僕はまだ料理人ではないけれど異世界でお食事処を開きます。

佐間瀬 友

文字の大きさ
28 / 47

28話 街へ行く パスタ&スパイス編

しおりを挟む
乾物屋で鰹節を手に入れた僕は喜んで店のお婆さんにお礼を言うと他にもたくさんの品を購入して店を後にした。
「魔法使い様のお役に立てて良かったですよ。ぜひ、またいらっしゃってくださいな。」
そう言うとお婆さんはホクホク顔でおまけに魚の干物を付けてくれた。
支払いはクローディア任せで貨幣価値が分からないけど、きっと鰹節は高価なものだったに違いない。

その後も色々な店を回って食材を調達して回った。

パスタの専門店を見つけた時は思わず声が出た。
「う、わ~!」
麺類を家庭ではあまり食べないと聞いていたから。きっと、そんなに種類もないと思っていた。
でも、王都では違ったらしい。
その店は店先に色々な種類のショートパスタが山積みになり量り売りをしてくれるようになっていた。
いったい全部で何種類くらいあるんだろう。見たこともない形の物もたくさんある。
店の中に入ると他にも細めから太い平麺タイプまでロングパスタが壁一面にぎっしりと並べてあった。
もし、乾燥タイプのものが見つからなかったら自分で手打ちパスタを作ろうと思っていたけど、これだけ種類があればその必要はなさそうだ。

よし、手打ちで作るのはまずはうどんにしよう。手に入れた鰹節も使ってみたい。

やはりこの世界は西洋よりの食材の方が手に入りやすい。
パスタ料理に使うドライトマトや瓶詰のピクルスなども一緒に棚に並んでいる。
う~ん、イタリア料理を極めるのもありか?そうだ、イタリア料理ならピザだ。厨房に使っていないオーブンはあった。あれを使いこなせれば、ピザなら簡単に作れるじゃないか。となると、ハーブも欲しいけどハーブくらいなら育てられるかな自分で。種を売っている店はあるかな?
僕はウキウキしながらパスタの種類を選ぶと大量に購入した。この店もぜひまた来たいと思いながら。

クローディアは僕の買い出しに、文句ひとつ言わず付き合ってくれていた。もちろん、要所要所で買い食いはしっかりしながら。

「あとはスパイスの店だな?」
さっき屋台で買ったじゃがいもを潰してカリっと焼いたコロッケのようなものを頬張りながらクローディアが言った。

馬車の荷台はさっき買った何種類かの粉を積んで既に山盛りになっていた。
「スパイスの店はこの先だが、途中にルーの店がある。顔を出さないとうるさいからな。先に寄って行こう。」
馬車は城下町でも王都の壁に近い通りを走っていく。城下町の通りは石畳が敷かれていて、馬車も走りやすいようになっている。
ルー?青の魔法使いの?そういえば、王都の城下町で占いの店をやっていると言っていた。

クローディアが一軒の小綺麗な店の前に馬車を寄せて停めた。ファサードはブルーの綺麗なタイル張り、明るくてお洒落なカフェといった感じの趣だ。
占いの店なんて言うから、ちょっと暗くて怪しい感じを想像していたのに。

馬車を降りてクローディアの後について店を覗くと、中からルーの声が聞こえて来る。どうやらお客が来ているらしい。

「だから~、今はここの生活が気に入っているわけ!」
ルーが誰かに怒っているような声が聞こえる。
「それはもちろん分かっておりますが、わが国としてはぜひ青の魔法使い様のお力をお借りしたいと。わざわざこうして遠方より参ったのですから、お話だけでも一度聞いて頂けないかと!」
明らかに町の人達とは違う立派な恰好をした男が3人、ルーの前に跪いていた。
「もう、しつこいなぁ。100年後くらいならまた気が変わっているかもしれないから、その頃にまた来てみたら?」
「そんな!その頃には私共は生きてはおりません。お願い致します!魔法使い様より良いお返事が頂けなければ国へ帰ることができません。」

話の内容からして、他国からの使者と言ったところだろうか。立派な恰好の3人が子供の姿をしたルーに必死に頭を下げている。

「そおかな?じゃあ俺が帰してあげるよ。」
そういうとルーは手をひらりと振り上げる。手の中で小さな風が巻き起こり、それが少しずつ大きくなると跪いていた男達を巻き込んで持ち上げる。そしてそのまま空に飛ばしてしまった。
魔法使い様~、という声だけが遠くの空から聞こえてきた。

「あれ、大丈夫なの?」
「大丈夫だ。きちんと送り返してあげたことだろう。」
クローディアが冷静に答える。

「あ、ディア~。来てくれたんだ!」
入口から覗いていた僕たちを見つけると、そう言ってルーがクローディアに抱きつく。
「あ、お前も来てくれたの?よかったら茶でも飲んでってよ!」
僕も歓迎してくれているルーに文句は言えず我慢する。

「さっきの人は、他国の人なんですか?」
お茶が入ったカップが空中を浮いて運ばれてくると座っている僕とクローディアの手の中に納まった。
「ああ、何だっけ?西の方のマルべリアとかいう国の使者だって言ってた。」
自分の分は普通に手で運んで来るとルーも椅子に腰かける。
「何か頼みごとがあって来たんじゃないんですか?」
「うん、俺に自国の王族を助けて欲しいって。」
「王族?」
「うん、よく来るんだよねぇ、うるさいのが。ほら、マーリーンは今この国の王を虐めて楽しんでいるし、ディアはぜったい国に所属したりしないし、後の二人はどこに居るんだか分からないしで俺が一番頼みやすいわけ。店も構えて居場所も分かっているからね。」
なんか聞き捨てならないワードが出て来たけど、まあ聞かなかったことにしよう。

「魔法使いってそうやって普通は王族を助けたりするんですか?」
「まあね、俺たちが味方に付けば色んな意味でその国は繁栄すること間違いなしだから。例えば、自然の驚異から人を守ったり、後継ぎが産まれない王族に子宝を授けたり。一番多いのは隣の国を攻め落としたいってやつだけどね。まあ、その国が気に入ればね。それだけの見返りは貰うし、何やっても良いんだけどさ。」
そう言ってルーはニヤニヤ笑った。

「ディアはそういうのやらないんだ?」
「興味ない。」クローディアがそっけなく答える。
「あ~、もうディアのそういう無欲なところが好きなんだよなぁ。」
ルーが今にもディアにまた抱き着きそうな勢いで身を乗り出したので慌てて話をそらす。
「魔法を使える人ってあなた達魔法使い以外本当にいないんですか?」
「いや、いるよ。例えばこの城下町にも占いの店は何個かあるし、魔法で薬を調合して売っているやつとかもいるね。」

そうなのか。

「でも、俺たちから見たら子供の遊びみたいなもんだけどね。ちょっとだけ魔力があるただの人間だし。」
どうやら、魔法使い達とは全然違うらしい。

「薬の調合っていえば、マーリーンがさあ、この前から城の自分の仕事部屋に籠って出てこないんだよね。そうかと思えば何日間か何処に行ったのか帰ってこない時もあるし。」
「また、何か新しい薬を作っているんじゃないのか?」
マーリーンは凝り性だから、色々研究するのが大好きなんだとクローディアが僕に説明をしてくれる。
「まあ、そうかもしれないけど...。この前ちらっと覗いてみたら、真っ黒い液体を何本も瓶詰めにしてブツブツいってたんだよなぁ。なんか鬼気迫る感じで怖かったから声かけないで帰ってきた。」


瓶詰め?そうだそれで思い出した。
「あの、空き瓶ってどこかで売っていますか?」荷馬車にまだ乗るだろうか。
「瓶?」ルーが不思議そうな顔をする。
「はい。」
瓶があれば保存食をまとめて作ることができる。ケチャップとかジャムとか。
集落にはガラス工房はなかった。

結局、ルーが案内してくれて瓶をいくつか無事手に入れることができ、その後に三人でスパイスの店まで行った。今までとは違って、クローディアとルーも真剣に商品を見ている。
「?二人もスパイスを買うの?」
料理に使うのだろうか?
「ああ、この店は料理用のスパイスだけじゃなくて薬を調合するのに必要な薬草も扱っているんだ。」
そうルーが教えてくれる。
「そうなんですね。魔法使いってみんな薬の調合をするんですか?」
クローディアもこの前三日三晩眠らないで薬を煎じていたと話していた。
「ああ、得意不得意はあるけど俺たちの大事な収入源だからな。ちなみに、俺の得意なのは惚れ薬!」
ルーがニヤニヤ顔で得意げに言う。
そんな物が本当にあるのか?そんな気持ちが思わず顔に出てしまったらしい。
「あ、疑っているな!占いに来る客にすげー人気があるんだぜ。」
「でも、本当にそんな薬をみんな使うんですか?」
人の気持ちを捻じ曲げるなんてちょっとどうかと思うけど。
「まあね。」からかう様にルーが言う。

「安心しろ。薬はあくまでも薬だ。効き目が切れたらそれまでだ。呪いとは違う。」
クローディアがボソっと教えてくれる。それは良かったけど、呪いはずっとなのか?
「キヒヒヒ...。まあ、惚れ薬は持っても1日くらいだ。欲しかったら分けてやるよ。」
ルーが僕の肩に手を回すと耳元に囁いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!

碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!? 「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。 そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ! 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...