僕はまだ料理人ではないけれど異世界でお食事処を開きます。

佐間瀬 友

文字の大きさ
29 / 47

29話 大根らしきものの種を蒔く

しおりを挟む
「何をやっている?」
「ディア!」
僕が裏庭で土いじりをしているとクローディアがやってきた。

「これ。この間、街で買ってきたこの種を裏庭にまこうと思って。」
街に買い物に行った時に買った種を試しに蒔いてみようと思ったのだ。商品説明にあったイラストは大根に似ていたけど、もしかしたら大きなかぶかもしれない。
まあ、どちらでもこの辺りでは手に入らなかったので育ってくれたら嬉しいな。

それで、家の裏庭を一生懸命耕していたのだ。
大根なら小学生の時に授業の一環で、近所の農家の畑を借りて作ったことがある。学年ごとに違う作物を育てるのだけど、大根の時は凄くたくさん取れて、みんな5本~6本くらい持たされて帰った覚えがある...。

「ほら、エマの家から肥料も分けてもらったし。あとは種をまくだけ。上手くいくか分からないけど。」

「エマ?」

「うん、ほらお隣のエマ。農家だから色々詳しいし教えてもらったんだ。土を耕す道具も借してもらって。本当はお隣りみたいに鶏とか牛も飼いたいけどね。僕も留守にすることがあるから生き物は難しくて。野菜なら何とか育てられないかと思ったんだけど...。」

「ディア?どうしたの?お腹すいた?」
お腹がすいているのに僕だけべらべら話過ぎて、機嫌が悪くなったかな?

「いや、今はそんなにすいていない。」

「そお?これまいたら直ぐにご飯にするからもう少し待っていてくれる?」

「...。それは何の種だ?」

「う~ん、この世界の野菜だから自信はないけどたぶん大根とか蕪のたぐいじゃないかと思ってまいてるんだけど。」

「それで、どんな料理ができるんだ?」
クローディアは僕の隣にちょこんとしゃがむと手元を覗き込んでくる。
「そうだねぇ。例えば、大根と鶏肉の煮物とか、みそ汁にしても美味しいし。生のままおろして食べたり千切りにしてサラダとか?」
ちなみに味噌は手作り味噌を現在作成中だ。

「にもの...。さらだ...。」
「まあ、食べられるのはだいぶ先だけどね。」
「...。早く育てば直ぐに食べられる。」
「まあ、そうだけど。」
いくらこの辺りの気候が暖かくてもそれは無理じゃないだろうか。
「できるぞ。育ったらすぐに作ってくれるか?」
クローディアが目を輝かせて聞いて来る。
「それはもちろん構わないけど...。」

クローディアは僕が種を蒔き終えた畝の前に立つと、袖から杖を取り出して地面をトントンと叩いた。
目の前の土からぶわっと可愛い緑色の芽がたくさん生える。
もう一度クローディアが呪文を唱えて杖を上げる。
「ちょ、ちょっと待ってディア!」
振り上げた杖を止めてクローディアが不思議そうに振り返る。

「それ、全部早く育てるつもり?」
僕がまいた種はいったい何粒あっただろう。
本当だったら芽が生えた時点で間引いていくのだろうが、このまま魔法で育てたら全部大きくなってしまうのではないだろうか?
「?そのつもりだが。」
「いや、さすがにそれは一度に料理できないから、え~と。」
僕は生えてきた芽を5本だけ抜いて、少し離れたところに植えなおした。
「この芽の分だけお願いするよ。」

「それだけでいいのか?」
「うん、うん。後のはまた今度お願いするから。」
大根、何十本もあっても腐らせてしまうだけだ。
「分かった。」
そう言ってクローディアはもう一度僕が避けた芽に向って呪文を唱えるとまたトントンと杖で地面を叩いた。
今度は芽が更に伸びて葉がバサッと大きく成長した。

引っこ抜いてみると地面の下にちょっと太くて短めの大根が育っていた。
「おー、凄い!」
これって種さえあればほとんどの野菜は栽培可能じゃないか!もしかして米もいけるかも?
というのも、この辺りで食べられている米はいわゆる長米種といってカレーなどには合うけど、和食とはあまり合わなかったから。

魔法ってすごい。いや、魔法使いがすごいのか?

「...。腹減った。」クローディアがボソっと呟く。

「大丈夫?」
扉を作る魔法を使った時にお腹がすきすぎてふらふらになっていたクローディアを思い出し心配になる。
クローディアはこくんと頷く。
「大丈夫だ。今回は精霊たちの力を借りた魔法だからそれほど自分の魔力は使っていない。」
「へ~、魔法によって色々なんだね。」
「でも、腹減った。」
「はいはい、じゃあ家に入ろう。ご飯作るから。」
そう言うと僕は大根を抱えて家に入った。さて、何を作ろうか。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!

碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!? 「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。 そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ! 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...