42 / 224
エピソード13
パーティナイト(2)
ピクリとも表情を動かさないヴィンセントとは対照的に、
セシルは嘘が得意ではないらしい。
「じ、じゃあ、ゲームを始めましょう!」
みんなが初めのカードを捨て終わると、
ぎこちない笑みを浮かべて、セシルが手札をユリアに向けた。
「どうぞ、ユリアさん」
「はい。では……これを」
ユリアは間髪入れずに1枚を引く。
「良かった。当たりだ」
ニコリと笑うと、彼は1組のペアを場に捨てる。
「運がいいんですね」
「ええ、ラッキーでした」
笑みを引き攣らせたセシルに嫌味なく答えると、
ユリアは続いてオレに手札を差し出す。
「はい、バンさんの番ですよ」
「ああ」
1枚を引く。残念ながら、ペアを作ることは出来なかった。
次はヴィンセントがオレから1枚を引き、その彼からセシルが引き……
グルグルと互いにカードを引いていくと、
あっという間にユリアの手札がなくなった。
「ふふ、ラスト1枚です」
「早いな」
押し黙っていたヴィンセントが、楽しげに口の端を持ち上げる。
その横で、セシルはプルプルと震えていた。
……ジョーカーは一度も彼の元から動いていない。
「ら、ラス1がなかなか合わないんですよね~!」
そう言いながら、セシルが手の内でカードを思い切りシャッフルする。
それから、彼は1枚だけ高さを変えてユリアに差し出した。
ユリアはどう動くだろう?
セシルの手札はあと6枚。
「それじゃあ、これで」
ユリアはやはり臆することなく、端から1枚を引いた。そして……
「わっ、やったあ! おしまいです!」
満面の笑みで、場に2枚のカードを捨てた。
「嘘……」
愕然としたのは、セシルだけじゃない。
オレも、喜ぶユリアをまじまじと見つめた。
彼は全てのターンでペアを作り、ラスト1枚すらまごつくことはなかった。
これを驚異的と言わずして、何と言うだろう?
『次はお前の番だよ、使用人』
ハッと顔を上げると、
ギリギリとセシルが歯軋りしながらオレに手札を差し出していた。
「ああ、失礼しました」
なんでわざわざ念話……と思いつつ、
素直にカードを引こうとしたオレは手を止める。
真ん中の頭一個高く持たれたカードに指を向ければ、
セシルの口の端が持ち上がった。
つい、と横にズラせば、鼻に皺を寄せたセシルから
ギリギリと歯軋りする音が聞こえてくる。
「……」
……これは賭け事ではない。ゲームだ。
使用人が主人の友人に勝つのは御法度だろう。
オレは一つ溜息を落とすと、悩んだ風を装ってジョーカーを引き受けた。
「……!」
セシルの目がキラリと輝く。
「はっ、ははっ! バーカ! ジョーカー引いてやんの!!」
にんまりと笑ってセシルが指を突きつけてくる。
次の瞬間、ユリアの視線に気付いたのか彼はハッと口元をカードで覆った。
「す、すみません、ボク……あなたの恋人に酷いことを……!」
「謝らないでください。ゲーム中なんです、盛り上がって悪いコトはないですよ」
フォローを入れる。するとユリアも頷いた。
「バンさんもこう言っていますし、遠慮しないでセシル」
「はい……」
しおらしくセシルが席に着く。
オレはヴィンセントに手札を向けた。
「どうぞ。お好きなカードを」
……それからも緊張した空気の中、
順調にジョーカーはオレの下に居座り続けた。
問題が起こったのは、オレのターン――カード枚数はオレが2、ヴィンセントが1、セシルが2枚の時だった。
ヴィンセントが、オレの手からジョーカーを引き抜いたのだ。
セシルは嘘が得意ではないらしい。
「じ、じゃあ、ゲームを始めましょう!」
みんなが初めのカードを捨て終わると、
ぎこちない笑みを浮かべて、セシルが手札をユリアに向けた。
「どうぞ、ユリアさん」
「はい。では……これを」
ユリアは間髪入れずに1枚を引く。
「良かった。当たりだ」
ニコリと笑うと、彼は1組のペアを場に捨てる。
「運がいいんですね」
「ええ、ラッキーでした」
笑みを引き攣らせたセシルに嫌味なく答えると、
ユリアは続いてオレに手札を差し出す。
「はい、バンさんの番ですよ」
「ああ」
1枚を引く。残念ながら、ペアを作ることは出来なかった。
次はヴィンセントがオレから1枚を引き、その彼からセシルが引き……
グルグルと互いにカードを引いていくと、
あっという間にユリアの手札がなくなった。
「ふふ、ラスト1枚です」
「早いな」
押し黙っていたヴィンセントが、楽しげに口の端を持ち上げる。
その横で、セシルはプルプルと震えていた。
……ジョーカーは一度も彼の元から動いていない。
「ら、ラス1がなかなか合わないんですよね~!」
そう言いながら、セシルが手の内でカードを思い切りシャッフルする。
それから、彼は1枚だけ高さを変えてユリアに差し出した。
ユリアはどう動くだろう?
セシルの手札はあと6枚。
「それじゃあ、これで」
ユリアはやはり臆することなく、端から1枚を引いた。そして……
「わっ、やったあ! おしまいです!」
満面の笑みで、場に2枚のカードを捨てた。
「嘘……」
愕然としたのは、セシルだけじゃない。
オレも、喜ぶユリアをまじまじと見つめた。
彼は全てのターンでペアを作り、ラスト1枚すらまごつくことはなかった。
これを驚異的と言わずして、何と言うだろう?
『次はお前の番だよ、使用人』
ハッと顔を上げると、
ギリギリとセシルが歯軋りしながらオレに手札を差し出していた。
「ああ、失礼しました」
なんでわざわざ念話……と思いつつ、
素直にカードを引こうとしたオレは手を止める。
真ん中の頭一個高く持たれたカードに指を向ければ、
セシルの口の端が持ち上がった。
つい、と横にズラせば、鼻に皺を寄せたセシルから
ギリギリと歯軋りする音が聞こえてくる。
「……」
……これは賭け事ではない。ゲームだ。
使用人が主人の友人に勝つのは御法度だろう。
オレは一つ溜息を落とすと、悩んだ風を装ってジョーカーを引き受けた。
「……!」
セシルの目がキラリと輝く。
「はっ、ははっ! バーカ! ジョーカー引いてやんの!!」
にんまりと笑ってセシルが指を突きつけてくる。
次の瞬間、ユリアの視線に気付いたのか彼はハッと口元をカードで覆った。
「す、すみません、ボク……あなたの恋人に酷いことを……!」
「謝らないでください。ゲーム中なんです、盛り上がって悪いコトはないですよ」
フォローを入れる。するとユリアも頷いた。
「バンさんもこう言っていますし、遠慮しないでセシル」
「はい……」
しおらしくセシルが席に着く。
オレはヴィンセントに手札を向けた。
「どうぞ。お好きなカードを」
……それからも緊張した空気の中、
順調にジョーカーはオレの下に居座り続けた。
問題が起こったのは、オレのターン――カード枚数はオレが2、ヴィンセントが1、セシルが2枚の時だった。
ヴィンセントが、オレの手からジョーカーを引き抜いたのだ。
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜