僕はまだ料理人ではないけれど異世界でお食事処を開きます。

佐間瀬 友

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11話 肉じゃが

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結局、鍋も叔母にお願いして宿の調理場から借りて、材料も分けてもらい肉じゃがを作った。

出来上がった頃には仕事を終えた叔母も合流して、空き家で肉じゃがを皆で食べながら話し合いがもたれた。ちなみに、鍋は借りたけど食器もなかったので鍋を皆で囲んで直接食べる。

「駄目だ!」
クローディアからの提案を話すと案の定、叔母さんから反対の声が上がった。

まあ、そうだよね。
でも、こっちだってあんな幽霊みたいな叔父さんとずっと二人で暮らすのは避けたい。
それに、何をするにしたってクローディアの協力が必要なのだ。

そして、そのクローディアの要望は
「ヒルダ。お前よりこいつがこっちに残って飯を作るなら、協力してやってもいいぞ。」
とこうなのだ。

「ほら、僕がご飯を作ればあっちの世界とこっちの世界を行き来できるようにしてくれるっていうし。」
実際、もう扉を作ってくれているわけだし。

「だいたい、お前学校は?」

「それなんだけど、もうすぐ中学は卒業で4月からは高校生なんだよね。」
たぶん叔母さんは元の世界では亡くなっているから時間の感覚がないかもしれないけど。

「だったらなおさらこっちに来ている場合ではないだろう?ていうか高校は決まったのか?」

「当たり前だよ。もうすぐ卒業なんだから。」

「そうか?いや、今だから言うが、私も姉さんも日本で学校に行ったことがなかったからなぁ。あまりその辺りの事は詳しくないんだ。」

なるほど、そういえば確かに一般常識に疎い母親だったかも。まあ、お陰で同級生より何でも自分でできるようになったような気はするが。同級生の親御さんや先生方から褒められる言葉は、ほぼ「しっかりしている。」だ。

「高校はもう決まっているから大丈夫。実は叔父さんが行っていた学校の姉妹校なんだけどね。単位制高校だから通学日も自分で決めれて、僕は週3日のコースを選んだんだ。僕が学校の日は叔母さんがこっちの世界。週末や学校が休みの日、夏休みとかの長期休暇は僕がこっちの世界で、叔母さんは元の世界ってことにすればいいんじゃないかな?」
実は、学校が休みの日はアルバイトをしようと思っていたんだけどそれは言わないでおく。

叔母さんはそれでも僕がこちらの世界にひとりで残ることを心配して、渋っている。

「ねえ、クローディアは僕が毎日こっちで料理を作らなくちゃダメ?」

「いや?私もいつもこの街に居るわけじゃないからな。別に構わないぞ。」

なんだ、じゃあ全然問題ないじゃん。

「ていうか、叔母さんも料理覚えれば?」

叔母は昔から料理が苦手で、あまり料理はしない。だいたい、お惣菜を買ってくるか外食が多かった。
どちらかと言うと、料理に関しては叔父さんの方が上手だ。

「う~ん、まあそれはおいおいね...。」

これは、覚える気ないな。


「それよりさ、この家の台所を好きに使っていいんだって!」
僕は話し合いは終わったとばかりに、これからの事を決めにかかった。

「...まだ、私は良いとは言っていないのに...。」

ぶつぶつ言う叔母さんの言うことは黙殺して、この台所の改装計画を話し始めた。


結局、僕がこちらの世界で快適に過ごせる環境を作ってからじゃないと元の世界には戻れないと、叔母さんはまずクローディアが用意してくれた空き家を整えることから始めることにした。

どちらにしても、叔父さんが家に帰ってくるのは週明けだし、週末2日間は時間がある。
叔母さん曰くきっと自分が生きていることが分かったら、叔父さんは大泣きするか気絶するに違いないから、メールや電話ではなく、自宅に帰ってきた時に姿を見せた方が良いということになった。

まあ、メールじゃさすがに信じないよね。

空き家には裏手に部屋がふたつあり、ベットが付いていて暮らせるようになっていた。
クローディアが片手を上げると小さな風が巻き起こり、埃だらけだった裏の部屋が一瞬で綺麗になる。
後は好きにしていいと言って、自分はどこにあるのか分からない家に帰っていった。

結局、すぐに家に帰れる扉があるので僕はこの家には泊まらず、一度自宅に帰ってまた明日来ることにする。

「私も、宿の方に自分の部屋を借りているからそっちに戻るよ。また明日の朝こっちに来たら声をかけて。宿屋か、この家のどっちかには居るから。」
「うん、分かった。」
「じゃあ、また明日。お休み。」

そう言って叔母は扉の前で僕の事をぎゅっと抱き締める。
いつもだったら、恥ずかしいから止めてよと言うところだったが、久しぶりの身内の温もりに僕も大人しく抱き締められた。

結局、この時叔母さんは異世界についてとか、自分達がどうして僕達の世界に来たのかとか詳しいことは何も話してくれていなかった。僕は叔母さんが生きていたこと、これからも会えること、思いがけず自分専用のキッチンが手に入りそうなことに浮かれていて、それについて深く聞こうとは考えなかった。
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