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第1章:7度目の人生は侍女でした!
16.過去は気になるものですね!
「玄関までご案内いたします。ダイナ様」とオーウェンは軽く頭を下げ、腕を差し出しました。
王宮の、王子付の侍従となれば、なかなかスマートなものです。平民とは思えないほどに、優雅な所作に惚れ惚れします。
「ありがとうございます。ライトさん」
私は遠慮なく、というかこれ幸いと腕をとり、身を寄せました。
こうしてエスコートされている間だけは、オーウェンとの物理的距離が自然に縮まるのですから。
もっとオーウェンと過ごしたいところですが、私はイーディス様の公式な使者として来ています。
侯爵家の馬車の使用が許可され、つまりは御者さんやらお付きの方々も同行した大仰なもの。
使用人たちを不必要に待たせることはしたくありません。
ですから、エスコートされている時だけが、二人の時間です。とても貴重な時間なのです。
オーウェンは横目でチラッと私を見て、
「イーディス様の手紙、うまく行き始めたようだね。ダイナの作戦でしょ」
「作戦ってほどでもないわ。私は最初にアドバイスしただけよ。他は何もしてないの。全部イーディス様がなさったことだわ」
「アドバイスだけで? それはすごいな。カイル殿下からこうも易々と許されるとは思わなかったよ」
「それだけイーディス様の御心が素晴らしかったということよ」
「なるほど。カイル殿下がイーディス様に絆されてしまったのか。只ひたすら一人の人だけを思い続けると、気持ちが通じる。……一途って言うのは怖いね」
オーウェンは独り言のように言います。
でも、誰かを好きになるってことはひたすらその人のことを想う。そういうことではないでしょうか。
ダイナとしての経験はありませんが、前世ではそうであったように記憶しています。
「私は経験はないのだけど、誰かを好きになった時、その人のことだけを想うのは当たり前でしょう? オーウェンは違うの?」
オーウェンの過去の恋愛。ちょっと興味あります。
だってオーウェンはイケメンですし。イケメンって経験豊富そうなんですもの(偏見)。
「その通りだね。俺の周りでも同時進行で何人もの女性と付き合ってる人もいるけどね。俺は違う。付き合っている間はその人だけだよ。その人しか想わない。浮気はしないかな。面倒くさいから」
「面倒臭い……って?」
「その言葉通りさ。女の人の嫉妬はね、かわいい時もあるんだけど、情が深すぎると色々大変なんだ。手もつけられないほどにね」
オーウェンは苦笑します。
過去のいざこざでも思い出しているのでしょうか。
「だから付き合っている間は浮気はしないし、少しでも気持ちが冷めたら……これは相手が自分に対してもだけど、直ぐに別れるようにしてる。ダメージが少ないうちにね」
「へ……へぇ……」
オーウェンってなんだか物凄い修羅場、潜ってきていませんか?
私よりも年上と言っても一つ二つのはずです。
百戦錬磨の老騎士のような威厳のある発言に面食らってしまいました。
未経験者の私は曖昧に微笑むことしかできません。
「その顔。なんか引いてる?」
「引いてはいないけど、いろいろあったんだなって」
「まぁ、それなりに。……って前にも言ったはずだけど?」
「うん。前、聞いた」
うん。聞いてます。
ただ具体的な話になると、胸のあたりがざわついてしまいます。
平凡な私と容姿端麗なオーウェンとでは、住む世界が違うかのように思えてしまうのです。
「ねぇダイナ。俺さ、そんな事がないようにはしたいんだ。ダイナに関しては」
「……本当に?」
「うん。過去の女性は、まぁ強い人ばっかりだったから。でも、ダイナは傷つけてはいけないって気がしてる。……あぁもう玄関に着いちゃったな。もっと話したかったけど」
いつの間にか、王子宮の玄関ホールまでたどり着いていました。
いつまでもオーウェンの腕を取ったままの私を、通りすがりの使用人たちが怪訝そうな眼差しを向けてきました。
イケメンにぶら下がるには残念な容姿とか思われているのでしょうか。
私は顔をあげることができなくなりました。
視線を落としたのに気付いたオーウェンが、侍従として真面目腐った表情を作り、私の手を恭しく握ります。そして、
「ダイナ様。本日はご足労ありがとうございました。殿下もお喜びのことでしょう。またのご来宮をお待ちしております」
と言いながら深々と礼をしました。
そこまで賓客ではないのに……と思いましたが、おかげで使用人たちの眼差しが一気に温かなものになりました。
「ダイナ」
オーウェンはそっと顔を寄せました。
「週末の夜、下町で祭りがあるんだ。一緒に行かない?」
行きますよ!!!
と声に出さず、私は微かに頷きました。
たまには遊びに行くのもいいですよね。
王宮の、王子付の侍従となれば、なかなかスマートなものです。平民とは思えないほどに、優雅な所作に惚れ惚れします。
「ありがとうございます。ライトさん」
私は遠慮なく、というかこれ幸いと腕をとり、身を寄せました。
こうしてエスコートされている間だけは、オーウェンとの物理的距離が自然に縮まるのですから。
もっとオーウェンと過ごしたいところですが、私はイーディス様の公式な使者として来ています。
侯爵家の馬車の使用が許可され、つまりは御者さんやらお付きの方々も同行した大仰なもの。
使用人たちを不必要に待たせることはしたくありません。
ですから、エスコートされている時だけが、二人の時間です。とても貴重な時間なのです。
オーウェンは横目でチラッと私を見て、
「イーディス様の手紙、うまく行き始めたようだね。ダイナの作戦でしょ」
「作戦ってほどでもないわ。私は最初にアドバイスしただけよ。他は何もしてないの。全部イーディス様がなさったことだわ」
「アドバイスだけで? それはすごいな。カイル殿下からこうも易々と許されるとは思わなかったよ」
「それだけイーディス様の御心が素晴らしかったということよ」
「なるほど。カイル殿下がイーディス様に絆されてしまったのか。只ひたすら一人の人だけを思い続けると、気持ちが通じる。……一途って言うのは怖いね」
オーウェンは独り言のように言います。
でも、誰かを好きになるってことはひたすらその人のことを想う。そういうことではないでしょうか。
ダイナとしての経験はありませんが、前世ではそうであったように記憶しています。
「私は経験はないのだけど、誰かを好きになった時、その人のことだけを想うのは当たり前でしょう? オーウェンは違うの?」
オーウェンの過去の恋愛。ちょっと興味あります。
だってオーウェンはイケメンですし。イケメンって経験豊富そうなんですもの(偏見)。
「その通りだね。俺の周りでも同時進行で何人もの女性と付き合ってる人もいるけどね。俺は違う。付き合っている間はその人だけだよ。その人しか想わない。浮気はしないかな。面倒くさいから」
「面倒臭い……って?」
「その言葉通りさ。女の人の嫉妬はね、かわいい時もあるんだけど、情が深すぎると色々大変なんだ。手もつけられないほどにね」
オーウェンは苦笑します。
過去のいざこざでも思い出しているのでしょうか。
「だから付き合っている間は浮気はしないし、少しでも気持ちが冷めたら……これは相手が自分に対してもだけど、直ぐに別れるようにしてる。ダメージが少ないうちにね」
「へ……へぇ……」
オーウェンってなんだか物凄い修羅場、潜ってきていませんか?
私よりも年上と言っても一つ二つのはずです。
百戦錬磨の老騎士のような威厳のある発言に面食らってしまいました。
未経験者の私は曖昧に微笑むことしかできません。
「その顔。なんか引いてる?」
「引いてはいないけど、いろいろあったんだなって」
「まぁ、それなりに。……って前にも言ったはずだけど?」
「うん。前、聞いた」
うん。聞いてます。
ただ具体的な話になると、胸のあたりがざわついてしまいます。
平凡な私と容姿端麗なオーウェンとでは、住む世界が違うかのように思えてしまうのです。
「ねぇダイナ。俺さ、そんな事がないようにはしたいんだ。ダイナに関しては」
「……本当に?」
「うん。過去の女性は、まぁ強い人ばっかりだったから。でも、ダイナは傷つけてはいけないって気がしてる。……あぁもう玄関に着いちゃったな。もっと話したかったけど」
いつの間にか、王子宮の玄関ホールまでたどり着いていました。
いつまでもオーウェンの腕を取ったままの私を、通りすがりの使用人たちが怪訝そうな眼差しを向けてきました。
イケメンにぶら下がるには残念な容姿とか思われているのでしょうか。
私は顔をあげることができなくなりました。
視線を落としたのに気付いたオーウェンが、侍従として真面目腐った表情を作り、私の手を恭しく握ります。そして、
「ダイナ様。本日はご足労ありがとうございました。殿下もお喜びのことでしょう。またのご来宮をお待ちしております」
と言いながら深々と礼をしました。
そこまで賓客ではないのに……と思いましたが、おかげで使用人たちの眼差しが一気に温かなものになりました。
「ダイナ」
オーウェンはそっと顔を寄せました。
「週末の夜、下町で祭りがあるんだ。一緒に行かない?」
行きますよ!!!
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たまには遊びに行くのもいいですよね。
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