人狼坊ちゃんの世話係

Tsubaki aquo

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エピソード17

終わりなき行く末(2)

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* * *

 体が怠い。重い。

 オレは、うとうとと夢と現実の間を行き来し、
 時折、ハッと体を強ばらせた。
 傷は癒えているというのに、腕が、足が、痛む。

 ユリアは目覚めただろうか。
 どこか痛んだりしないだろうか。
 穏やかに休めているだろうか……
 ……そんなことを、誰にともなく祈っていると部屋の扉が開いた。

「バン」

 低い声に呼ばれて、そちらを見やれば、
 ヴィンセントが立っていた。
 後ろにはメイド長の姿もある。

「……どうした?」

「ユリアが目を覚ました。お前を呼んでる」

「ユリアがっ……!?」

 オレは上掛けを撥ねのけ、ベッドから降りた。
 フラつけば咄嗟にヴィンセントが支えてくれる。

「連れて行こう」

「……いい。自分で歩ける」

 怪我はもう治っている。

 オレは壁に手をついて体を支えると、
 ユリアの部屋に向かった。
 目的地に着く頃には、なんとか歩けるようになっていた。

* * *

「バンさん……! すみません、ご心配をおかけして」

 扉を開けると、ユリアは満面の笑みで迎えてくれた。
 まだ顔色は悪い感じもするが、声色はいつもと変わらない。

「良かった……」

 全身から力が抜ける。
 オレはなんだか泣きたい気持ちになりながら、ベッドに歩み寄った。
 それからユリアの頭をかき抱いて、首筋に鼻を押し付けた。
 懐かしい恋人の香りを胸いっぱいに吸い込む。

「もう、痛いトコないか」

「はい。すっかり」

「そうか」

 オレは抱きしめる腕に力を込めた。
 ユリアの手がオレの背に回り、落ち着かせるように、
 そろそろとさする。

 止めるためとは言え、オレは彼に酷いことをした。
 それなのにユリアは怒ることも責めることもしない。
 それが、キツい。やるせなさと心苦しさを覚える。

「……メイドから何があったのか、話は聞きました」

 やがて、ユリアはオレの腕を解くと、
 少し離れた場所で立っていたセシルとヴィンセントに顔を向けた。

「お二人とも、ケガは大丈夫ですか?
 あまりよく覚えていないのですが、だいぶ……
 その、暴れてしまったみたいで」

「大したことはない」

 ヴィンセントの簡素な答えに、
 ユリアはぎこちなく微笑むと、頷いた。

「……そうですか。
 生きていてくれて、良かった。
 本当に……すみませんでした」

 それから深々と頭を下げる。

「……どうしてユリアが謝るのさ」

 と、セシルが言った。
 部屋の端っこで、震えるように自分の指先を見ていた彼は、
 握り締めた拳を太腿に押し当てて、掠れた声で続けた。

「謝らなきゃならないのは、ボクだよ。
 なのに、どうしてユリアが謝るの。
 ボクが悪いんだよ。……2度も、ボクは君を……」

 ユリアは首を振った。

「君のせいだなんて思いません。
 あれは、僕が無神経だったんですよ。
 それに君を唆したのは僕の中の獣……つまり、僕だ」

「違う。ボクが、獣に話を持ち掛けたんだ」

 声を荒げるセシルに、ユリアはフッと吐息をこぼす。

「……それなら、こうしましょう。
 今回のことは、僕ら2人が悪かった。
 それで、この話はおしまい。
 ね? だから、もう気を病むのは止めてください」

「ユリア……君は……」

 目元を赤くして、セシルが呟いた。
 そんな彼に――
 
「……そんな簡単に片付けられるわけねぇだろ」

 オレは、思わず口を挟んでいた。
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