僕はまだ料理人ではないけれど異世界でお食事処を開きます。

佐間瀬 友

文字の大きさ
16 / 47

16話 魔法=人件費はタダ?

しおりを挟む
「この工房の凄いところはこっちよ。」
まるで今から悪戯をするような顔でアデルさんに案内されたのは、奥にある大きな機械の前だった。今まで見た機織り機とは形も全然違っていて大きさもかなり大きい。

「あれ?これは自動で動くんですか?」
機械はカタンカタン音を立てて動いていたが誰も近くに人はいなかったからだ。
確か、電気は無い世界だと叔母さんは言っていたけど?

「な~んだ、あまり驚かなのね?」アデルさんが悪戯に失敗した子供の様に残念そうな顔をする。

「いいえ、不思議には思っています。」

「そうなの?これはね、魔法で動いているのよ。」

え?魔法?それは凄い。
そう思ったのが顔に出たのかアデルさんはちょっと満足した顔で説明してくれた。

「本当はこれはね、こうあっちとこっちに立って二人で息を合わせて動かすものでね、幅の広い布がを織ることができる機械なんだけど。使い手がねぇ、遠くに行ってしまって困っていたの。操作がちょっと複雑で、誰でもできるってわけでもないし、覚えるのにも時間がかかるのよ。」
「ほら、バルトの娘のことだよ。遠くに嫁に行った。」

叔母さんが説明を付け加える。そういえばバルトさんの奥さんは、お嫁に行った娘さんの出産の手伝いで遠くへ行っていると言っていた。

「そうなの。それで困っていたらヒルダがね、魔法使いに頼んでみたらって言うもんだから、物は試しとクローディアに相談してみたの。そうしたら快く引き受けてくれたもんだから本当に助かったわ。しかも魔法で動いているから人件費タダよ!?その分、他の作業に人手を回せるから作業効率も上がって大助かりよ!時々きちんと動いているか確認に来てくれるし。ありがたいわぁ。」

アデルさんが熱く語ってくれるのに叔母さんはちょっと苦笑い気味だ。
そうなのか。保冷庫と一緒でクローディアの魔法なんだ。それにしても?

「てっきりクローディアは怖がられているのかと思っていましたけど。」

「あら、それはもちろん魔法使いってものはちょっと怖いし、愛想はないけど、クローディアは責任感のある良い人よ?怖がっているのは良く分かっていない男たちよね。本当に情けないったら。」

アデルさんはそう言ってため息をつく。

「クローディアって昔からこの辺に住んでいるんですか?」
「さあ?バルトの宿屋で時々食事をしているのは知っていたけど。どこに住んでいるのかは知らないわ。その辺はヒルダの方が詳しいんじゃないの?」

そう言ってアデルさんは叔母さんの方を見る。

「わたしも知り合いの知り合いってだけで、どこに住んでいるかまでは...。」
知り合いの知り合い?

「それで、頼みたいものなんだけど...。」
叔母さんは明らかに話をそらすようにアデルさんにお願いする品を説明しだした。

ベット周りのリネン類、台所の布巾、手拭き用布などなど。最後に僕の着替え用の服をお願いして簡単にその場で採寸もしてもらう。アデルさんは寸法をメモして言った。

「まだ、身長は伸びる年頃だから少し大きめがいいのかしら?服以外は表の棚に在庫があるから持って行っていいわよ。服はそうね6日ほどかかるけど構わない?」
「ああ、もちろん。じゃあ頼むよ。」

そういって、僕たちはまたお婆さんが座っている店の方まで戻って来た。



「そういえば、さっきの歌だけど。」

叔母さんが棚に畳んである品物を取りながら話しかけてきた。
さっきの歌?ああ、母さんが子守唄に歌っていた乙女の歌か。

「ほら、衣の色は何色とかっていう歌詞があるじゃないか。」
「うん。衣の色はどんな色~、だっけ?」

ワンフレーズを歌ってみる。エッダさんが椅子でウトウトしているので全部小声だ。

「そうそう。あとマントの色はどんな色~っていうのもあるけど。なんかお前がちょっと怖いって思ったって言うの分かる気がする。」

「なんで?」
「どうしてもあの部分で真っ赤な色を想像しちゃうんだよな。子供の頃から。」
「あ~、でもそれ分かるかも。ほら夕日ってフレーズが出て来るからかな。僕も赤いの想像しちゃうかも。」
「だよなぁ。それが、どうしても血に染まった戦いの乙女を連想してさあ。あんまりあの歌好きじゃなかったかも。」

そういわれると、哀愁のあるメロディーと相まってなおさら悲しい歌に聞こえてきた。


「まあ、間違ってはいないよ。」

眠っていると思っていたエッダさんにいきなり声を掛けられて驚く。

「すいません。うるさくして。」
どうやら、僕たちの話声がうるさくて起きてしまったようだ。

「いいや。そんなことはないよ。年寄りは眠りが浅いのさ。」

「間違ってないって?」

叔母さんがエッダさんが言った言葉を繰り返す。

「衣が血の色だっていうのがさ。今でこそ、ありがたいことに、この辺りは戦もなくて平和だが、この歌ができた頃は戦があるのが日常だったのではないかねぇ。戦いに行く兵士を歌っている歌なんだろうから。」

エッダさんはそう感慨深そうに答える。

「この国では争いはもうずいぶんないのかい?」

「そうだねぇ。まあ、国境近くでの小競り合いぐらいはあるらしいけど。この辺りは王都のすぐ近くだからね。私が知っている限りは平和だよ。なんたって、国王様は魔法使いを味方につけていらっしゃるからね。」
エッダさんはありがたい、ありがたいと繰り返した。

魔法使いを味方に?それって、クローディアの事だろうか?

「別に、魔法使いが万能ってことはないだろう?」
なんだろう、叔母さん随分さっきからくいさがるな。

「さあね。私にはそこまでは分からないよ。でもね、実際今の治世は安定しているし、私たち平民も食べるのに困ってはいない。それだけでも充分ありがたいことだよ。それが魔法使いのお陰かなんて私らがどうこう言う問題じゃないの...さ...。」
そう言うと、エッダさんはコクリコクリと頭を揺らしてまた眠りに落ちてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!

碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!? 「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。 そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ! 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...