きれいな、銀色の髪。お母さんと同じこの髪が、私の自慢だったはずなのに。

 クラスのみんなとは違うから。
 男の子たちによくからかわれた。
 女の子たちには避けられた。
 
 だから、この銀色を嫌いになってしまいそうだった。
 
 それに、その頃の私は今よりもっと引っ込み思案で、お喋りも得意じゃなくて。


 そんな私に、友達なんて作れるはずもなかったのだろう。

 
 だから私はいつも、ひとりぼっち。
 でも、お仕事で忙しいお母さんやお父さんに心配はかけたくないから。友だちがたくさんいると虚勢を張って。夕方まで、この場所で暇を潰していた。

「お友だち、欲しいなぁ……」

 そんなことを、水面の向こうにいる自分に向かって呟く。
 

 そんな時、背後でガサッと音が鳴った。
 来訪者を告げる音だ。

 少し怖かったけど、勇気を出して後ろを振り返る。
 そこには、同い年くらいの男の子がいた。一瞬、いじめっ子の一人かと思ったけれど、あまり見覚えのない子だった。

 迷い込んじゃったのかな。

 男の子は辺りを見渡す。そして最後に私と目が合った。

 私はどうしたものかとアタフタしてしまう。

 でも、やっぱり怖いなとも思ったけど。それでも私は彼とお喋りしてみようと思った。

 だって、彼もひとりだったから。
 どこか、寂しそうな目をしていたから。

 もしかしたら、お友だちになってくれるかもしれないから。

「……こんにちは」

「え? ああ、うん」

「……えっと、あなたはだあれ?」

「おれは————いや、どうでもいいだろ。そんなこと」

 男の子はぶっきら棒に、トゲトゲしく答えて目を逸らした。やっぱり怖い子なのかな。そう思うけど、私はまだ勇気を振り絞る。

 きっと私は何かを変えたかったのだ。儚い呟きに呼応するかのように訪れたこの機会を、逃したくはなかったのだ。

「どうでもよくないよ。お名前、大事だよ。だから、教えて?」

「ヤダ」

「むぅ……じゃあね。ユキから自己紹介するね。ユキのお名前はね、フジサキユキ。雪が降っている日に生まれたから、ユキなんだよ。雪のように心の透き通った子になって欲しいからって。お母さんが言ってた」

「お母さん……」

「うん。お名前にはね、お父さんとお母さんの願いとか、祈りとかがたくさん込められてるんだよ。だから、大事なの」

「願い……」

「だからお名前、教えてほしいな」

 私は精一杯、身振り手振りも交えて話した。少し前にお母さんに聞いたことを、男の子に話した。

 ——でも、男の子はなかなか答えてくれない。
 
 私、変なことを言ったかな。
 やっぱり、私と話しても楽しくないかな。
 帰りたくなっちゃったかな。

 不安で、胸が、心が痛くなる。

 我慢しないと、涙が出てしまうかもしれない。

 でも、もう消えて無くなってしまいたいと思い始めていた、そのとき。
 目尻に涙が溜まり始めていた、そのとき。

 男の子が、言いづらそうに視線を逸らしながら口を開いた。


「————ヒロ」

「ふぇ……?」

「だから、ヒロ。おれの名前。アサマヒロだよ」

「…………ヒグッ……うぇ……うぇぇ……」

「お、おいっ。何泣いてんだよっ。おまえが名前教えろって言ったんだろ!」

「うん……でも、教えてくれないのかと思ったからぁ……ぅぅ……」

「だから泣くなって!」

 何か、緊張の糸が切れてしまったみたいに私は大粒の涙を流して泣いた。

 その間、男の子——ヒロさんは私の隣に座って背中を撫でてくれていた。
 そのとき、彼が怖い人ではないのだとはっきり分かった。

 しばらくして泣き止むと、私は高揚した様子でヒロさんに語りかける。

「えっと、じゃあヒロくん。ヒロくんだねっ」

「くんとかいらない。カッコ悪い」

「いいのっ。くんの方が可愛いよ。ヒロくん」

「可愛くないし……」

「ねぇヒロくん」

「なんだよ」

「また、ここに来てくれる?」

「まあ、気が向いたら。……他に行く場所もないし」

「ほんとに? じゃあじゃあ、これからよろしくね。ヒロくん」

 私は興奮して、ヒロさんの手を両手で取ってぶんぶん振り回す。

 この時の私は全く気付いていなかったし、知らなかったけれど。ヒロさんはこのほんの少し前に、両親を亡くしていた。
 だからあんな、悲しそうな目をしていたんだ。

 私がした「お名前」の話は、「願い」の話は、そんな彼の心に響くものであったのだろうか。だから、名前を教えてくれたのかな。

 そうじゃなければ、彼はどこかに去ってしまっていたのかもしれない。

 でも、幼い私のほんの少しの勇気がヒロさんと私を繋ぎ合わせてくれたのです。

 特別なことなんて何もない。本当に、あの場所でたまたま目が合って。お互いひとりで。自己紹介をしただけの邂逅。

 これが、私たちの時間の始まりだったのです。

 この桜の森の深奥で、私たちの物語は生まれたのです。

 細い細い関係性の糸は、結ばれたのです。

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